23. 白猫奪還プロジェクト その2
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「おい、開門!急げ!」
ここは北の検問。
壁守の兵士が黒服の荷馬車を街の外へと逃がしている最中だった。
街の周囲を取り囲む壁には、東西南北それぞれに検問所が設けてある。
魔物も夜には活発になる為、通常日の入りから日の出までは閉められているのだ。
余程重要な案件以外は出入りは許されないのだが……。
「思った通り、検問は懐柔されてるっスね!」
「そうみたい。」
「はぁ、はぁ、待って!二人とも、速い。」
倉庫から検問までそれほど距離はないものの、馬車を走って追いかけるにはちと無理がある。
魔法で強化されているが、基本的肉体は元の世界の80歳。
走れるだけでも奇跡だと思うよ!
「ジジ君はまず体力からつけないとっスね!」
「大丈夫?」
「ありがとう、リリーさん。なんとか、大丈夫、です。それより、奴らは?はぁ~」
「予定通りっスよ!もうすぐ憲兵の網につかまるはずっス。」
全てはミラナさんとの作戦通りに進んでいる。
奴らは人質を返すとは言っていたが、ならず者に代理を頼む悪徳奴隷商。
後々ゆすられるのは目に見えている。
金を払ってそれでおしまいとはいかないだろう。
ミラナさんもそれを分かった上で、ジジ達に依頼してきたのだ。
「検問、どうしましょう?」
「飛び越えるっスよ!リリー、魔法を!」
「大空と大地を漂う者よ。全生命に等しく流れる大河よ。―――――」
「ジジ君壁に向かって走ってー、ジャンプっスよ!」
「マジですかー!?10メートルはありそうですよー!」
「―――――アルバリン!」
三人は闇夜に紛れて走りだす。
リリーは身体強化魔法を上乗せして三人にかける。
迫る壁にタイミングを合わせ、カピが叫んだ。
「せーの!ジャンプ!」
三人は思った以上に高く飛び、楽に壁を越えられた。
「強化魔法の重ねて掛けサイコーですね!身体が軽い!」
「これに慣れ過ぎると、普段身体動かないっスよ!」
「覚えたての時、私もぐーたらになってた。」
「リリーさん分かります!魔法切れたら動く気力が無くなりそうですもんね。」
「おしゃべりはそのへんにして、追うっスよ!」
荷馬車と付かず離れずの距離を保ちつつ尾行を続けていた。
しばらくすると、テントを張って野営をしている集団が見えてくる。
ラヴァンナの街の憲兵団だ。
ざっと30数名。
臨時の魔物夜間調査と銘打って待機させておいた、白猫奪還作戦の一つである。
「止まれーぃ!!」
「こんな闇夜に紛れた馬車移動とは怪しい奴め!荷を改めさせてもらうぞ!」
荷馬車の中には不自然な程の大量の金貨が。
当然、調べられて困るのは明白。
黒服達は言葉も発せず臨戦態勢をとっていた。
「弁明もなしで剣を抜くとは。やはり何か隠しておるな!」
「全て捕らえよ!抵抗するならば切り捨てても構わぬ!」
憲兵の指揮者と思われる人物が言い放つと戦闘が始まった。
「もう戦闘が始まってる!」
「ジジ君、リリー、作戦通り行くっスよ!」
三人は強化された身体で戦場に突っ込んで行く。
怖くないといえば嘘になるが、不思議とリリー達が一緒なせいか不安はない。
むしろ相手との実力差がわかっている分、安心していた。
それでもジジは斬撃を避けるだけで精一杯だった。
リリーは手持ちのナイフで斬撃を受け流し突進する。
「加勢します!」
「誰だ貴様らは!?だが、今は助かる!」
そう答えたのは黒服だった。
黒服の約倍の人数の憲兵を相手に、リリー達は応戦する。
リリー達の登場で形勢逆転。
ジジ達は憲兵ではなく、黒服に加勢したのだった。
「―――空に漂う小さきものよ、我が手に集いて力を示せ!ライメイフロアブル!」
リリーの手に集まった電気の塊が、空気中の微粒子を伝って憲兵団を一撃で感電、戦闘不能にさせる。
「…ごめんなさい。」
仮面をずらして小声で呟くリリー。
ほぼ何もしてないジジは、そんな健気な姿のリリーを呆然と見ていた。
「すぐズラかるっスよ!急げ!」
「お、おぅ。」
ぴくぴくっと微かに動いている憲兵達を横目に黒服達は馬車に乗り込む。
黒服も数人感電したが仲間が馬車に運び込んでいる。
リリーに近づく者が二人。
そのうちの一人が口を開いた。
「助かった、礼を言う。仮面の魔導師殿。」
「礼には及ばないっスよ。ちょうど北の街ツルギザキに向かう途中っスから。」
「使い魔が話せる程とは。それにその身なり。同族とお見受け致す。目的地は我らと同じゆえ、許されるのであれば貴殿一行、同乗願えないだろか?」
計画どぉーり!
これで黒服に混じれば楽にアジトに着く!
さすがのミラナさんでもアジトの詳細まではわからなかった。
あとは行動を共にし、頃合いを見計らいミラナさんに連絡。
奴隷商人共々一網打尽にする算段だ。
リリーはジジの方を向いた。
仮面で顔が隠れて表情がわからないが、たぶん人見知りなリリーさんの事だ。
助けを求めているのだろう。
ジジはリリーに頷いてみせた。
「…わかった。」
「よろしく頼む。」
三人は黒服達の中に潜入する事に成功。
そして、荷馬車は動き出した。
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