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オフステージ(惣堀高校演劇部)  作者: 大橋むつお
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049・地区総会・1

REオフステージ (惣堀高校演劇部)


049・地区総会・1                     


※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです






 逃げ水の向こう、蜃気楼のように茶臼山高校が見えてきた。


 今日は高校演劇連盟の地区爽快なんだ。


 ちっとも爽快じゃないけど爽快……顧問の先生が啓介部長に送ったメールが『爽快』になってたからね。


 むろん『総会』の変換ミス、でも、みんなの頭には『爽快』でインプットされてしまった。


 爽快とは程遠いただ今の気温は32度もある。


「こういう逆説めいた表現は昔からあるよ」


 須磨先輩がジト目で言う。


「めっちゃ寒くて岩だらけの島を『グリーンランド』って呼んだり、戦ばっかりで人が大勢死んだり裏切ったりの時代の物語を『太平記』って名付けたり……フフ……」


 演劇なんてちっともしないクラブを『演劇部』……思ったけど口にはしない。先輩の目を見たら笑ってたから、きっと同じことを思っていたんだ。


 そろそろ33度になろうかという気温の中、電動とはいえ車いすはきつい。


 UVカットの帽子に日傘をさしているんだけど、車いすというのは健常者よりも地面が近い。33度というのは百葉箱の中だかアメダスとかの観測値で、照り返しのきついアスファルト道路の温度じゃない。体感気温は40度に近い。



 地区総会のことは昨日言われた。



「地区総会に行ってこいやてえ、顧問命令や」


 不貞腐れたように啓介先輩が言った。


 先輩は一人で行くつもりだったけど「おもしろいかも」という須磨先輩のノリで四人揃って行くことになったんだ。「茶臼山までは車出してもらえるらしい」ということだったんだけど、今日になって学校だか顧問の都合でアウトになり、地下鉄と徒歩で行くことになってしまって、グリーンランドや太平記を思い浮かべてるわけ。


 顧問の先生は用事があるとかで、付き添いは新任の朝倉先生。


 ザックリした先生で「大丈夫?」と二度ほど聞いてくれたけど、あとはほったらかされている。


 昨日今日の車いすじゃないからホッタラカシが気楽でいい。


 歩道なので一列になっている。


 先頭が朝倉先生。続いて小山内先輩、ミリー、わたし、須磨先輩の順序になっている。


 ミリーと啓介先輩は時々入れ替わるけど、須磨先輩とわたしは定位置になっている。

 茶臼山が近くなっても変わらないので、須磨先輩が人知れず介助をかってくれているのだと思った。


「すみません先輩」


「え、え、なにが?」


「介助してくださって」


「あ、え……あ、どういたしまして」


 そう言いながら、先輩は耳元に顔を寄せてきた。


「ちょっと朝倉先生苦手でね」


 え、なにがあったんだろ!?


「ドンマイドンマイ」


 校門を潜ると総会会場までは、要所要所に茶臼山の生徒さんが立っていて迷わないようにしてくれている。


 たった四人なんだけど目立ってしまう。


 四人がそれぞれに個性的なんだ。


 車いすのわたしは一番目立つ。視線が痛い。「がんばってるね!」感で見られるのは収まりが悪い。


 ミリーはブロンドのアメリカ人なのでやっぱ注目される。


 啓介先輩も、こういう場というか他校の生徒と比較できるところに来ると、意外にナイスガイに見える。とても、部室でエロゲばっかりやっているオタには見えない。


 そして、須磨先輩は六回目だったっけ……の三年生なので、アニメに出てくるお姉さまキャラのように魅力的だ。


 遅れてくる学校があるようで、定刻になっても地区総会は始まらない。


「お待たせして申し訳ありません、五分遅らせます」議長の生徒から声が掛かった。


 うん、遅れてもいいよ。


 会場の会議室はギンギンに冷房が効いていて、できたらこのまま昼寝したいぐらいに『爽快』なんだしね(^_^;)。


 すると赤いリボンの女子高の一団がわたしたちのところに寄って来た。 

  



☆彡 主な登場人物とあれこれ


小山内啓介       演劇部部長

沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる

ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿

松井須磨        停学6年目の留年生

瀬戸内美春       生徒会副会長

生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口

先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)

惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


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