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ラミルがカーズと話をしている頃、授業が終わり多くの子供たちが学校から出てきていた。
ワルムの東のはずれ、サントとの境のあたりに何やら目つきの怪しい男が3人、サントの村へ帰っていく子供たちの顔を確かめるように見ている。
「いいか、相手は王女様だからな、決して失礼が無いようにしろよ」
「しかし、抵抗されたら・・・」
「その時はしかたない、多少手荒な真似をしてでも、お連れしろとダルガム様の命令だからな」
「おい、来たぞ、あれじゃないか?」
遠くから小さな子供たちの後ろを美しい金髪を後ろで結んだ少女が歩いてくる、同じ年の子供たちよりも少しだけ背が高く、美しい金髪に青い瞳、15歳になったレイラだ。
8年前、まだラミルに甘えていた幼いレイラの面影はもうそこにはなく、美しい女性となったレイラは学校、いや村でも1番の人気者で、同じ年ごろの男の子には憧れの的だ。
「そうだ、間違いない、あの金色の髪、青い瞳、レイラ様だ」
3人の男はゆっくりとレイラに近づいていき、そのまま前に立ち塞がるとレイラは驚いて声も出せずに男たちを見る。
「レイラ様、お迎えに参りました、どうか我々と共にお越しください」
相手の丁寧な口調に少しだけ安心して男たちに尋ねた。
「私のことを知っているようですが、貴方たちはいったい誰なのですか?そこをどいてください」
「貴女様は我々の王女、あのサントのような村にいるような方ではないのです」
「王女?何を言っているのですか?私はただの学生です、王女などではありません」
男たちを振り払おうとしたレイラの腕を1人の男が掴んだ。
「痛い、離してください、何をするのですか、助けて・・・」
大声をあげたため、近くにいた大人や子供たちがレイラの方を振り返り、1人の少年がレイラを助けようとして近づこうとしたが、男たちの鋭い眼光に睨まれて身動きできなくなってしまう。
「助けて、何をするの、私の兄が戦士だと言うことは知っているのですか?」
大声をあげて助けを求めても周りの大人たちでさえ、左腰に剣を携えた男たちに睨まれてしまうと手を出すことが出来ず、抵抗するレイラを連れ去らんと男たちは顔を見合わせ頷いた。
「しかたない」
レイラの腕を掴んでいた男が鳩尾あたりを拳で殴ると、気を失ってぐったりと倒れたレイラを担ぎ上げ、そのまま馬に乗って北へ走り去ろうとする。
周りにいた男たちが立ち塞がるように行く手を阻もうとするが、先頭の男が剣を抜いた。
「死にたくなければ邪魔をするな」
そう言って威嚇すると、行く手を阻もうとしていた男たちは動けなくなり、そのまま馬は遠ざかって行った。
近くでレイラが連れ去られていくのを見ていたサントの子供たちは慌てて村へ帰り、レイラの家の前で叫んだ。
「おばさん、おばさん、大変だよ・・・レイラ姉さんが連れていかれちゃったよ」
母のクリシアが慌てて家から飛び出してくる。
「レイラがどうしたって?何があったの?」
息を切らせて知らせに来た子供たちは、いつも自分たちに優しいレイラが、目つきが鋭くて怖い男たちに連れていかれたと泣きながらクリシアに話す。
「レイラ姉さんが・・・変な男たちに」
「お姉ちゃんが剣を持った男たちに連れていかれちゃった」
クリシアは、泣きながら必死に話そうとしている子供の頭を撫でて落ち着かせようとする。
「落ち着いて、落ち着いて話してちょうだい、レイラがどうしたの?」
一番落ち着いている少年が涙を拭いながら、ゆっくりとワルムを出たところで起こった出来事を話しはじめた。
「そうなの・・・あなたたちは怪我をしていないわね」
不安に思いながらもクリシアは怯えた子供たちを慰めて家へを帰るように話すと、家の中に入って椅子に腰をおろして頭を抱え込んだ。
(何があったというの、なぜレイラが、いったいどうしたら良いの)
しばらくして少年が戻って来た、もう一度じっくりと話を聞く。
「さっきは話すのを忘れてたけど、男たちはお姉ちゃんのことを王女様って呼んでいたんだ」
「王女様?」
「お姉ちゃんも不思議そうな顔をしていたけど、男たちは丁寧な言葉で話していたんだ、だけどレイラ姉さんが家へ帰ろうとして男たちを振り払おうとしたら強引に連れて行ったんだ」
「ありがとう、よく思い出してくれたわね、もう気にしなくていいから帰りなさい」
少年は深く頭を下げて自分の家へと走っていった。




