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この状況で何を祈る  作者: すももんベリー
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ねぇプルン、100年前の僕は何者なの?

そっくりと言われているゴブリンの死体には、目玉に1本の木の枝が刺さっており他に外傷は無い。素早くも重たい一撃で葬られたのだと分かる。手に血がついていようが100年前と同じだろうが僕がやったとは到底思えない技術である。

「ねぇプルン、100年前の僕は何者なの?何かを狩って生活してたの?誰かを守って生活してたの?教えてくれないかな」素人でも分かる高い技術に胸を膨らませて聞いてみた。

「んー、剣術を習った人ですかね?他にも体術や弓術など教わっていましたが特に職業とかではなかったですが、それがどうかしました?」

「いや、傷が似ているのと何か関係があるかなーって思っただけたよ。そんなに深く考えないでね」少し結果に期待をしてたが普通の答えだったのでなんとも言えない感情だった。それに考えてみれば100年前の僕と今の僕は別人のようなものなんだから聞く意味なんてなかったな。

「それでこれからどうするの?」浮かない気分を切り替えるように聞いた。

「そうですね、私はまだ調べてないところがあるのでこのまま続けたいと思ってますがマスターはどうします?」

「そうだね、またゴブリンが出たら嫌だから一緒に調べるよ」

「分かりました」

また僕達は周りの調査を続けた。


再開して10分程度経過した時、また草むらが揺れたのが分かった。目で見た訳ではなく音が聞こえたのだ。ゴブリンは草を掻き分けるような音に対し、雑草が倒され足ですり潰されている音がした。先程とは明確な違いがあり、緊張が走る。

プルンもその音に気づいており目配せで木の裏に隠れるよう指示を出した。


揺れはこちらではなくゴブリンの死体の方に近ずいている。時折、左右に体を動かし匂いを頼りに向かっているようにも思える。


突如「プギィィィィィィィィ」と甲高い音がし、何かを探知したのか猛スピードで死体の方へ揺れが向かう。

「ビックリしたぁ」とあまりの大きさについ声を出すとプルンが慌てたように僕を見上げ微かな声で「静かにしてください」と言い、原っぱを見続けるようにと合図を送ってきた。

指示に従い原っぱを見ているとそこに現れたのは想像を絶する者だった。目は小さいが鼻は大きく吊り上げられたような形をしている、そして隣に尖った角が生えている。まるで獣のような顔だが体つきは人間で毛深く、四足歩行で歩いているバケモノがいた。

「あ、あれはオーク。何故こんな所に.......。バレないようにこの場を立ち去りましょうマスター」とプルンは怯えながら小声で言ったが僕の体はもう既に言うことが聞か無くなっている。

「まただ.......プルン.......、僕の体が勝手に.......」

逃げたい気持ちで一杯なのに体は独りでに動く。 脳みそから体中に殺意が拡散され、腕は手探りで木の枝を見つけそれを掴み、下半身は中腰になり突進するのに最適な形になっている。

「大丈夫ですか!マスター!気をしっかり!」と足を逆方向に押しながら言った。が、パンパンに張ったゴムが切れるように僕の体はオークへ向かって走り出した。



「痛い、どんな状況だよ」腹部の激痛と共に意識が戻ると僕は太陽と目が合い、そのまま地へと垂直に落下した。幸い生い茂った草がクッションの代わりとなり最悪の事態は免れたが痛みはある。 腹部の痛みは原因は分からないが皮膚は青黒く変色しておりかなり腫れている。

プルンの姿は見えず、オークは少し離れたところから鳴き声が聞こえている。今分かっていることはオークに突っ走り体が宙に舞っている事だけで、早くプルンに状況を聞きたいと仰向けで待っていたら、丁度よくプルンが息を切らしながらこちらに来た。

「丁度良かった、状況を教えてくれ―」

「そんな暇はありません!立てますか?取り敢えずここを立ち去りましょう。」

「ちょっと落ち着いてよ、怪我をして立てないんだ」

「落ち着いてる暇なんてありません!立てないなら私の背中に乗ってください!」

そう急かされ、言われるがままにプルンに体を預けた。


背負ってもらっているのは有難いが、スピードが遅すぎる。僕の駆け足よりも遅いプルンが僕を担ぐ事によってさらに遅くなっている。見た目も速さもまるでカタツムリだ。だがその遅さとプルプルした体のお陰で痛みが殆どないのが何よりも嬉しい。

そんなことを考えながら進んでいると小川が見えた。水は凄く澄んでいて小魚の群れが見える。

「ここで休憩しましょう」とプルンは言い、僕もそれに賛成した。


僕は水の近くに降ろしてもらい、小川の水を飲み、少しでも痛みが引くように赤い布を濡らしお腹に当てた。

「まだ痛みますか?」

プルンがお腹を見ながら恐る恐る聞いてきた。

「痛みは少しあるけど全然大丈夫だよ」

心配させると何をするか分からなかったので痛いのは隠した。

「それより、話の続きなんだけど僕がオークに向かった所からの状況を教えてくれない?」と本題へ入る。

「ええと」とプルンは話すことを纏めているのかその場で黙り込んだ。十数秒経ち、ようやく纏まったのか話を始めた。

「まずマスターがオークにものすごい勢いで突っ込みました。次にオークの目の前で飛び上がりゴブリン同様、目ん玉に向かい木の枝を刺しに行ったのですが簡単に弾かれ木の枝が折れてしまいました。この時のマスターを見ていると100年前と戦闘技術が同じですが顔は狂気に満ちており、戦闘を楽しんでいるかの様で何者かに乗り移られたかと疑いそうになるほどでしたが、なんともなさそうですね。

話を戻しますとそれから、マスターは一旦距離を取り足元に向かって蹴りを何度も入れますがビクともしてませんでした。次が最後の攻撃で違う木の枝を手に取り向かいますが、お腹にパンチを貰い宙を舞いました」

説明が細かく一度に全て理解はできなかったが、全く歯が立たなかったことは分かった。

「ありがとう、それでオークは追ってこないのかな?」

「可能性は0とは言えません。元々オークは目が悪く鼻が発達した種族なので匂いに気づかれない限り追ってくることはありません」

「だから僕を急いで運んでくれたんだね、ありがとう」

「いえいえとんでもありません」


話を聞いている間に歩ける程には痛みが引き、木を伝いながらオークが向かってきてないか辺りを見渡した。

「急に立ち上がりどうかされましたマスター?」

「オークが来てないか心配なんだ、ちなみにもし来たらどうするの??」

「立ち向かいます!」即答だった。

「その言い方的に何か策があるようだけど、言ってみて」オークに古来からの弱点でもあるのか?それとも罠に嵌めるのか?想像は膨らむばかりだ。

「まず一つ目はマスターの戦闘能力です!オークとの戦いを見て確信しました、理由は分かりませんがマスターの戦闘能力は健在しております!」


「二つ目は.......実は…....私.......変身できるんです!」

「え?もう1回言って貰える?」

「変身出来るんです!!!」

聞き返すほどのおかしな答えに僕は呆れた。僕を元気づける為にボケたのだろうか?よく分からない。

「もしかしてマスター疑ってますか?」

「うん」

この返事にプルンは少しガッカリした様子だったが直ぐに気を取り直した。

「それなら証明してみせますので、私に棒状になれと命令してください」

「なら棒状になってよ」と半信半疑で命令したが、プルンはみるみる細く長く棒状に変化していった。

「嘘だろ.......」衝撃の光景についつい言葉が漏れた。

「複雑な形や私の体積以上にはなれませんが、硬さを変えることができ、さらに応用が可能です」と自信満々なプルンを見ているとなんだかオークを倒せるような気がし、それから様々な形を命令した。


一通り思いつく形を命令し一段落着いて、僕は他に何かを隠しているのではないかと思い謎だらけのプルンの正体を聞くことにした。

「ねぇ、プルンって一体何者なの?」

プルンは『そういえば』といった顔をし、話し始めた。

「村の消滅やゴブリンやオークの強襲で話すタイミングを逃していましたが、言いますと私は『災害用AIプルン』と言い、生き物ではありません。先程の変身も本来は被災地で使う能力です。簡単な説明で、すみません」

「いやいやありがとう」

僕の体験、聞いた事全てが空っぽの僕に知識を与たえてくれる。例えそれが痛みや苦痛であっても僕はそれに感謝をしている。



「そう言えば、さっき立ち向かうって言ってたけど逃げる選択肢はないの?」

「この地に用がなければとっとと去る方が得策でですが、私のわがままで村の消滅の件やモンスターの出現についての調査がしたいです。わがままが通ればですが、調べている途中に遭遇し戦闘をするよりかは作戦を立て確実に討伐した方がいいと思うのですがどうですか?」

「一人で逃げても何もわからないし。わかった、戦うよ」いずれかは戦う運命なのであればより勝機がある方を選んだ。


話が決まり、早速『オーク討伐』という目的で作戦会議が始まった。

オークや僕の戦闘能力に詳しいプルンの意見を主に僕達は話し合った。

「作戦を纏めますと、まずマスターがオークに聞こえるように叫び私たちの存在を知らせます。それからマスターの服の匂いで私がオークを誘導し、障害物へ突撃させます。最後、怯んだ所に私をオークの目玉に突き刺してください。少しでも無理だと思ったらまたここに戻って合流しましょう」

「了解」作戦はシンプルだが今できる作戦ではこれがベストだと思う。

「私はいつでも実行可能ですがマスターはなにか準備はありますか?」

「お腹も空いたし近くに木の実でもないか探さない?」

「そうですね、100年前だとこの近くにあった記憶があるので行きましょう」

事が決まり立ち上がろうとした時、遠くから聞き覚えのある足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。


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