082・とんでもない事態になってきた!
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
082・とんでもない事態になってきた!
運命とか神さまとかは信じない。
お母さんとは意見の合わないことが多いけど、この点については一致している。
世の中というのは因果応報、なにか事件が起こったり行動を起こすと、その事件なり行動が変数となって作用しあって事態を変化させる。
戦争なんてロクでもないけど、戦争のお蔭で電子レンジもインターネットも生まれた。電子レンジのお蔭でお祖母ちゃんは卵を爆発させて掃除が大変になるし、ネットのお蔭で思ったことをすぐにラインとかして後悔するし。スマホは便利だけどひとたび電池が切れれば、ただの板切れ。マップもGPSも使えなくなったミッキーがやっと見つけた公衆電話で「迷子になったあ!」と泣きを入れてくることも無かっただろうし、わたしが十三まで迎えにいくことも無かっただろうしね!
わたしが新しい同居人で悩む羽目になったのは、そういう因果応報の果てのことなんだ。
困ったことに、同居人は、いささかの運命論者。運命論の勢いで生徒会の活動をしてみたいと言い出した(-_-;)。
「運命だと思ったんだけどなあ……」
結論を聞いたミッキーは、ちょっとしょげている。
「ま、新しい執行部に持ち掛ければいいんだから、気落ちしなくていいわよ」
いささかのシンパシー有り気な顔で答えておく。
ミッキーには悪いけど、これ以上わたしのテリトリーに入ってきてほしくない。
脳天気なお母さんのお蔭で同居することのなったことだけでも十分すぎるほどトンデモナイことで、ミッキーの運命論を補強してしまっているのにね。
自分で言うのもなんだけど、ミッキーはわたしに気がある。
サンフランシスコの三日目、ゴールデンゲートブリッジのビュースポットでキスされそうになった。
日の暮れで、周り中アベックばっかで十分すぎるほどの雰囲気。雰囲気十分で迫ってくることは理解できる。
動物的衝動だけで迫って来たのではないことも分かっている。
ミッキーが、わたしを崇拝してくれるのは嬉しいけども、崇拝されたからと言って、それに100%応えなきゃならない義務はない。
でも、サンフランシスコからやってきた交換留学生への礼は尽くしてあげなければならない。
ホスト校の生徒会副会長としての義務と礼節はわきまえている。
わきまえていなければ、彼の同居が決まった段階で家出してるわよ。
生徒会規約によって執行部の肩書と人数は決まっている。現状で定員一杯。
執行部は選挙によって選出された者のみをもって構成すると生徒会規約にある。それに、留学生が執行部に入れる規定も無ければ選挙権の有無についてもうやむやだ。
そういうことを生徒会顧問と執行部に説いた。
「議決権のないオブザーバーならいいんじゃないのか?」
会長が柔軟なことを言うので、わたしはえぐらざるを得ない。
「でも、あんたたちの好きな猥談できなくなるわよ」
「「「え(゜д゜)!?」」」
これが会長以下の男子役員には効いた。
「アメリカはね、未成年へのセックスコードはメッチャ厳しいの。この棚に並んでるラノベはみんなアウトよ。体は大人でルックスは幼女のパンチラなんて即刻絞首刑! その下に隠してあるパッケージと中身が違うDVDなんか銃殺刑!」
「そ、それはネトウヨのデマみたいなもんだ!」
会長の悲鳴は、わたしのハッタリが事実であることを物語っていた。
そして、ミッキーの「生徒会活動に参加してみたい、いや、そうなる運命だ」という信仰的思い入れは潰えさった。
「残念ね、日本というのは慣例や規約にはやかましい国だから、わたしも応援したんだけどね……まあ、部活とかだったらノープロブレムだから、いっしょに探してあげるわよ」
「うん……頼りにしてるよ」
よし! 難関をパスした気になっていた。
ところが、とんでもない事態になってきた!
――ごめん、お祖母ちゃんと一週間泊まりの仕事になっちゃった。留守番よろ~!――というメールが飛び込んできた!
――ちょ、お母さん、ミッキーと二人ってことなんですか!?――
――大丈夫よ、ミッキーはいい子だし、念押しにメールしたら「安心してください、神に誓ってミハルを守ります!」って返事きたから――
で、それがお守りになるかのように奴のメールを転送してきた。
ウウ……それって、憲法だけで日本の平和が守れますってくらい脳天気なことなんですけど!
☆彡 主な登場人物とあれこれ
小山内啓介 演劇部部長
沢村千歳 車いすの一年生 留美という姉がいる
ミリー 交換留学生 渡辺家に下宿
松井須磨 停学6年目の留年生
瀬戸内美春 生徒会副会長
ミッキー・ドナルド サンフランシスコの高校生
シンディ― サンフランシスコの高校生
生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
先生たち 姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
惣堀商店街 ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)




