35. アストラス王国を目指して
久しぶりの更新!
私生活が慌ただしく、更新不足でスミマセン!
先を歩く二人にカピが近づいて声をかけた。
「シーナっち~!例の聖水持ってるッスか?」
「え!?」
「聖水?それならさっきシーナさんが、のッ!?」
「の??」
「何でもない何でもない!ジジさんは!先に!行きましょうっ!」
「わかった、わかったから押さないで。」
慌ててジジの背中を押し出すシーナ。
空のビンを隠すようにカピに見せ、小声で耳打ちした。
「の、残りの一本は、蓋が取れてこぼしちゃって!服に付いたとこジジさんに見られてたんですよ~。リリー様に知られるの恥ずかしくって!後で洗わないと」
「そぉ~~、だったんスか~。」
「そうなんですよ~!だからナイショでお願いしますね☆」
「「あは、あはははは!」」
「(のって言われたから一瞬飲んだかと思ったッス。流石にリリー好きでもそんな事するわけないッスよね~?自分のものかも知れないし。)」
「(あっぶな~!。自分のに目印入れといて正解だった。思わぬご褒美、ごちそうさまです☆)」
二人が笑っているところに、リリーが近づいて来た。
「シーナっちがこぼしたって~。」
「そっか、なら仕方ないね。」
リリーは空のビンを受け取りカバンにしまう。
「ミラナさんの屋敷ってどっちでしたっけ?」
「あっちだよジジ君。」
ジジの問いに指差してリリーは答えた。
大きな屋敷だったのは覚えてるけど、流石に道までは覚えきれないよね~。
もし、はぐれたら迷子になるんじゃ?
っと今更ながら思ってみたり。
しばらく歩くとミラナさんの屋敷に到着した。
見た目が変わったので、最初はすごーく怪しまれたがリリーさんも居たので信じてくれたようだ。
「いやいや、まったく驚きですね!世界の七不思議を超える事案ですぞ~!それはそうと、積もる話しも聞きたいのでゆっくりしていって下さい。」
「ありがとうございます。お子さんも無事でしたしほんと良かったです。ところでイリーナさんは?」
「あぁ、せっかく来てもらってすまないが、まだ後処理で・・・。」
「そう、でしたか。」
余計な詮索はすまい。
ジジ達はツルギザキで起こった内容をかいつまんで伝えた。
そして、船に乗る為の身分保証の後ろ盾になってもらえるよう頼んだ。
「なるほど。ご実家に帰る為に船旅を。」
「お力添え頂けると助かるのですが__。」
「もちろんです!明日には用意できるよう早速手配しましょう!」
「ありがとうございます!」
「ところで~、もう一人のお連れの方は?」
いつの間にかシーナさんは髪をボサボサにしてクッキーをつまんでいた。
「あ、こんにちは!私見習い魔法使いのシーナって言います!クッキー頂いてます☆」
「シーナ様。ですね。以前どこかでお見かけしたような?」
「やだな~。ツルギザキでもお会いしましたよ?挨拶はできませんでしたけど。」
「そうでしたか、シーナ様にも大変ご迷惑おかけしました。」
「いえいえ。乗りかかった船ですから。」
「船旅だけに。ふふ。」
カピが一言付け足す。
「ささ、今日はゆっくりしていって下さい!」
「(流されたっス!!)」
今夜はミラナさんの所で厄介になることに___。
――――アストラス王国行き船上
翌朝、ミラナさんはアストラス王国、王都オルアレン行きの乗船券を用意してくれた。
話によるとノーザンバーグ領は王都に近いらしい。
王都経由で行けば最短らしいが、1週間は船の上との事だ。
別れを惜しみつつ、いつかの再会を約束をしたジジたち。
今は思っていたより豪華な船の上。
なのだが、危機的状況に!
「う゛ぉぅ~。」
「んぐぅ~ん。。。」
リリーとシーナの二人は船酔いでダウン寸前だった。
船は初めてらしい。
海に向かって放たれた撒き餌が、風に乗ってキラキラと輝いている。
「二人とも~、だらしがないっスね~。」
「「・・・・・。」」
言い返す気力も無い二人。
上半身を海に投げ出し、お尻だけがこちらをむいていた。
何とかしてあげたいのだが。。。
色んな薬はあれど、酔い止めの薬はこの世界にはないそうだ。
傷がすぐ治る薬や毒消し草はあるのに。
万能薬は効くかもしれないが、そんな高価なものをたかが酔い止めに使ったバカはいないらしい。
「カピさん、このタオルをシーナさんに。とりあえずリリーさんから船室まで運びますので!」
そう言うとジジはカピの頭にタオルを乗せ、リリーに肩を貸し船室まで連れて行く。
続いてシーナさん。
「ジジぐん、ありが。・・・とう。」
「横になって休んでて下さい。」
「カピさん、ちょっと考えがあるのですがちょっといいですか?」
「いいっスよ?」
「_____な感じでなんですけど出来ますか?」
「出来るっスけど、ほんとにそれで良くなるんっスか?」
「ものは試しでやってもらえませんか?もしお二人が無理そうならすぐ止めて下さい。」
「らじゃ~っス!」
早速カピは二人に浮遊魔法をかけた。
「リリーさん、どうですか?気持ち悪くないですか?」
「・・・揺れが、落ち着いた、感じ。・・・だ、大丈夫。」
良かった、予想通り。
この世界の魔法には特徴があると、以前魔法の特訓中に教えてもらった事がある。
どの魔法もそうだが、発動時に術者を守る為の魔法障壁が術者を包むらしい。
その障壁は物理衝撃や使用術式以下の魔法は弾くそうだ。
なので、船の揺れも軽減してくれるのではないかと考えたのだが、どうやら正解だったようだ。
「こんな使い方があるなんて!さっすがジジ君っスね!」
「いえいえ。カピさんがいてくれるからこそですよ!それより~、二人が良くなるまで浮遊魔法。お願いしますね☆」
「えッ!?えーーー!!」
「ちょっとこの船の厨房に行ってきますので、しばらく席を外します。」
「ちょっとまだ魔力が・・・。」
そう言うとカピの苦情を受け付ける間も無く、船室を後にした。