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 あの不思議な体験をした日から8年の月日が流れ、大学生になった健人はサークルやアルバイトに明け暮れる毎日を過ごしていた。

 アルムでの出来事はすでに健人の中では遠い遠い記憶の中に消え去っていた。

 今日もアルバイトを終えて家に帰るとすぐに自分の部屋に入ってベッドに横になる。

「あ~疲れた、最近バイトばっかりだよな、少しは勉強しないと留年しちゃうかな」

 隣の部屋で勉強していた妹の裕美が、健人の部屋のドアをノックして入ってきた。

「お兄ちゃん、ちょっと、ここ教えてほしいんだけど」

 そしてベッドで横になっている健人を見て、母親にそっくりな口調で話しかける。

「お兄ちゃん、最近、バイトばっかりしているようだけど、学校には行ってるの?」

「なんだよ、ちゃんと行ってるよ、まったく、うるさいなぁ、母さんみたいなこと言うなよ、それより何を教えてほしいんだ?」

 裕美が数学の教科書を拡げて解らないところを指差すと、健人は起き上がって机に向かい、レポート用紙に公式を書きながら説明をはじめた。

「ふ~ん、そうやって解けばいいのか、わかった、ありがとう、ところで・・・」

「なんだよ、まだ何かあるのか?」

「なんか、最近すごく嫌な予感がするの、何が?って聞かれてもよくわかんないんだけど」

「何か気になることがあったら言えよ、だけど今日はもう勘弁してくれ、疲れたから」

「うん、わかった、教えてくれてありがとう」

 裕美が部屋から出ていくと健人はベッドに横になってウトウトと眠ってしまった。


 翌朝、健人が目を覚ますと本棚にしまっておいたはずの本が床の上に落ちていた。

 その本は他の本にしっかりと挟まれていて決して落ちるはずのない本、あのDarkがなぜか床に落ちている。

「あれっ、何だよ、何でこれが落ちているんだ?もしかして裕美のやつが勝手に他の本を出して戻さなかったのかな?まったく、人の部屋に勝手に入ってきて」

 健人はDarkを本棚に戻した。

 再びベッドに横になるとそのまま寝てしまい、夕方になって目を覚ますと本棚に戻したはずのDarkがまた床に落ちている。

「なんだよ、また裕美か?まったく、ちゃんと片付けろよな」

 ぶつぶつと文句を言いながら、本を拾い上げて机の上に置き、リビングへと下りて行った。

「腹減ったなぁ、裕美、悪いけど何か作ってくれよ、裕美、いるんだろ」

 何の反応も無い、どうやら母親も妹もどこかに出掛けたらしい。

「まったくしょうがないな」

 台所に行って冷蔵庫を開けようとした時、家の中の異変に気付いた。

 リビングのテレビは点いたままで、テーブルの上には裕美がいつも使うマグカップが置かれている、しかもその中のホットミルクはまだ少し温かく、量も半分以上残っている。

「なんだよ、裕美、いるんなら返事ぐらいしろよ!」

 しかし返事は無く、健人がトイレに行こうと台所を出た時、裕美の足らしきものが見えた。

「おい、裕美、大丈夫か?」

 近づいて声をかけても意識は無い、心臓は動いているが大声で呼びかけても全く反応しない。

「裕美、裕美・・・」

 慌てて救急車を呼ぼうと思ってリビングへ戻ろうとすると、母親が洗面台のところに倒れているのを発見した、裕美と同じように健人の問いかけにまったく反応しない。

「いったい何があったんだ!」

 大急ぎで救急車を呼んで2人を病院に連れていった。

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