表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/87

身体強化魔法訓練

 今回は異端審問官になるための馴化(じゅんか)訓練を紹介しよう。ビリーによる身体強化魔法訓練の3回めだ。


 回復の魔法陣が四方八方に描かれた訓練場に、ビリーと教官たち、そして俺たち同期生全員が集まっていた。


 いつものようにビリーが喋った声を、隣に控える歌姫ブリジットさんが歌唱魔法で拡声器のように増幅している。「でかい声のほうが良く物を覚える」、というビリー独自の教育観があるためらしい。


 身体強化魔法には、常時発動のパッシブと、随時発動のアクティブの2種類があって、『パッシブは不意打ち対策に必須、アクティブは逆に不意打ちをかけるのに向いている』という話をいままでの訓練で聞いた。


「……、人間は非力だ。転生時にファーメリア様から特典をもらった、おまえらチート野郎も、はじめにそのことを認識しなければならない。

 どんなチートを持っていようが、今の状態で石で殴られれば死ぬ。おまえらが、なにをおいても覚えなければならないのは身体強化魔法だ。なぜなら、この世は石なんか目じゃないレベルの恐ろしい生物で満ちあふれているんだからな。

 いくら腕に覚えがあるといったって、身体強化魔法なしじゃ、人間の3倍の膂力を持つオークのような魔物にはかなわない。

 いくら目鼻が効くといったって、身体強化魔法なしじゃ、人間の数万倍の感覚器を持つ狼などの先手は取れない。

 こんな化物共から身を護るには、どうしたって身体強化魔法が必要だ。身体強化魔法を極めれば常時、防御、素早さ、攻撃力、回復力、感覚に補正がかかる。そうして、ようやく、どうにかこうにか、戦う、という選択肢が生まれてくるんだ。

 戦うと言ったって、勝ち負けはもちろん二の次だ。立ち向かえる。対峙する資格を持つ。餌から敵に格上げになる。実際はそういったところだ。

 おれたちが主に戦う転生者もそうだ。チートにあぐらをかき、地道に身体を強化していないものを捕縛あるいは殺傷するのはたやすい。

 そうでない場合は、どれだけ身体強化の練度が高いかが勝負を分ける。

 まず、身体強化魔法を極め、戦える身体を作れ。それから自身のチートを強化しろ。異端審問官になり、困難と対峙したとき、心折れずに勇気を振り絞るためには、最低限それが必要だ」


 ビリーの声に熱が入る。


「じゃあ、おまえら先達は、新人と二人一組になって身体強化魔法を実戦形式で教えてやれ!」


 二人一組が次々とできていく。マクベス教官と時空剣士ペリー。武闘家イシュカさんと鍛冶師フィオラ。鑑定士マリンさんと魔獣使いアシュリー。狼男ヘンリーさんと暗殺者ロバート。召喚歌姫ブリジットさんとふうちゃん。


 しまった。完全に出遅れたぞ。


 俺の相手は……と、まじかよ。ビリーかよ。


 ビリーが手のひらを上に向けて、クイックイッと挑発してくる。


「よかったなリンゾー。おれは教えの旨さにかけては定評があるんだ」


 ビリーの姿がフッと消える――が、足音がしている。単に高速で動いているのか?


「リンゾー! 敵は見えないところから攻めてくる! 感覚を高めて、おれの攻撃に対応してみせろ!」


 戦闘は唐突に始まった。言われなくったって、わかってるさ。魔物に食われて死ぬなんてまっぴらだ。誰よりも早く身体強化魔法を極めてやる。俺は身体強化魔法を発動し、集中を開始する。周りの音が消え、気配が肌を伝わってくる感覚がある。


 右斜め後ろに僅かな風の揺らぎを感じた。右後ろ脇腹のあたりに着弾する圧を感じる。

 俺は死角からくるビリーの軌道に裏拳を合わせた。


「ごふっ」


 俺の拳は、きれいにビリーの顎を捉えていた。


「やるじゃねぇか。リンゾー。まったく、教えがいのないやつだぜ。こんなに早く、身体強化魔法LV5まで到達するなんてな。速さも威力も申し分ねぇ」


「ビリーの教え方がいいからさ」


 顎を押さえ涙目になりながらも笑うビリーに笑い返しながら、身体強化魔法を限界までかけて、ビリーと組手を続けるのだった。


 勝敗? 5回クリーンヒットをもらったけど、終始優勢だったさ!


「りんぞーさま。足元がふらふらしてます。お部屋まで送るので掴まってください」


 ふうちゃんの肩に掴まりながら、ガクガクに震える足で一歩一歩進む。


(ええ、さっきのは強がりです。ほんとはボロ負けでした。強すぎるんだよ。うちのボス)


 ふうちゃんに、まーた、かっこ悪いところ見せちゃったよ。はぁ。

 強くならないとな。誰かを守れるように強く。




楠木麟三LV8

異世界探訪者LV1

事象魔法LV4

格闘LV3


所有スキル

『崩壊』・『逆行』・『停止』(事象魔法)(リキャストタイム24時間)

異世界転移(リキャストタイム21日)

身体強化魔法(パッシブLV4、アクティブLV5)


支配領域3RU


ビリー・バーンスタインLV28

念動力LV8

格闘LV5

錬金術LV10

生活魔法LV5


所有スキル

トレーニング器械錬成、アクセサリー錬成、武器錬成(錬金術)

テレキネシスハンマー、飛行、拘束(念動力)

クリーン、アンチポイズン、水生成、火起こし(生活魔法)

身体強化魔法(パッシブLV5、アクティブLV6)


支配領域300RU

・用語解説

身体強化魔法――基礎魔法の一つ。学べば人間なら誰でも身につける

        ことができる。LV5でようやくオークと殴り合える

        レベル。二級のベテランハンターがだいたいこれぐらい。


        オーガと格闘したいなら、LV7が必要。

        ハンターで言うなら特級クラス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ