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異世界じぃじクエスト  作者: ☆さくら
_第二章_
30/36

30. レトロウイルス

 敵だと思ったアリスは生命の女神様の使いだった!

ジジに『加護の全解放』を授けに来たのだが・・・。

「太古の昔にかかったウイルスのゲノム編集で、生殖細胞を強制的に進化させる事に成功したんですの。いわゆる遺伝子操作ってやつね。ジジさんだっけ?あなたなら前世で聞いたことくらいあるんじゃないかしら?」

「???」

「分からないって顔してますわね。簡単に言うと死なない身体になっているだけですの。」

「不老不死って事ですか?」


 あれだけのケガが治るのだ。

 死なないのは分かるとして、痛みは何とかならないものか。

 あと、この身体(老体)のままなのはちょっと…。

 

「不老不死とは違いますの。歳もとるし、いつかは死にますわ。」

「死なない身体なのに、死ぬっスか?」


 半笑いのカピにアリスが睨み付ける。

 応戦するかのようにカピが睨み返す。


「もういいッ!説明も面倒くさい!とりあえず力は引き出してあげますわ。使い方は自分で学びなさい!ッ!表へ出やがれネズミ野郎!」

「上等っス!エセ女神ッ!」


 中指を立てて煽るアリスに、メンチを切るカピ。

 あーあ、大事にならなければいいけど。


「あ、あの~、私は~。」

「あ~付いて来るなって言っても、付いて来そうだし。リリーさんがいいなら付いてきてもいいんじゃないかな?ただし!危ない事もあるから指示には従うように、ね?」

「はい!ありがとうございます☆」


 こうして、シーナがついて来る事に。

 おまけに女神様の使いまで。



《ツルギザキ郊外》


 ラヴァンナの街に一旦戻る事になった。

 クエストの完了申請は受けた街でしか受理してもらえないからだ。

 そこで道中、ジジの『女神の加護』の力を引き出してもらう事になった。

 ウマが合わない二人は、ちょこちょこ口喧嘩しながら賑やかに街道を歩いている。


「あのへんでいいかしら?」


 傷もすっかり癒えたアリスが、街道から少し離れた草原を指差した。

 辺りに人影は見えない。

 

「勇者さま、あなたにはなるべく早く魔王を()()()()()()もらいますの。その為に勇者召喚(ふつう)には行わない『加護の全解放』を。力を引き出しますの。」

「??、見つけ出す?」


 ちょっと引っ掛かるところはあるが……。

 魔王を倒す力?が手に入る今は、あまり突っ込んで機嫌を損ねたくはない。


「ちょっと痛いけど、我慢して下さいまし。」


 アリスはジジめがけてジャンプ、同時に左腕でジジの胸をえぐった。

 鈍い音と共に飛び出る鮮血。

 痛みを感じる間すらなかった。

 身体から魂だけが抜き取られた感覚。

 アリスの手には、脈打つ心臓が握られていた。


「「ジジ君!!」」

「心配無用!大丈夫ですの。」


 肺ごと潰され、息も出来ずに悶え倒れるジジ。

 だが、アリスは冷静に自分の右手人差し指を噛み、垂れてきた血を心臓に垂らした。


 その瞬間――――。

 眩い光と熱が二つの周囲を覆った。

 アリスは声にならない言語で、ジジの心臓にコードを打ち込む。


 これが解呪の魔法なのか、彼女の言う遺伝子操作なのかはジジには分からない。 

 ただ分かるのは、息苦しい中でもこの光の中は心地良い暖かさという事だけ。


 コードを打ち終えたアリスは、持っていた心臓をジジの胸に押し戻した。

 戻されたジジの心臓から赤い糸が無数に現れ傷を修復していく。


「成功ですの。」


―――――



 ジジが目を覚ますとリリーの寝顔が目の前にあった。

 リリーの小さな身体に膝枕をされている。

 驚いたが、身体が思うように動かせない。

 何とか頭を動かして辺りを見回してみると、アリス、カピやシーナは遠くの木陰で食事をしているのが見えた。

 太陽も真上に上がり、いつの間にか昼になっていたらしい。


「……良かった!」


 起きたリリーはジジの頭を撫でて喜んだ。


 気が付いたジジを見て安堵したのか、少し涙目になっているみたいだ。

 そんな顔も可愛らしい、と思ってしまう。

 それにしても、リリーさんの手はこんなに大きかったかな?


「ジジ君、死ぬんじゃないかと…。あれからアリスさんと色々あって…。」


 お弁当組も気づいたのか、こっちに向かって手を振っている。

 一人ものすごい殺気を放っている人がいるのは気のせいか?


「ジジ君?大丈夫?」

「え?…あ、…はい!大丈夫…です。」


 あちこち身体が痛いし、声も出しづらい。

 それよりも、膝枕で頭を撫でられている姿を見られたのがすっごい恥ずかしい。

 柄にもなく顔が火照っているのが自分でもわかる。


 起き上がろうとするジジを、リリーは支える。


「まだ寝てないと!」


 そういうわけにもいかない。

 一人殺気立てて猛ダッシュしてくる人物がいるからだ。


「ジジさん!ずるい!ズルい!ずるーいーッ!!リリー様のひざまくらーッ!」


 到着するなりビシッっと指差し、上から見下ろすシーナの殺気は異常だった。

 嫉妬の感情が色濃くジジに向けられる。


「リリーさま~!あたしも膝枕して欲しいな~☆」

「だめ。」


 即答で断るリリー。

 しょげるシーナを見て、近づくアリスが大笑いしている。


「…なら、ジジさん!ジジさんに残ったリリー様のぬくもりを私に下さい!」


 そう言ってジジに抱きつき、頬擦りをしてきた。


「もっとダメーッ!!」


 抱きつくシーナを無理やり引き剥がす。

 だが、リリーから身体を触られてニヤけるシーナ。

 

 ダメだな、こりゃ重症だ。

 先が思いやられる。。。


「もう大丈夫みたいっスね?」

「わたくしの術式に問題はないですの。」


 カピとアリスが近づいてきた。

 二人はケンカはするが、拒絶する程ではないようだ。

 それにしても、みんなちょっと大きくなった?ように見えるのだが…。


「そろそろ気づいたんじゃないかしら?」

「???」

「力については色々聞いといたっスよ。」

「あのね、ジジ君。実は身体がね!」

「あ~リリー、見てもらって驚かそうよ!姿が映る氷か何か出せないっスか?」


 この物言いは、もしかして!?


 リリーはジジの近くに氷の塊を生み出した。

 恐る恐る覗くと……。


「若返っとる~ぅ!?」


 女神様ありがとうッ!

 ちょっと若過ぎるけど、老人よりはいい!

 12?13歳くらいかな?


「若い?だいぶ年寄りになったと思うっスけど?」


 そうだ、この世界では逆だった。

 そんなことは今はどうでもいい。

 老人ではないのだから!


「神様、アリス様、ありがとうございます!」

「しっかり精進すると良いですの。」


 力がッ!

 闘志がッ!

 身体の奥底から沸き上がってくるぞぉ~!

 若いって素晴らしい☆

 殺されかけた事もあったけど、こうして力と若さをくれた女神様はいい神様だぁ~!

 ありがとう神様!童貞卒業の日も近いぞ!


「それではわたくしは役目を終えたので、帰らせて頂きます。また近いうちに会えるでしょうが、それまでに力を使いこなして下さいまし!

あ~、そうそう言い忘れてましたけど。ジジさん。」

「はい!」

「あなた、生前大賢者だったから召喚されたんでしたわね?」

「お恥ずかしい話ですが、その通りです。」

「召喚された勇者には、制約が一つだけあるんですの。」

「制約?」

「それは、『この世界でも大賢者を貫き通す事』ですの。破られた瞬間、女神の加護は消え去りただの人間になってしまいますの。」

「えッ!えッ!?」

「ですので大賢者を貫き通して下さいましね?」

「えぇーーッッッ!?」

「大賢者?」

「ジジ君って賢者だったんスか!?」

「ジジさんって見かけによらず凄い人だったんですね!」

「違う!違うんです!生まれる前の話で!」


 夢のハーレム生活がぁぁぁ~!


()()()()()お気をつけ下さいまし!それではご機嫌よう!」

「ちょっと待っ…!」


 痛みの残る身体を振り絞り、アリスの手を掴もうと必死に手を上げる。

 だが、音もなくアリスの身体が浮き上がり、空に溶け込み消え去った。


「Oh noーーッッッ!!」


 ジジの絶叫だけが空に虚しく響き渡るのだった。


読んで頂きありがとうございます! 


続話の活力によろしければブックマーク評価、応援お願いいたします☆

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