017・……あら、3人になったの?
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
018・……あら、3人になったの?
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです
お互いネコのようだと思った。
普通教室まるまる一個分の部室に3人しかいない。
その3人が、互いに関わることも揃ってなにをするでもなく、好きなようにしている。
啓介は、ワイヤレスイヤホンを掛け、好物の冷やし中華を食べながらスマホを弄っている。
千歳は、もう隠そうともしないでワンピースを読みふけっている。
そして、須磨が一番ネコらしく、椅子を並べた上に丸く寝そべって寝息をたてている。
放課後の部活が始まってから、ずっとこんな調子だ。
かりに誰かが監視カメラをしかけていて、部活の始まりから観ていても、この3人が演劇部であることは見抜けないだろう。
それもそのはずで、啓介は、校内で隠れ家が欲しいだけで演劇部の看板を利用している。
車いすの千歳は、学校を辞めるに足る部活参加の実績を作って、一学期末には「惣堀高校でがんばったけどダメだった」と周囲を納得させるためだけに入部し。
6回目の3年生をやっている須磨はタコ部屋(生徒指導分室)以外の部屋に行きたいために5年ぶりに復活しただけだ。
この昼下がりのネコカフェのようにアンニュイな静けさは、30分おきに小さく破綻する。
目をつぶったま須磨はムックリと起き上がり、尻を軸として180度旋回し、再び横になる。
まるで猫のように膝を曲げるので、スカートの中が丸見えになってしまう。
「っつ……千歳、頼むわ(-_-;)」
「啓介先輩が移動すればあ(-_-;)?」
「もう2回移動した。それに今は食事中やし」
「もう……あたしは足……」
「うん……?」
「なんでもない」
千歳は足が不自由なことを言いわけにはしない。口をつぐむと床に落ちた毛布を拾って須磨の体にかけてやる。
「こんど目が覚めたら、スパッツとか穿くように言うてくれへんかなあ」
「きのう言った。暑くなるからやなんだって」
「…………」
そして、再びアンニュイな淀みが部室を満たし始めた時、ドアがノックされた。
コンコン
入ってきたのは1週間ぶりの瀬戸内美晴だ。
千歳はさりげなくワンピースをチェーホフに挟み、啓介は口元まで冷やし中華を持っていったまま固まり、須磨はそのままだ。
「……あら、3人になったの?」
「あ……うん。もう、これくらいで堪忍してくれへんかなあ」
「なに寝ぼけてんのよ。あたしは5人と言ったのよ。ちゃんと生徒会規定に則って」
「あ、でも、そこの松井先輩は8年目で6回目の3年生だし」
「ええ、そう。松井先輩1人で3人分くらいの値打ちあるんじゃないかしら」
「2人とも、寝言は寝てから言ってくれる。規定は規定、揃わなかったんだから、週末までに部室を明け渡してよね。じゃあね」
「ちょ、ちょっと副会長!」
回れ右をすると美晴は、そそくさとドアの外に消えて行った。
「ちょ、ちょっと、どうにかならないの!?」
「3人で……いや、2人で、もう一度話しにいこう!」
あわただしく2人は美晴を追いかけ、三度目の寝返りを打った須磨だけが残された。
☆彡 主な登場人物
小山内啓介 演劇部部長
沢村千歳 車いすの一年生 留美という姉がいる
ミリー 交換留学生
松井須磨 停学6年目の留年生
瀬戸内美春 生徒会副会長
生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン
先生たち 姫ちゃん 八重桜




