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★魔王城急襲!

 ――空に向け垂直に上昇した黒いゴレコンを、後を追うゴレコンの巨大な拳銃から発射されたペイント弾が襲う。


 空間魔法が自動的に展開され、ペイント弾は潰れたトマトのように飛び散った。


 片方がガトリングを照準すれば、片方は急制動し照準を外す。


 もう片方が、巨大拳銃を照準すれば背中から大きなハルバートを引き抜きペイント弾を切り払う。


 旋回し、ハルバートを振り回し、切りつけ合う二機のゴレコン。


 一合、二合、三合。


 技量は互角。


 とても銃を使う余裕はない。


 接戦は続く――。


 世界的薬品企業であるホワイト製薬の敷地は、今や海上都市国家ハリハラの全面積の5割に迫る。


 こうしてゴレコン同士の模擬戦をするのにも、十分な広さの敷地を確保できた、というわけだ。


 お互い『機体の象徴』とも言うべき巨大なハルバートを取り出して、空中戦を行っている。


 隊長二人の激戦を、ゴレコン操者の部下たちは固唾を呑んで見守った。


「しかし……、ハーフエルフの集落では失態を演じたと聞きましたが、なかなかどうして、『ジャック隊長』もやりますねぇ」


「ブロンコ様。オレの部下がご心配をおかけしてすみません」


「構いませんよ。エマーソン。慣れない新型機の事故ですし、代わりに『バタフライ隊長』が水魔法のオーブを手に入れましたからね。それになにより……」


 後ろを振り返ると、目に入るのは禍々しい紫色混じりの黒い巨体。


 なんという偉容。


 あの悪人面を見よ。


 どこか有機的な恐竜を思わせる顔に、ロボットと呼ぶにふさわしい重厚な装甲を持つ人型。


 腹部には4門の大型荷電粒子砲が縦に並び、手には10の戦略核ミサイルを隠し持つ。


 創世神話に詠われる最強の黒神。


 生き物を寄せ付けぬチェレンコフのあおい燐光を放つ全高40mの黒き巨神。


 それがこの黒神ノイマンだ。


 それが、今や意思を奪われゴレコン化されてオレの目の前にたたずんでいる。


「ククッ。ロアよ。お前の転移魔法がなければ、魔王アルシェの目を盗んであの遺跡からノイマンをかすめ取ることはできませんでした。感謝していますよ?」


 かたわらにいる仮面をつけた小柄な魔法使い、クリムゾンロアに話しかけた。


「くっ。貴様にロアと呼ばれる筋合いはない! にいさん。目を覚まして。この機体は必ず世界に不幸をもたらす!」


 いじましいことだ……。


 無駄だと言うのにこの小娘は、この身体の前の持ち主であるヴァーミリオンガーブに語りかけているのだ。


「私は一体、何ということをしてしまったのか?」


「ふふふ。今更後悔しても、もう遅い。お前は大神霊とその部下を敵に回し、この私に手を貸したのですよ? クリムゾンロア」


「違う! 私はにいさんに従っただけだ」


「じゃあ、こういいましょう。……黙ってオレについて来い。ロアよ」


「ああ、わかりました。ガーブにいさん」


 クリムゾンロアの瞳から光が失せる。


 ヴァーミリオンガーブも良い教育せんのうをしたものだ。おかげで、一線級の亜神霊が今や完全に我が配下だ。


 はははは。


 白衣の男が近づいてくるのが見える。


 おっと……、キラ博士が報告に来たようですねぇ。


総帥そうすい。ハルバートプーリー用のプラズマガンの試作品プロトタイプができたぞ」


 ハルバートプーリー。あの黒いゴレコンのことだ。


 雷属性のプラズマガンを装備することで、魔王すらも単機でほふれるゴレコンができあがるのだ!


「それは喜ばしいですねぇ。今夜あたりどうです? キラ博士」


「……、遠慮しておく」


「ふむ。君は下戸でしたか?」


「どうもヴァンパイアになったあたりから、そうしたものを受け付けない体になったようだ」


「ほう。ところで、その()()()()()の調子はどうです?」


「意思に反して勝手に変えられたのは悔しいが、正直なところ悪くないな。研究費を気にせずに昼も夜もなく研究に没頭できる、というのは研究者冥利に尽きる。だが、体のことはともかく、一体全体どこからこんな莫大な金が湧いて出るんだ?」


「説明していなかったんですか? エマーソン」


「最初はティタノカリスを隠れ蓑に海賊稼業をやってましたからね。海賊稼業と説明するわけにもいかず、言うタイミングを逃しちまって。すみません総帥」


 まったく。海賊稼業と説明するのが、はばかられるなどと……。


 キラ博士を拉致した時点で、海賊も盗賊もないでしょうに。


「ここが製薬会社だということは知ってますか? キラ博士」


「そういえば無水酢酸と書かれた大型タンクを見たことがあるな。そうか、製薬会社だったか」


「まさにその無水酢酸がからんでるんですがね? ポーションにジアモルヒネを混ぜて売っているんですよ」


「ジアモルヒネを?」


「そう。ふりかけてよし、飲んでよし。普通のポーションと違って、痛みがたちどころに消え多幸感をもたらしてくれる。こんなのは魔法にだって不可能です」


「そうして気づいたときには、麻薬漬けか?」


 ふふふ。キラ博士。

 ……、露骨に嫌悪感に顔を歪めてますねぇ。


「今やうちは世界最大手のポーション制作会社ですよ? 世界中の大多数がそれを求めているわけです。うちがポーションの供給を止めれば、うちのポーションを巡って戦争が起きるでしょうねぇ。ククク」


「外道め」


「まぁ、なんとでも言ってください。もう世界は手の中だ。世界に浸透した麻薬。対ゴレコン戦をあらかじめ想定したハルバートプーリーの部隊。私が搭乗する最強の黒神ノイマン。ノーと言えるものなど、もうこの世にいないのです」


「そのお陰で私は自由に研究できるわけか。正直複雑だよ総帥」


「そんなことよりキラ博士。プラズマガンの試射の結果はどうでした?」


「試し撃ちはまだだ。しかし、プラズマガンなんかなくたって、私の作ったハルバートプーリーなら魔王なんぞに遅れは取らないぞ?」


 ふむ。


「では、確かめてみましょう」



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽



 20機の黒いゴレコン(ハルバートプーリー)を伴い、旧大陸を飛行すること数時間。


 速い乗り物というのはいいものですねぇ。


 豪勢な巨大な城が見えてきました。


 あれが傲慢の魔王、ルシファーの居城ですか。


 以前は近づくことすら恐ろしかったが、今ならなんとも思わない。


 斥候に飛んできたアークデーモンが、ノイマンに近づいただけで即座に全身壊死を起こして墜落する。


 ふふふ。


 ノイマンが常時周囲に放っている放射線すら武器になるわけだ。


 我が配下であるヴァンパイア部隊のように、そしてハルバートプーリーのシールドのように、ある程度放射線に耐性を持ち、自動修復能力を持つもの以外、ノイマンに近づくだけで死んでいく。


 コックピットから見える景色は壮絶だ。


 殺虫剤を撒かれたウンカのように、ボトボトとデーモンたちが墜落していく!


 ジャック隊が、20mmガトリングガンを10秒間バースト射撃して城に風穴を開ける!


 そうして巣を突かれ、飛び出てきたデーモンが放射線によってことごとく死んでいくのだ。


 LV50 デーモン。 

 LV55 アークデーモン。

 LV60 デーモンロード。


 本来であれば圧倒的な戦力。


 オーガよりもヴァンパイアよりも硬い、絶対的防御力を誇るデーモンの身体が一瞬で水疱だらけになり血を吹いて死んでいく。


 城を囲む、ハルバートプーリー総勢20機が、巨大拳銃を発射した!


 みるみるうちに城が削れ壊れていく。


 さすがに、ガトリングガンとは威力が違う。


 もうデーモンは、打ち止めか?


 城が半壊し中からついに、傲慢の魔王が顔を出す。


 激怒した表情に、圧倒的なオーラ。


 LV87 最強の魔王の一人。

 傲慢の魔王ルシファーだ。


 デーモンのおさにふさわしい迫力に10m近い巨体。

 翼を広げ威嚇してきたが……。


 全高17mのハルバートプーリーと、全高40mのオレのノイマンの前では子供同然だ!


 しかし、さすがにルシファー。


 放射線など、ものともしないか?


 平然と極大魔法の詠唱に入りましたねぇ……。


 発動を妨害したほうが良さそうだ!


「撃て!」


 ガトリングや巨大拳銃から放たれた弾が、ルシファーに集中する。


 詠唱を阻止され、ルシファーがうっとおしそうに弾を振り払う。


 なるほど……。


 ガトリングによるダメージはほぼなく、巨大拳銃が僅かにダメージを与えるのみか。


 キラ博士め、さすがに魔王の結界をナメ過ぎだ。


 しかたない……。


 一発だけノイマンからミサイルを放ってやろう。


 ノイマンに備えられた戦略核だ。


 魔王の結界に威力の9割がカットされるとはいえ、それでも有り余るダメージを与えられるだろう。


 このミサイルは地表すれすれで爆発を起こす。


 キラ博士によると、直接着弾させるよりも大きな威力を生むらしいが……。


 ドシュッと重い音を発し、右人差し指から核ミサイルが発射された。


 瞬時にノイマンのミサイルが城にいる魔王のそばに到達する。


 核ミサイルが地表すれすれで爆発した。


 城が消し飛び、きのこ雲があがる。


 爆風が周囲の木々をなぎ倒し、空中で待機するハルバートプーリーを後方へと押し流す。


 さすがにノイマンには何の影響もないが……。


 魔王ルシファーがひざまづいた。


 大ダメージが入っているな。


 すぐには動けなさそうだ。


 さあ、ちょうどいい。


 実験のときだ!


「プラズマガン用意!」


 オレの声に合わせて、20機のハルバートプーリーが背中から一斉にプラズマガンを引き抜き、構えた。


 瞬時に態勢を立て直すあたり、『ジャック隊』も『バタフライ隊』も練度が高い。


「斉射!」


 魔王の弱点たる、雷属性の砲撃!


 断固耐えん! と踏ん張るルシファーだったが、数秒も持たず消し炭になった。


 素晴らしい威力じゃないか!


 ふふふふふ。


 はははははは。


 もはや恐れるものはなにもない。


 後は、神霊に進化プロモートするのみだ!


 邪神カレンが、ヴァーミリオンガーブの死を利用して神霊になったようになぁッ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うわ、キラ博士なんでそんなところに; 現存する軍用ゴーレムコンソールの大半は いままでセントラの生産能力に依存していたけど これでセントラは軍事的強みを失ってしまったか。 メテオルたち…
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