愛屋及烏.22
「目が覚めた? 献世君」
「……耶衣子さん」
俺は目を開けると、そこには柔らかい耶衣子さんの太股で膝枕されていた。
どういうことだ? 俺は、俺はいったい何を――――――?
しかも、当たりを見ればどうやら耶衣子さんがよく来る廃墟のようだけど。
「献世君を起こすのには骨が折れたよ、中々起きてくれないんだもの」
「なんで、俺……さっきまで、耶衣子さんの部屋にいたんじゃ……?」
「うん、思い出せないのも普通だよね。君は、夢魔に殺されるところだったんだよ」
「え?」
「そうでしょう? ――――――蜜祈ちゃん」
唸り声をあげている少女の声が聞こえる。
そこには露出の多い、サキュバスにはふさわしい格好をした守随蜜祈がそこにいた。
「なんで、なんでなんでなんでなんでなんで? なんで、アタシの術を破ったの!? 終末屋!!」
耶衣子さんは俺に確認するように視線を寄越すと、俺は無言で頷いて彼女から離れた。
彼女は立ち上がると、自前のナイフをそっと愛おし気に撫でる。
「このナイフは、私の師匠からもらったものでね。師匠の葬眼を埋め込んだナイフなんだ。だから、どんな魔法も魔術も、これに切られたモノは殺すことができる」
「そんなの、そんなの不可能だよ!! 人間に、神秘の存在に戦えると思ってるの!?」
「私は異常者だ――――なら君程度、殺せないはずないだろう?」
「っ、死ねぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
ピンク頭、いや、サキュバスは黒い影の刃を耶衣子さんに飛ばしてくる。
耶衣子さんは飛び掛かってくる斬撃を、ナイフを持って一つ一つ消滅させる。
初めから存在しなかったように一瞬で消えていく。
「さぁ、終わりだよ」
「っぐ!!」
耶衣子さんはサキュバスの背後に回り、彼女の首にナイフを突き立てる。
「君は神秘の存在の一つ、夢魔の先祖返りのようだけど……本当の夢魔の力とはほど遠いね」
「な、なんでそんなこと……!!」
「私の質問に答えてくれるなら、殺さない。けど、隠したり黙るなら殺すよ」
「……っ!! わかった、話す、話すから!!」




