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翌朝、ラミルが目を覚ますと、何やら体に異変を感じた。
昨夜は気を失うように意識を無くしたから、どこか体の具合が悪いのではないかと思いながら体を起こすと突然声が聞こえた。
(ラ~ミ~ル~、おはよう~、聞こえるか~)
なんとなく不機嫌そうな声。
(えっ?その声・・・もしかして健人?)
少し大人びた低い声になっているが、間違いなく健人が話しかけてきている。
(もしかしてってさ~、Darkにメッセージを書き加えて呼び戻しておいて、もしかしては無いだろ、ところでレイラに何が起こったんだ?)
(レイラが連れ去られた。連れ去ったのは神の戦士と名乗っているけど恐らくジゼルの末裔だ)
(なるほどね、そういうことか、こっちの世界では俺の母さんと妹が倒れた、レイラが危ないと書かれているのを見て絶対に関係あるんじゃないかと思ったよ)
(でも健人は元気じゃないか)
(ラミルの体の中にいると言うことは、あっちの世界では意識が無いってことなんだぞ)
(そうか・・・でも健人が来てくれて本当に心強いよ)
健人は8年前からの4人についてラミルから詳しく話を聞いた。
(ロザイルも戦士になったのか、聖戦士ムーラ直伝の槍の使い手だしな、動きもいいから並の戦士や兵士より強いのは当たり前だな。それよりナナは元気なのか?まだザハールにいるのか?)
(元気だよ、だけど神の戦士と戦うことになったらナナとリリアを危険な目にあわせたくないと思って、スプラの家に行ってもらった)
(スプラか、確かナナのお婆さんが居たところだよな、まあそれは当然の対処だな。そうか、ナナがいないと言うことは、水の杖の使い手はいないんだな)
(できればカーズも巻き込みたくないと思っているんだ)
(そうだな、大商人になったと言っていたな、確かに危険な目に合わせられないよな。そうなると戦力はラミルとロザイルだけか)
(あと健人も・・・)
(俺はラミルと2人で1人だから・・・まぁいいや、とりあえずレイラのことと、わかっていることは王様には報告しておかないと駄目だ、すぐに報告に行こう)
ラミルはすぐに王の間に行き、2人きりで話をした。
「昨日、妹のレイラが神の戦士と思われる者に連れ去られました。やはり王様が言っていたように奴らの言う王女とは妹のレイラのことだったようです。恐らく奴らはアルム以外に流れていったジゼルの末裔に間違いないと思われます」
「やはりそうか、そうなると奴らの言う王とはラミル、そなたのことのようだな。そなたになら奴らを説得出来るかもしれん、やってくれるか?」
「もちろんそのつもりですが、妹を無理矢理連れていってしまうような奴らなので、もしもの時に備えて戦う準備はしておかなければならないと思っています。それから、いくつか確認しておきたいことがあるので、しばらく王宮から姿を消すことをお許しください」
「わかった、相手の正体もまだ詳しくわからない状況だ、ラミルも気をつけるのだぞ」
「はい、それから、レイラを連れ去った連中は北へ逃げたようですが、死の谷を通ったという報告はないのですか?」
「昨日か・・・怪しい者が通ったとか、捕らえたという報告はまだ来ておらん」
ラミルは不思議に思いながらも、カーズの話を思い出した。
「そういえば、カーズから聞いた話なのですが、カレルは完全に滅亡したのではないようです」
「どういうことだ?」
「王家の方々は1人残らず殺され、兵士も全滅したそうですが、町が大きく破壊された様子は無く、民は今も平穏な生活をしているそうです」
「なんだと、王家と兵士だけがやられただと」
ラミルは、カーズから聞いた話を詳しく王様に話した。
「そうか、狙われているのは王家である我々だけということか、ラミルよ、これは私のエゴかもしれんが、私はまだ死にたくはない。この国をもっと豊かにし、皆が暮らしやすい国にしなければならないと思っている。頼む、もはやラミルだけが頼りだ、奴らを説得してくれ」
「わかりました。カレルの王家たちの事情はどうあれ、妹を連れ去ったことは許せません。必ずや奴らと話をつけて、妹を連れ戻してきます」
ラミルは部屋に戻って再び健人と話した。
(王様もさすがにカレルのことを聞いて弱気になったみたいだな)
(王家と兵士だけが殺されたとなるとしかたないよ)
(でもさ、ジゼルの王位継承者は、いまでも剣を持って戦っているけどな)
(そんなこと言うなよ、もうジゼルは滅びたんだから)
(でも神の戦士という奴らの目的はジゼルの再興じゃないのか?だから王だけが持つ力が必要になるってことじゃないのか)
(なるほど、そういう考えもあるのか、さすがに健人は考えることが違うな、ところでまず何から調べていこうか?)
(とりあえずウズルへ行こう、カーズが言っていた剣のこと、ロムさんの剣を村長が持っているか確認しなきゃ。もしあの剣があるなら、村長は確か直すことが出来ると言っていたから直してもらおう。もし奴らと戦うことになったら、セラムの剣を持っている奴を相手に鋼の剣じゃ歯が立たないだろ)
(確かにそうだな、あの剣の存在は気になっていたんだ)
ラミルは急いで支度を整えるとウズルへ向かった。




