044・ブタまんは時空を超えて・1
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
044・ブタまんは時空を超えて・1
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです
一連の作業が終わると、嘘のように臭いが消えた。
さすがは薬局と感心すると、引き換えに雨が降って来た。
「しもた、傘持ってくるのん忘れたなあ」
薬品をしまうオヤジは手持無沙汰になってしまった。
「しばらく休んでいかはりませんか、通り雨みたいですし」
スマホをしまいながら啓介が言う。天気予報を確認していたのだ。
「お掛けになってください、お茶を入れますから」
器用に車いすを旋回させて千歳はコンロに向かう。狭い仮部室だが、車いすをうまく操り、ぶつけることもない。
「カップ洗ってきます」
「そうね、臭いとかついてるかもだもんね」
須磨とミリーも機敏に動き出す。
臭いを消してもらって有り難いという気持ちなのだが、ミイラを作ったというオヤジの話も気になる四人だ。
「せやなあ、ちょっと休ませてもらおか」
やがてミリーが人数分のカップを洗い終えて戻って来る。その間に、啓介はテーブルを拭き、千歳は急須を温めてお茶ッパを入れ、ヤカンを引き継いだミリーはカップにお湯を注いでカップを温める。
「先輩は?」
「食堂に寄ってるよ」
「お茶入れまーす」
「手伝うね、啓介じゃま!」
「お、すまん」
狭い部室でチマチマ立ち働く部員たち。段取りと活気の良さは、松竹新喜劇の幕開きのように小気味よく。なんだか嬉しくなるオヤジ。
「サービスしてもらっちゃった(^_^)」
食堂から返って来た須磨が、雨から庇っていたものをドサリとテーブルに置いた。
「お、懐かしい、食堂特製のブタまんやなあ!」
「やっぱ、うちの卒業生だったんですか?」
「ハハ、もうバレてるわなあ」
「で、演劇部だったんですか?」
「そう、あの日もブタまん食べながらやったなあ……」
オヤジは、ブタまんを手にしながら遠い目になっていった。
「あれは……文化祭が終わって間のないころやった」
薬品をしまって、ブタまんの尻の紙を剥がしながらオヤジはポツリポツリ語り始めた。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
小山内啓介 演劇部部長
沢村千歳 車いすの一年生 留美という姉がいる
ミリー 交換留学生 渡辺家に下宿
松井須磨 停学6年目の留年生
瀬戸内美春 生徒会副会長
生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長
先生たち 姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)
惣堀商店街 ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ)




