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オフステージ(惣堀高校演劇部)  作者: 大橋むつお
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069・夏休み編 思い出のサンフランシスコ・7 

REオフステージ (惣堀高校演劇部)


069・夏休み編 思い出のサンフランシスコ・7                     


※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです






 オタク文化の経済的波及効果は4兆円だって!



 大阪府の年間予算が3兆円、東京都が8兆円だから、そのすごさが分かる。


 ちなみに世界の国々で年間予算が4兆円に達しない国が80%だから、その気になってオタクが団結すればそこそこの経済規模の国が出来てしまう。


 こんなことを思い知ったのは、二日前に行ったカセイドールで仲良くなったメイド長シンディーのおかげ。


「ヤッホー、お言葉に甘えてやってきちゃいました(^▽^)/」


 達者な日本語でホテルに現れたシンディーは、お店のフリフリメイド服と打って変わって、カットソーにダメージジーンズ。


 化粧っ気も全くなしなんだけど、内から輝くものがある人で、人間の美しさは内面からなんだと思い知る。


「だけどミリーもすごいわよ、てかウラヤマよね。日本に五年も留学してるんだなんて、いったいどんな星の元に生まれたんだろうね」


 シンディーはノーパソを持ってきてくれた。


「先週終わったばかりの夏コミ情報だよ」


 ノーパソを部屋のテレビに繋いで、みんなで鑑賞。



 うわーー!!


 ぶったまげた!



 東京ビッグサイトは駅から会場まで――民族の大移動か!?――っちゅうくらいの人波。


 けして人ごみやない。猛暑の中、みんな整然と並んで順番を待ってる。


「日本人てすごいよね、大震災が起こっても、年二回のコミケでもキチンと秩序正しいんだよね。世界がオタクを認めるのはカルチャーとかクォリティーの高さもさることながら、こういうところにも惹かれるんだと思うわよ」


 日本に来て五年目やけど、コミケは知らんかった。他の三人も同じようで、画面を観ながら感心してる。


「でも、今年は三万人も少なかったんだよ」


「え、どれほど来てるの?」


「五十万人、三日間の合計だけど」


「「「「五十万人!?」」」」


「これだけのイベントなのに、日本じゃほんのトピックスにしかならないんだよね」


「五十万人言うたら、夏の甲子園よりも多いんちゃうかなあ!」


 啓介がときめいて、中学から久しく見なかった貧乏揺すりをしだした。


 ベンチで打順待ってる時にツーラン満塁とか、前のバッターがヘボな時にようやっとった。


「甲子園の80万人には及ばないけど、一日あたりは絶対コミケの方が多いわよ。もし、甲子園と同じ15日間やったら、絶対にコミケの方が勝っちゃうでしょうけどね。高校野球の経済効果は350億円ほどにしかならないんだよ、オタクは4兆円。日本政府もマスコミももっと力いれるべきだよ」


「うん、そうだね!」「そうね!」「せやな!」


「で、夏コミってなんですか?」


 千歳の基本的過ぎる質問にはズッコケてしまった(^_^;)。


「これを見てちょうだい!」


 シンディーはリュックの中から数冊の同人誌やらゲームを出した。


「ネットオークションで手に入れたの、半年かかったわ。まだ二冊手に入れてないんだ。日本に居たら、ぜったい朝から並んでゲットするんだけどねえ」


 わたしらが見たらマンガとかアニメとかのパンフくらいにしか見えへんねんけど。すごいお宝やということは、シンディーの熱気から伝わってくる。


「『葬送のフリーレン』と『薬屋のひとり言』が基本なんだけどね、『スパイファミリー』と『魔法使いの嫁』も外せないんだよねえ」


ミリー:「あれ、鬼滅とかはあれへんのん?」


 ホームステイ先の渡辺家で一番人気のアニメがないんで、ちょっと意外。


シンディー:「う~ん……あれは沼だからねぇ(^_^;)」


須磨:「え、沼?」


啓介:「ハマったら、なかなか抜け出されへんいう意味や」


千歳:「ああ、啓介先輩の『グローバルクラブ』みたいな」


シンディー:「え、グロクラやってるの!?」


 ちょっと空気が凍る、あれはグローバルと違てエロ-バルやし。部室の害虫騒ぎの時に不可抗力で初期化してしもて、啓介はムンクの『叫び』みたいになってしもて、以来うちらは黙認してる。いわば、演劇部のアンタッチャブルやし!


啓介:「え、いや、その……(-_-;)」


シンディー:「グロクラはキャラクリゲーとしては最高峰なんだよ! 課金してると、それこそ底なし沼でさ、友だちでハマってるのが居て……そうそう、その子にあたしのキャラ作ってもらったの!」


 カチャカチャカチャ……キーを秒速10回くらいで叩くと、シンディーをアニメ化したようなキャラが三種類出てきた。


 オオ……( ゜Д゜)


「リアル系とねアニメ系が二つ、わたし的にはこれなんだけど」


 アマロリのメイド服のアバターは、アニメ系なんだけど、ほんとうにシンディーの特徴をよくとらえてる。


シンディー:「うちのメイドの子たちも作ってもらってバッジにして付けようと思ったんだけどね」


千歳:「あ、かわいいと思いますよ!」


シンディー:「いや、さすがにね(^_^;)」


 あ、なるほど、そっち系のお店と誤解されるか。


千歳:「あ、ひょっとしてシンディーさんて、声優さんでチョイスしてません?」


シンディー:「ええ、千歳、分かる人なのお!?」


千歳:「アハハ、ちょっとだけですけど。アーニャとマオマオが同じ声優さんだと分かった時は感動しました!」


シンディー:「そうなのよ! 他にもねぇ……」


 不二家のペコちゃんみたいな顔になってキーを押して、声優さんの代表作品の声を聴かせてくれる。


 いやはや、今日はもう、アニメ談議で終わってもええかと思たんやけど、一時間ちょっと集中豪雨的に喋りまくったあと、ちゃんと旅行の話しもしてくれる。


「サンフランシスコ観光ならここね!」



 あくる日。



 シンディーのアドバイスで、アルカトラズ島の気合いの入ったプリズンミュージアムとロンバートストリートと日本庭園に行った。


 ヨセミテ公園とかゴールデンゲートブリッジとかもあったんだけど、天気が良かったらの条件付きやったので流れてしもた。


「オタク的なところは無いんですね」


 千歳はホテルでのノリがあったので、そいうところに行くもんだと思っていた。


『ハハハ、そういうのは日本が本場なんだから!』


 シンディーは電話の向こうで笑っていた。


 ちなみにシンディーはカセイドールの仕事があるのでプランを立ててくれるだけ。ただ新鮮なフィードバックが欲しいので、観た後は必ず電話かメールをするように言っていた。


『明日お勧めのところがあるの、わたしも同行するから行ってみない?』


 シスコ最終日に、シンディーは思いもよらないところを勧めてきた……。




☆彡 主な登場人物とあれこれ


小山内啓介       演劇部部長

沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる

ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿

松井須磨        停学6年目の留年生

瀬戸内美春       生徒会副会長

ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生

生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口

先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)

惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)

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