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オフステージ(惣堀高校演劇部)  作者: 大橋むつお
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045・ブタまんは時空を超えて・2

REオフステージ (惣堀高校演劇部)


045・ブタまんは時空を超えて・2                     


※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです






 四十年……四十三年前のあの日……今日と同じようにブタまんを食べながら雨が止むのを待ってたんや。



 遠い目をしてハイス薬局のオヤジは語りだした。



「どや、完璧な出来やぞ!」


 ドアを開けると『8時だヨ!全員集合!』のコントのように薬局が吠えた。


「ハーーー薬局、先走りし過ぎやぞ」


 部長の谷口はため息をつきながら目を上げた。ただでも進まない台本書きを中断させられて機嫌が悪い。


 谷口の机の周りは書き損じの原稿用紙が散らばり、一年生部員たちが書き損じと書きあがった原稿を区別しながら整理している。

 二十一世紀の今ならパソコンでいくらでも書き直しができるが、ようやくワープロが世に出始めた時期で、高校生の俺たちは原稿用紙。それも、更紙に印刷した超安物を使っていた。


 部員たちの前には乾いたブタまんの敷紙がそっくり返り、待ち時間が長かったことを示している。


 ドサ


 家業そのままに薬局と呼ばれる俺は、その敷紙やらスナック菓子の残骸を蹴散らして大きな寝袋のようなのを置いた。


「やっぱ人形使うのん?」


 書きあがった原稿は利根芳子がファックス原紙に清書している。


「幕開いたときのインパクトがちがうやろ、エリ-ゼは目に見える形で観客に提示した方が、絶対にええ!」


「主人公の恋はプラトニックなもんやねんから、人形いうのは……なんちゅうか……」


「なんやねん谷口、書き上げん前からショボイため息ついとったらあかんで」


「そやけど、人形使うんやったら、エリ-ゼの魅力が出てるもんやないと、かえってマイナスやで」


「おまえは、俺の腕を見くびってるやろーーーーー!」


 ヂヂヂヂーーーーー!


 勢いをつけ袋のファスナーを開けると、それを取り出した。


「「「「「オオーーーー!」」」」」


 部室のみんながどよめいた。谷口は、放課後一度も手放さなかった万年筆をポトリと落とした。


「まるで生きてるみたいじゃない……え、お、う……」


 利根芳子はビックリした一呼吸あと、口ごもって息が停まってしまった。


「すごい……」


「だ、脱帽だ」


「こないだ『8時だヨ!全員集合!』で、大根と志村けんソックリの人形の首をギロチンにかけるコントやってたやろ」


「ああ」「見た見た」「あったあった」「リアルでグロイて批判されてた」


「え、この人形も首落すん!?」


 芳子が真顔で嫌な顔しよる。


「それはさすがになあ」


「リアルやけど……なにでできてんねん?」


 原稿用紙をほっぽらかして谷口が聞く。


「美容整形で使うシリコンを試してみたんや」


「さすが、薬局」


「触ってもええ?」


「ああ、そっとな」


 芳子がそっと人形の頬に触れる。フニっと触れたところが沈んで、芳子も部員たちもさらに感動した。


「先輩、いいですか」


 一年生がことわって芳子の頬に触れた手で人形の頬に触れる。


「先輩よりもシットリしてるかも……」


 普段なら張り倒す芳子だが、あまりの感動に言葉も出ない。


「こ、これ、全身がシリコンなんかぁ……?」


「もう、エッチ!」「キャー」


 谷口が定規の端で人形のスカートをめくり、女子たちの顰蹙をかう。


「見えへんとこは発泡スチロールや」


「なるほど」


「これ……だれかに似てるなあ」

 

 腕組みした谷口が呟くと、ほかの部員たちも腕組みしたり顎に手を当てたりして人形の顔を見つめる。


「「「「「…………アッ!」」」」」


 一同の声が揃った。


「え、あ、なんやねん!」


「薬局、これ二組の転校生にそっくりや」


「え…………あ!?」


 谷口の指摘に初めて思い至り、壊れた信号機のように顔色を変える四十三年前の俺であった。

 



☆彡 主な登場人物とあれこれ


小山内啓介       演劇部部長

沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる

ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿

松井須磨        停学6年目の留年生

瀬戸内美春       生徒会副会長

生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長

先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)

惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ)



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