愛屋及烏.13
「とはいったものの……ネットに情報収集するのも限られてくるよなぁ」
俺は帰宅してから食人事件に関しての情報収集をしていたが、ネットではほとんどヒットしなかった。
というわけで、今俺はベットに寝っ転がって天井をボーっと眺めている。
刻々とすぎる時間を、一時も無駄にできない状況なのに、案が出てこない。
「…………どうしろってんだよ」
ピンク頭は顔がいいしなんか苦労してそうな感じなのは会話して思ったけど、アイツ結構人脈広いのだろうか……? いや、アイツに同情するつもりはないけど。いや、したら負けだな、負け。
でも耶衣子さんのストーカーをしているわけだし、作品では外見がよくてストーカーしてるってキャラって大概、キチガ、いやキガ系なんだよな……ああ、俺が読んできた数多のコンテンツのストーカー系キャラが頭に過る。
「バカか、俺……そういう場合じゃないのに」
俺は起き上がり目を擦る。
今、ライバルのことなんてどうだっていいだろ。
絶対負けねえ。
「俺が耶衣子さんに俺って人生を世界から消してもらうんだ」
オンラインゲームでもソロプレイヤー極めている俺でも、唯一リアルでの繋がりを最近得られたんだ。
俺はスマホでタップしてあの人に連絡を取る。
耳にスマホを当てて、本人が出てくれるのを待つ。
『もしもし、坂口です……居神君?』
「はい、坂口さん――――――お願いがあるんですけど」
◇ ◇ ◇
「ここのラーメン、美味しいだよ」
「……は、はぁ」
俺はなぜか坂口さんに深夜に寂れた友成というラーメン屋に連れてこられていた。貸し切りみたいに誰もいないが、まさか警察って店の貸し切りもできるのだろうか?
坂口さんが言うには彼のよく知る老舗の店らしいが……十字の切り込みの痕みたいな模様があるガラスがいくつもある古臭い扉に、メニュー表も手書きで書かれてあるし、黄ばみを帯びた白の漆喰の壁が汚いと思うのになぜか温かみを感じさせる。
「君は何食べたい?」
「じゃあ……この味噌ラーメンで」
俺はテーブルに広げられたメニューの中でそれを指差した。
「君、道民?」
「味噌ラーメンは道民だけの特権ってわけじゃないでしょ……まあ、祖母は確かに道民でしたけど」
「うん、いいね。じゃあ、俺もそれで」
「は? なんで――――」
「おばちゃーん! 味噌ラーメン二つ―」
「あいよー」
坂口さんは口に手を当てて注文した。
カウンターの方で店長の夫婦である女性が笑顔で返事を返す。
俺は置かれてあるお冷を取って軽く飲む。
なんか、イケメンってこういう感じで相手の距離を測ろうとするんだろうか……? こわ。女子だったらときめくんだろうけど、俺としては普通に自分の好きな物食べたいから、そんなことは絶対しないな。コトリとテーブルにカップを置くのを狙っていたのか、坂口さんは顎に手を当てながら俺に質問する。
「君、ああいう模様が入ったガラス、なんていうか知ってる?」
「……なんて言うんですか」
確かに、あの切り込みというか、銃弾の痕みたいな模様のガラスのことは全然知らない。
一体、何て言うんだろうか。
坂口さんは人差し指を立てる。
「型板ガラスって言うんだよ、俺の実家もああいう窓が多かったんだ」
「へぇ、そうなんですか」
……今度、あの窓ガラスを見た時は、型板ガラスって言えばいいのか。
いい勉強になったな。
「冷たい反応だなー、わざわざ俺に電話したの情報交換だとてっきり思ってたのに」
「……わかってるなら、はやく教えてくださいよ」
「まあまあ、食べ終わってからでもいいでしょ、お腹空かしてたら、誰だってまともな気持ちで話せないだろ?」
「……それは、まあ」
「味噌ラーメン二つ、おまちどー!」
「ありがとうおばちゃん! 今日も美人だねぇ、輝いてるよー!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないかい! もう、照れるねぇ」
俺は女性を褒めている坂口さんを無視しておばあさんが届けてきてくれたテーブルに置かれたラーメンを見る。
煮卵、ノリ、メンマ、ネギ……うん、この店の店長、わかってるな。
俺はカウンターで立っている男性を見る。
血管が浮き上がった細腕から、このラーメンを作るには華奢じゃないかと思ったががりがりな強面の顔を見て俺は余計な言葉を言わず、頭を下げる。
男性は無言で頷いたのを見てから、俺はラーメンに顔を向け手を合わせる。
「……いただきます」
俺はパキリと箸を割って、ラーメンに手を着ける。
その後に、女性と話していた坂口さんは後から続くように食べ始めた。




