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vs九翼の天使

 黒神チューリングが、『ファントム』の足元で無残な姿をさらしている。

 街は跡形もなく消し飛んだ。


 オーガ並みの耐久力を持つ数万体のヴァンパイアが、かつての人類の守り手が、こんなにあっさり逝くものなのか?


 遠方視ヴィジョンをズームにして、九翼の天使を見る。

 均整の取れすぎた顔立ちが、かえって不自然さを抱かせる。どこか無機質な血の通っていないような目だ。


 天使がなんでもないことのように、中空から巨大な剣を取り出した。


 いや、剣なんてサイズじゃないな。形状けいじょうは間違いなく剣なんだ。だけどアレは大きすぎる。ゴレコンを容易にまっぷたつにできるだろう巨大な剣だ。天使とのスケール感の差がひどい。


 刃渡りおよそ30m。本当に馬鹿げたサイズの剣だ。


 天使が念動力だろう、祈るように手を合わせると、剣が天使の頭の上で目にも留まらぬ速さで一周する。上空に竜巻が生じた。


 そのまま天使が、こっちに剣を飛ばしてくる。


 ガァン! とベルの障壁バリアが剣を弾いたけれど、障壁を続いてくる爆風と衝撃波が容赦なく襲い、障壁が壊れる。


 どうやらあの剣とベルの障壁バリアは、ほぼ同等の性能らしい。


 ズゥウウウウンと振動を伴いながら、剣が地面に倒れた。剣には傷一つない。


 バリアが解かれたので、すかさず、127mmロングレンジライフルで、天使を狙撃する。


 ……、どうやら弾道が完全に見えているらしいな。天使は素手でハエでも払うように、砲弾をはじいた。

 悔しいけど、俺のことなんか眼中にないようだ。


 鑑定!


▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 システムエラー。開示権限がありません。


▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 なんだそりゃ!?


 鑑定されたことを感じ取ったのか、九翼の天使とモニター越しに目があった。


 天使は(わら)う。

 まるで不気味の谷のど真ん中にいるアンドロイドのような、薄気味の悪い笑みだった。


 ちくしょう、すぐに笑えなくしてやるよ。


 とっておきだ! 特大のサーマルガンを喰らえ!

 瞬間的に、爆発的な魔力を込めて魔力弾を生成し、プラズマで一気に相転移させる。

『ファントム』の増幅器が俺の魔力を桁違いに大きくしてくれる。


 天使が真剣な表情になった。


 侮ったな。転移でも避けられないことは、魔王(アルシェ)戦で実証済みなんだよ!


「避けられるなら、避けてみろ! サーマルガン、発射!」


 ブォン!


 青い極太のビームが真っ直ぐに伸び、九翼の天使に直撃した。

 天使は翼を羽ばたかせ、燃え移った炎を消している。


 翼の一部が焦げていた。


 見た目に僅かながらダメージは通っている。しかし……、それも恐るべき速さで回復する。

 5秒もしないうちに、焦げ跡は元通りに戻っちまった。


「なぁ、ベル。あいつ強すぎない?」

「攻撃を受けてみた感じ、完っ全に亜神霊わたしたちクラスの力があるけど、私、こんな奴知らないよ。どの神様の眷属なのか見当もつかない。まさか創造神様の白神?」


 天使が俺たちに語りかけてきた。直接脳内に響くような声だ。テレパシーか?


「巨人の人! 思ったよりも強いね。ドローンレベルの巨人風情にダメージを通されるなんて屈辱だよ。このままじゃ『トリニティ』の名折れだ。今すぐ誇りを取り戻す。全ては『トリニティ』のために! 出力最大! 天軍の剣召喚!」


 天使の掲げた右手のひらの上で、空を埋め尽くすように黒い雲が広がっていく。




▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽




剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 すべてが刃渡り30m。

 振れば竜巻が起き、一本で街を消し飛ばすあの剣だ。


「あんな数、防ぐの無理だよー」


 聞く前にベルが情けない声をあげる。

 ……どうする? この局面を打開する方法は?


「おにいちゃん。逃げよう。『ファントム』だけなら逃げ切れるよ!」


 逃げるだって? 街の人やバーナードをおいてか!? 冗談じゃねぇ!


「その選択はなしだ!」


 しかし打開策は、……待てよ? 雲? 剣?


 天叢雲剣アメノムラクモか!?


 そうか。これが邪神カレン様の依頼なんだ。

 こんなでたらめな数の剣を落とされたら、大陸が消し飛んじまう。それこそカレン様も困るわけだ!


 カレン様のところでふうちゃんが手に入れた遠方視ヴィジョンの魔法は、この時のためだったんだ!


 頭の中でいろんな事がつながった! さっそく、テレパスオーブをふうちゃんにつなぐぞ。


「ふうちゃん。今、大丈夫?」

「りんぞーさま! こっちはだいたい片付きましたよ! 大聖堂の近くで黒いゴーレムが暴れて、ボスが負傷しましたが、さきほど突然ゴーレムが機能停止して敵が逃げていきました」


 黒いゴーレム。ビリーを負傷させるほど強いとなると、チューリングだろうな、やっぱり。


「危なかったな。ビリーの容態は?」

「骨折4箇所の大怪我でしたが、私がすぐに治しました。 聖都内の戦闘はもう収まっています。だから、何でも言ってください!」


 俺の出番、なくなっちゃったか。ちょっと悔しいけど、さすがいたもんだ。


「ふうちゃん、ちょっと上空にあがって遠方視ヴィジョンでサリミドの空を見てみてくれる?」

「ちょっと待って下さいね? ん~? えっ……。あれは、剣ですか?」


「馬鹿げた話だけど、剣だよ。全部が刃渡り30mの剣」

「ふわー!」


 驚き方、かわいいな。


「ふうちゃん。あれがカレン様の言うアメノムラクモだ。重力ジェットで消し飛ばして欲しい」


「わかりました。地表に影響が出ない角度を算出します……。今すぐ撃ったほうがいいですか?」

「そうだね。時間が経過するとどんどん剣が増えていくみたいだ。あの糞天使、加減ってものを知らないらしい」


「了解です! 廃棄宇宙に次元を連結します。10カウント後に撃ちますので目を閉じてください」

「わかった!」


 10……9……8……。


「バーナード! 聞こえたな? 目を閉じろ!」

「おう、街の人達には俺から伝える」

「頼む!」


 空が一気に暗転する。


 街の人達が驚いて目を開けてしまったようで、再度バーナードが指示を飛ばす。

 九翼の天使が、空を見あげている。


 7……6……5……4……。


 ふうちゃんの重力ジェットの射線方向にいるなんて、あの巨大な剣を10万本突きつけられるより怖いぜ。


 正直言って、膝が笑う。


 ああ、時間が無情に過ぎていく。


 3……2……1……0。


 暗転した空を、巨大な閃光が切り裂いた!


読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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