14. 恋愛経験ゼロの優しさ
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※ストーリーを進めたいので、情景描写など最低限にしております。時間に余裕がある時に追加を考えていますのでご了承ください。
《奇術師アイ邸宅》
ここは王城から三つ離れた街ゼクスフォード。
魔法と科学を融合する魔法科学の第一人者、奇術師アイが住む街である。
襲撃から三日後、早馬の使者が王都への召還状を携えて奇術師アイを訪ねてきた。
「おいおぃ、この間会ったばかりの坊っちゃん行方不明かい!?」
見た目10歳くらいの白髪の女の子。
ぼさぼさのセミロングヘアーで白衣を着ている。
「その様です!何者かが屋敷の一部を破壊し、連れ去ったと考えられます。」
「屋敷の者達は?」
「負傷者はおりません。ただ…」
「ただ?」
「襲撃時王都全域で人や動物が眠ってしまった事件もありまして…、森の奥では魔物までも眠っていたとの報告も。」
「それだけ広い範囲……なるほど、だからアタシに」
そう、奇術師に依頼という事は単なる魔法ではなかったのである。
魔法なら魔術師に依頼するからだ。
「ご察しの通り、極大魔法級の範囲、睡眠効果があったと思われます!軍やギルドも全く機能しておりませんでした。」
「人為的に眠らされた可能性が高いか。そうまでして、拐う価値が?…侵略されなかっただけでも儲けもんか。」
この事件、他国のデモンストレーションなのか?
あるいは宗教、それとも魔族がらみか?
拐うのは陽動、すでに王や軍周辺に潜り込んでいる可能性も。
何にせよ、大きな組織が暗躍しているのは間違いなさそうだ。
その気になれば、この国を制圧できる力。
上は事件の責任と力の掌握で躍起になってるな。
「わかった。すぐ向かうから先に行っててくれ!」
《ラヴァンナ街道》
ジジ達は前世の話しをしながら近くの街を目指し歩いていた。
リリーはカピを抱きしめ、ジジは猪を乗せた荷車を引きながら、森を抜け街道を進む。
荷車には魔法がかかっているようで、掃除機をかける程度の抵抗しか感じられない。
マジ魔法便利過ぎ!
それにしても老人と幼女、それにカピバラ。
のんびりすぎて日が暮れそうよ~。
「凄いっスよね!?鉄の船が空を飛ぶなんて!」
「この世界ならワイバーンか、ドラゴンくらい。」
「なんか、絵本のファンタジー世界っスね!」
「私からしたらこの世界がファンタジーですけどね~。」
世界が違えばファンタジー!
この世界は不便だけど嫌いじゃない。
前世の話しをしたところで、ずっと気になっていた質問をしてみることにした。
「そう、気になってたんですけど。」
「何っスか?」
「前世では産まれた時は赤ん坊で、年とって今の老人の姿になったんだけど、この世界では逆ですよね?」
「あー、それ人族特有っスよ。元々人間が産まれる時セック…」
「ん"ッんん!」
リリーがわざとらしく咳払いをした。
「え~と、人間は何故か昔から桜の木の下で生まれるんだけど、どうやら異世界で人生を全うした人が転生してくるらしいっスよ。」
「と、一部の協会が広めてる。」
「女神様が記憶を消す為に、生前老人の時にボケさせるらしいんス。」
「と、一部の協会が広めてる。」
「相変わらず協会嫌いっスね~。」
「あまり好きじゃないだけ。」
なるほど、前世の記憶を消す為に生きている間にボケさせて、死んだら転生か。
あの女神様なら、人生を全う出来ない者を問答無用で虫にしそうだしな~。
あり得そうだな~。
「産まれた時から若返るって事はわかったのですが、最期はどうなるのでしょうか?」
赤ん坊の後が気になる。
「そうっスね~、5歳まで老人、30歳まで中年、50歳まで青年、70歳まで少年、以降幼児ってところっスね」
「そして、死んだら光の粒になる。」
「若い身体の時期が多いのも人族特有っス。現にジジ君もだいぶ若返ってきてるっスよ。」
確かにそんな感覚はある。
話し方も変わってきたし、ボケボケしてた頭も、以前よりスッキリしているような気がする。
何より老人の期間が短いのが嬉しい。
「変わった世界ですね~。見た目と実年齢の違いになかなか慣れないですよ。」
「まだ生まれたばかり、話しが出来るだけでも凄い事。気にする事はない。」
「そうっスね、転生話しを信じない人達から見れば奇才だーて大騒ぎかも知れないっス。」
「出来ればチートで転生したかったです。」
「良くわからないけど、頑張って!」
「街が見えてきたっスよ!」
地平線に大きな壁に囲まれた街が見えてきた。
見えてはいるが遥か先、老人の歩みでは本当に日が暮れてしまう。
だいたい行商人の荷馬車とか都合良く通りかかるのがセオリーじゃないのかな?
街道なのに、人っ子一人会いやしない。
「街に入る前に知っておいて欲しい事があるっス。」
「何でしょう?」
カピが真剣な口調でジジに話しかける。
「ジジ君はリリーの事どう思うっスか?」
「え!?あ、猫ミミも可愛いくて良かと思うばってん、老人とは釣り合いが…、それにリリーさんの気持ちもあるけん…。」
嫌いじゃなくて、何といえばいいか、複雑な感情。
恋愛レベル0の童貞老人には酷な質問である。
ってリリーさんも顔赤いしーッ!?
「あー、そうじゃなくってっスね。リリーは人族の中でも獣人になるんス。ジジ君には良くても、周りから見れば獣人は迫害の対象になるんスよ。」
迫害!?こんなに可愛い子が?
「リリーは魔法使いとしての功績があるから、ある程度大丈夫だけど、ほとんどの獣人が奴隷や軍に入れられてるっス。」
「・・・・。」
さっきとうって変わってリリーは悲しそうな顔をし、少しうつ向いていた。
それを察したのか、カピは言葉を添える。
「ジジ君は優しいっスから…。」
「…大丈夫。続けて。」
「前に勇者とリリーが旅に出たって話し、軽く話したと思うんスけど、色々あってこの国を救ったんスよね。その時の褒美として獣人に対する差別をなくそうとリリーは動いたんスよ。それまで獣人は意味嫌われる存在で、問答無用で切り捨てられてたんス。」
「・・・・。」
「リリーと勇者が動いたおかげで、やっと生きる権利を手に入れたんスよ。」
「わかりました。それ以上はもう…。」
今にも泣きそうなリリーさんがいた。
だいたい言わんとする事はわかった。
やっと手に入れた生きる権利。
下手な正義感でぶち壊すな、といった所だろう。
リリーさんが街に行きたくない理由がわかった気がする。
「それにしても、遠いですね!リリーさんの甘いお菓子で、ちょっと休憩しませんか?」
そう言いながら、リリーの頭を優しく撫でるジジだった。
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