27. 白猫奪還プロジェクト その後
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《ラインハルト領 ツルギザキ街奉行所》
次の日、盗賊と奴隷商人を裁いてもらうために奉行所と言うところにやってきた。
奉行所とは、行政・司法・警察・消防を一括して担う役所である。
「奉行所って、時代背景めちゃくちゃですね。」
「国は王家が、領地全体に関しては貴族が、街に関しては各奉行所の役人が管理してるんスよ。ジジ君の元いた世界にはなかったっスか?」
「ありましたけどずいぶん昔の話しで、政治とか裁判とか全部それぞれ独立していて権力が偏らないようになっていたんですよ。」
「へー、凄いっスね!」
雑談をしていると、片腕を無くしたあの男がやってきた。
「本当に助かった。礼を言う。」
「いえ、むしろ助けていただいたのはこちらの方です。ありがとうございました!」
そう、この人が根回して仲間に誘ってもらっていなければ、外で待機していたリリーさんに根こそぎ狙撃、ケガ覚悟で戦闘になっていた。
むしろそのつもりで正面から突入していた。
ミラナさんが言っていた奴隷商人も上手く捕まえる事ができたし感謝しかない。
「すみません。もっと早く動いていれば、右腕が・・・。」
「これは私の落ち度だ。気にする事はない。」
とはいえ、ケガが痛々しい。
気にならないわけがない。
この人は協会側の人間らしいが、おそらく潜入捜査をしていたのだろう。
詳しく聞くとまた何かに巻き込まれそうな気がする。
深くは聞かないでおこう。
「それに利用したのはお互い様だからな。」
この人は、始めから見抜いていたのか!?
まっさか~。
「ジジ君。そろそろ。」
「はい、今行きます!」
「それじゃ、ありがとうございました!」
「あぁ、またどこかで。」
ジジはリリーに手を引っ張られてその場を後にする。
ミラナさんの獣人はと言うと、明日ミラナさんが迎えに来るそうだ。
「せっかくここまで来たし、ミラナさんがこっちに来るまでちょっと観光しませんか?」
「そうっスね!シーナちゃんお願いできるっスか?」
「はい!喜んで☆」
そう、このリリーさんと同じ位の背格好の女の子。
実はリリー役を演じて一緒にアジトに乗り込んでくれた功労者だ。
―――昨日の日中――
「リリーの服も買ったし、次はどうするっスか?」
「次は冒険者ギルドに行って、リリーさんと同じくらいの身長の方を探して、協力をお願いしようかなと!」
「なるほど、そういう事っスね!この仮面があらぬ所で役に立つっスね。」
仮面をしている人物の中身は誰も知らない。
だから、協力者にリリーの格好をさせて油断を誘い、リリーは敵に見つからない位置から罠を解除または敵を一撃で仕留める。
「でもそれって、協力してくれる人が危なくない、かな?」
「確かにそうですね。でも危ない事に慣れてる冒険者なら引き受けてくれるかな~って。」
「そう簡単に、リリーと同じくらいの体型の魔法使いがいるっスかね~?」
「大丈夫です!ファンタジーものならご都合主義で必ず何とかなるものです!」
「何言ってるか、ちょっとよく分かんないっスね。」
「と、とにかく、一度行ってみましょう!」
すると一人の女の子が声をかけてきた。
「あの、失礼ですが、もしかして、あの、大魔法使いリリー・レナータ様でごさいますか?」
「え?あ、はぃ。」
反射的に返事をしてしまったリリーさん。
そして瞬時にジジの後ろに隠れてしまった。
「あのあの、私大っファンなんです!さっきお店に入るところ見かけまして、少しお話し出来ないかな~なんて。いや、でもご迷惑ならいいんです。けど、私、リリー様に憧れてて。魔法も少し使えるようになったし、ほんの少しでもいいのでお話し、お願いします!!」
キターッ!!ご都合主義!
この好機掴まねば!
だいぶ興奮気味みたいだけど、悪い人では無さそうだ。
背はリリーさんよりちょっと高いかな?
「はじめまして、ジジと申します。」
「うぁぉ!!しゃべった!」
「はぁ。」
もう慣れましたよ。
えぇ、慣れましたとも。
「どうしますか~?リリーさん。」
後ろに隠れて出て来ない。
過度な人見知りだ、仕方ないか。
「あー、あの~よろしければその~、これも何かの縁ですし、お二人ともお茶でも飲みながらで、いかがですか?」
「はい!是非に!」
「うん。」
「私はシーナ・アラカルト。シーナって呼んで下さい!よろしくお願いします!」
「リリーに、カピに、私がジジです。どうぞよろしく!」
と言うところで近くのお食事処に。
雑談混じりにリリーさんの性格や、これまでのいきさつを話した。
もちろんリリーさんの替え玉の依頼も。
「わ、私がリリー様の替え玉!?し、しかも、今着てらっしゃるリリー様のお召し物を私が!?」
「リリーさんはその~、服を貸す事に抵抗ないですか?」
「大丈夫。これも作戦の一部でしょ?」
「はい。」
「はいはーい!ぜひ私に身代わりを務めさせて下さい!」
テーブルから身を乗り出しながら彼女は手を上げていた。
かなりリリーさんに心酔しているようだ。
けれどー。
「鼻血出しながら言うのはどうかと思うっスよ。」
「盗賊と戦闘になるんだ。危険も伴う。それでもいいのかい?」
「危険は覚悟の上です!リリー様の服、着させて下さい!」
「そっちがメインじゃないんだけどなー。まぁ、それじゃ、準備が整い次第って事で!」
―――昨日の戦闘後―――
全員の意識を刈り取った後、リリーは盗賊と奴隷商人達を縛り上げ、腕を無くした黒服を止血した。
ジジ達が起きると涙目のリリーがいた。
「みんな、ご、ごめんなさい。。。」
「あぃたた。良かった~、リリーさんが無事で。」
「リリー様~!」
「お手柄っスね!・・・まさか、オイラ達まで」
「もぅ。ごめんって。」
「て、てめぇら、騙しやがったな!」
盗賊さん方も気がついてきた。
だが普通の捕縛ではない。
事前に用意した魔法で強化された縄だ。
普通の人間にはまず、切る事もほどく事も出来ないだろう。
文字通り首にも縄をしてもらった。
「騙したなんて、人聞きの悪い。」
「汚ぇーでやんす!」
「仲間になるって言ったじゃねーか!!」
「仲間になる、な~んて言った覚えはないですよ?それに私は、提案をしただけにすぎません。勝手に解釈して了承したのはあなたでしょ?」
そう、騙したわけではない。
そう仕向けただけで。
「わたくしにこんな事して、タダで済むとは思わない事ね!」
「ドレイクさん、私の前世のファンタジーの名言にこんな素敵な言葉があります。『悪人に人権はない!』首が繋がってるといいですね☆」
笑顔で返すジジに顔が引きつる奴隷商人。
きっと心当たりがありすぎるのだろう。
御愁傷様である。
「リリーさん。ありがとうございました!」
「私はジジ君の作戦通りにやっただけ。」
「二人とも良く頑張ったっスね!もちろんシーナちゃんも。」
「ありがとう!カピちゃん!ジジさんも意外とヤルんですね。リリー様のご活躍、感動してシビれました~☆」
「ほんと、ごめんなさい。」
後は役人に突き出すだけ、なんだけど気がかりが一つ。
あの片腕を飛ばされた黒服だ。
「リリーさん。あの男解放してもらえますか?」
「え!?いいの?」
「あの人は今のところ味方だから、大丈夫だよ。それに後始末をお願いしないといけないからね。ですよね?」
「君は喰えない奴だな。お望み通り、後は任せて貰おうか。」
協会に属しているらしいが、その協会がこのドレイクと言う奴隷商人を捕まえたい理由があったのだろう。
だからこの男を潜入させて、と~余計な詮索は止めておこう。
余計な面倒を呼び込む悪いクセだ。
「よろしく頼みます。腕は大丈夫ですか?」
「問題ない。それより、奉行所への連絡を願えるか?」
「わかったっス!」
こうしてやっと追加の依頼も完了したのだった。
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