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渡りに船

 雲ひとつない夕暮れ時の空。


 否。


 黒い塊が宙に浮いている。


 散り散りに散った黒い炭の粉が、一点に集まってくる。


 黒炭が棒状に伸びていく……。


 黒炭化した棒状の塊が、徐々に人の姿になってくる。すでにミイラと呼べるぐらいの姿になっている。


 さらに……、ミイラのような焼けただれた皮膚を持ったみすぼらしい人型が、水蒸気を伴い急速に元の姿へ復元されていく。


 なんて馬鹿げた再生速度だよ。俺の『逆行』も外から見たらこう見えるのか?


 ……天使の姿が復元された。服も翼も元通りだ。


 あれを食らって平然と再生するなんてな。


 天使が不気味な笑みを浮かべている。右手を上に掲げると、再び巨大な剣の群れが上空に顕現けんげんした。


「巨人の人。今のは君がやったの?」


 頭に響くような、あの声だ。


 どう答えるか? ファーメル教国側にあの剣を投げられるのはまずい。ふうちゃんを危険に晒すわけにはいかない。なら、考えることはない。回答は一つだな。


「そうだ。俺がやった」

「うんうん。良い答え。このまま戦闘を続けるか、私達のリーダーにあって話をつけるか好きな方を選びなさい」


 強さの割に随分軽いな、この天使。しかし……。


「どういう意味だ?」


 圧倒的な優位にいながら交渉を持ちかけるか? 普通。


「文字通りだけど? 君は私達にとって重要な情報を握っている可能性がある。そして、私は強者と戦うのはやぶさかじゃない。君の心をへし折って泣き叫ぶ君を無理やり引きずって帰るのも面白そうだ」


 正直、こんな化け物と戦い続けたくない。というか、勝てない。無理だ。


「なぁ、ベル。どう思う?」

「おにいちゃんの好きでいいよ。私に言わせれば底が見えた、と思うよ? 回復できるとはいえ、あんなにダメージを受けるなら重力ジェットは受けちゃいけない。あいつの最高速度は光速よりずっと遅いんだ。向こうが私を認識してない状態からなら、不意をついて畳み掛ければ一方的に殺せる」


「こっちにもやばいのがいたーッ! ってか、お前、転移にタイムラグがある魔王アルシェに苦戦してたじゃんよ」

「それは、精神攻撃でおにいちゃんが人質に取られてたからだよ。あいつはたしかに強かった。なにしろレベル差を覆す知略と冒険しない慎重さと不利をものともしない余裕をもっていたからね。でも、単純な力比べをするのなら私のほうがずっと強いよ?」


 どうやら、強がりじゃなさそうだな。俺はどっちかというと未だに底が見えないお前が一番怖いんだが!?


 でも、どうするか? ベルが勝てるって言うなら、戦ったほうがいいのか?


「お前たちのリーダーってどこにいるんだ?」


「宇宙戦艦アトロポスの中だ」


 宇宙戦艦!? 何、その素敵な響き! ロマンが刺激されちゃうぜ! 待てよ、戦艦? サリミドの鳥船か!?


「サリミドの上空にある飛行戦艦か?」

「君たちがどう呼んでるかなんて知らないし興味もない。だけど、今アトロポスはサリミドと帝国の国境線上にいる」


 もともと、『どうやって戦艦に近づくか』が悩みどころだったんだ。これって文字通り、渡りに船、だよな。


「君たちのリーダーと話がしたい。剣をおろしてくれ」

「私はミスティ。『トリニティ』戦闘艦アトロポスの誇る七星の筆頭だ」


「俺はリンゾー。あと一人乗員がいる」

「わかった。私についてこい。だけど忘れるな。私は天軍の剣を何発でも撃てる。大陸すべてが人質だ」


 空から剣の雲が一瞬で消える。

 やっぱ戦わなくてよかったわ。ベルが勝てても、大勢の人が道連れになるぞ。


「バーナード! 街の人達をエレジアさんに届けてくれ。お前の分も仕事をしてくるわ!」

「あんな戦闘を見せられた後じゃ、ついていくなんて言えないな。気をつけろよ? リンゾー。ベルさ……ん、リンゾーをお願いします」


「お願いされなくても、おにいちゃんは守るよ。羽虫おまえはむしろ弱っちい自分の身を心配するべきだね」


▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


「艦長。ミスティから入電です」

「回せ」


「メテオル様。大変です。さっきのものすごい攻撃を受けて、私の命のストックが一個減りました」


「把握している。あのチート、まだバグフィックスされてないんだな?」

「あいかわらずログオフもできませんし……。()()()()()とはいえ、少しバグが多すぎですよね。艦長?」

「そうだな。後で運営のスレッドにあることないこと書いてやろう」


「メテオル様ぁ。私を無視してグレースとおしゃべりしないでくださいよぉ」

「話がしたいなら、とっとと帰還してこい。ミスティ。こちらで把握している情報を報告されても時間の無駄だ」


「じゃあ、こんな情報はどうです? あの攻撃を受けた際、廃棄宇宙の匂いを感じました」

「匂いってお前、廃棄宇宙に匂いなんかないだろう?」


「飛んできた粒子の成分の組成がそれっぽいといいますか。そうだ、グレース! 位置情報のログを確認して!」


「許可する。見てやれ」


「いきなりなんです? ミスティったら、まったく。位置情報なんて表示されるはずが……。艦長、大変です。ログの中に3秒間だけ位置座標が表示されています」

「どういうことだ?」


「この世界と廃棄宇宙が一瞬だけつながった?」


「今、それをやった犯人を現行犯で鹵獲中です!」

「あほか! ミスティ! 重要な客人だ。丁重にお連れしろ」


「第三戦闘配置。ヴァルキリーロードは格納庫に集合。整列して客人を迎え入れろ。念の為タイプ・ガンマの起動を許可する。異常があったら即座にデッキを開放し敵として排出しろ。七星は、ブリーフィングルームへ」

「了解!」


「グレース。ミスティが連れてくる人物。廃棄宇宙への帰還方法を知っていると思うか?」

「計器が廃棄宇宙との関連を示した以上、可能性は低くないと思われます」


「そうか。会談の用意を。摘みたての玉露を用意しろ。()()()()()だ」

「了解」


読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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