オーブの謎
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ベルを連れて軽食屋に戻ると、バーナードが引きつった顔をした。
「戻ったぜ」
「お、おう」
バーナードが恐る恐るベルを見ているが、ベルの方は『どこ吹く風』だ。
マジでベルのことが苦手なんだなぁ。いかんいかん。顔がにやけちゃう。
「妹さんと合流したのか」
「そうなるのかな?」
食事シーンを見せつけられて食べられないのは、くいしんぼう龍神のベルには酷だろうから、お菓子魔力弾を渡しておこう。
「ベル、これをやるよ。おとなしくしててな?」
ベルに、ポキっと折れるチョコレートのかかったプレッツェル的な魔力弾を渡す。
いわゆる、ポッ○ーのような魔力弾だ。
「私、これ好き~!」
一瞬でテンションがあがったな。
そうだろうとも。
食べるとちょっと昂ぶるカフェイン的な効果まで再現してるからな。
「おまえ、すごいな」
バーナードが心底感心したような顔だ。ベルはおっかないけど、悪い子じゃないんだぜ?
「なあ、バーナード。模擬戦のときにヴィジョンのオーブを使ってて思ったんだけど、どうも映画で見たような機能じゃない気がするんだよね」
「どんな映画だ?」
なんだっけな? ベルと一緒に見たやつ。えーと。
「軍師山に堕つ?」
「『軍師山頂に散る』か? 山頂から敵陣形の薄いところを見つけて味方を逃した軍師が別働隊に捕まって殺されちゃうやつ」
「そうそれ!」
「確かに、あの映画のヴィションはすごい量の情報が表示されてたな」
「『ファントム』のヴィジョンは、あれと比べると、機能制限版魔法のような印象を受けるんだが、バーナードの方もそうなの?」
「リンゾー。お前、もしかしてスキルや魔法は誰が使っても同じ効果になると思ってないか?」
「違うのか? 威力の大小はさておき、効果は同じなんじゃないの?」
「違うんだよ。効果さえもな。世界をゲームのように捉えてるやつに多いんだ。おまえのその考え方は」
「へぇー。いやいや、待てよ。俺は世界をゲームだなんて思ってないぞ」
「そうか。オーブに魔力を通せば、オーブに組み込まれた魔術回路に刻まれた魔法が発動する。ここまではいいよな?」
「流石にそれは知ってるよ」
「オーブによって発動される魔法は、魔力を流した者の『魔法の認識』の影響を受ける」
「そこがよくわからない」
「つまりは、その魔法をもともと使えるやつが発動する場合と、その魔法を使えないやつが発動する場合では、だいぶ効果が異なるのさ」
「なるほど。わからん。なんでそんなことになるのさ」
「悪いが、俺も理由を説明できるほど詳しくなくてな」
まじかよバーナード。もっと頑張れよ。元研究者だろ。
「認識が甘い部分が、制御の甘さに直結するからだよ?」
上機嫌モードのベルが教えてくれた。
ベルによると、『オーブの使用者が知らない機能』は発動されないんだそうだ。
この縛りはオーブの級数が高ければ、ある程度緩和できるらしいんだが、たとえば重力場のオーブにしても、よく知らない俺が使う場合と、魔術回路を自作できるぐらいに知っているふうちゃんが使う場合では、全然性能が違うという。
「双葉が『ファントム』に乗れば、重力場だけで『フル装備のニードルピニオン』をペチャンコにできるよ?」
ちろっとベルがバーナードを見た。
「んひぃっ!」
「今度ふうちゃんにも乗ってもらうか」
そう、『ファントム』は要人護衛用のため、コックピット内に要人用の椅子があるのだ。
つまり、もうひとり乗れる。
「しかし、『認識』ひとつで魔法の効果が変わるなんて怖いねぇ。世の中勉強した者勝ちか」
「おにいちゃんの『停止』が私に効かないのも、『認識』が甘いせいだよ?」
「まじかよ?」
なんでも、俺の事象魔法――『停止』は、ベルにも本来有効なんだけど、『停止した世界』が真っ暗にならないとベルを止めることはできないという。「おにいちゃんは『光に対する認識が甘い』」とベルは言っていた。光が通り抜けられるなら、光より速いベルのことは『止めようがない』。
そういえば、だ。
『魔力弾』の効果にしたって、人によってだいぶ違うよな。ふうちゃんは味付けに関して、理解不能だったし。
ベル風に言うならふうちゃんは魔力弾の『味の認識が甘い』ってことになるのだろうか。
やべーよね。全然意識してなかったけど、同じ魔法を使ってると思ってても、実はそれぞれの魔法が少しづつ異なってるってことじゃん。
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
軽食屋を出て演習場に戻ると、『ニードルピニオン』が30機ほど整列していた。
集まっているゴレコンは、エレジアさんの部下たちで、エレジアさんによると、これから多対一の戦闘訓練をやるそうだ。
サリミドの飛行戦艦――、鳥船は、無数のドローンを積んでいるらしいから、その対策だ。
まず、バーナードが、演習用ペイント弾を装備した『ニードルピニオン』と戦闘をする。
バーナード機を中心に、7機のゴレコンが円陣状に取り囲んでいく。
全機緑色の『ニードルピニオン』だが、バーナード機はミサイルポッドと大型スラスターが付いているおかげですぐにわかるな。
戦闘開始!
バーナードの機体が地を蹴り、スラスターをふかして正面の『ニードルピニオン』に突っ込んだ。
そうそう! 先手を打って攻めないと活路は開けないよな!
左のジャブを僅かな時間引き戻さずに、盾でカメラの死角を作って、死角に右ストレートを叩き込み一機倒す。
なるほど、バーナードは、ボクシング経験者か。横から見てるとよく分かる。軽快なステップだ。
インパクトの瞬間だけ手の重力場を強くすることで、手の防御を上げつつ威力を増している。
敵は、頭のモニターカメラが吹っ飛んでいるから、間違いなく戦闘不能だろうな。
続いて、後ろからくる『ニードルピニオン』のナイフを振り向きざまにスウェーで躱し、更に突っ込んでくる敵に半歩バックステップをしながら左フックを合わせる。
2機撃破! 突っ込んできたもう一機の足を払い、軽く捌いて3機撃破!
なんだよ。バーナード。
やっぱり結構強いじゃん。
つーか、ペイント弾使えって。俺の戦い方に触発でもされたのか?
残りの敵と距離ができた今、戦場は誘導弾を持つバーナードの独壇場となった。
ペイント弾も誘導できるんだね。
敵が、5機追加される。
取り囲む『ニードルピニオン』をものともせずに、バーナードが次々と勝利判定を重ねていく。
ボクシングだけでなく、蹴り技やナイフも使いだしたな。
対して敵は、ナイフやガトリングペイント弾で応戦している。
バーナードが11機倒したところで、倒れたニードルピニオンの手から発射されたグレネード型ペイント弾がバーナード機の脚部に着弾。
戦闘終了となった。
軍人の乗る同型機相手に、キルレシオ11:1は誇っていいんじゃなかろうか?
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
次は俺の番だ!
練習なので『反射』に頼らず、本来の力でやってやる。
俺は操縦桿を握り、身体強化魔法LV7アクティブを発動した。
ヴィジョンの情報が一気に上書きされる。
射程、情報量、モニター感度が膨れ上がった。
周りの動きがゆっくりに見えるぜ。
戦闘開始!
両手に『振動』をまとわせ半身に構える。
イシュカさん直伝、振動拳だ。
振動は、体を通してフレームに伝わるから、『ファントム』でも普通に使えるな。
7機の『ニードルピニオン』から、グレネード型ペイント弾が7発。同時に発射された。
刀で弾丸を受け流すように、振動を纏った手刀で呼び込むように、ペイント弾をいなし、破裂させずに後ろへ送る。
7発全弾、受け流してやった。
すげぇ。『ニードルピニオン』から驚愕の感情が伝わってくるぞ。
「つまんない! おにいちゃんとあの相手じゃ何人いても勝負にならないよ」
「そういうなって」
なりふり構わず、18機の『ニードルピニオン』がガトリングペイント弾を一斉射してきた。
流石に数が多すぎるぜ。
(全部は、受け流せないな)
ジャンプし、一番近い『ニードルピニオン』の後ろに回り込んで、手首を背中に捻り上げて盾にする。
ペイント弾じゃないと、この避け方は危険だな。実弾なら盾にした『ニードルピニオン』を貫通してくるだろうからな。
まあそうは言っても、『停止』で回避してもいいし、最悪の場合は『反射』が自動発動するから当たるわけがないんだけれど。
しかし、何度もガトリングペイント弾を一斉射されるのは、さすがにウザいので、敵が一列に並ぶように誘導しつつ、近い順に当身を入れて、次々と投げていく。
ナイフを回避し、突っ込んで重力を載せた肘を入れて伸び切った手を取り、投げる。
投げる。投げる。投げるっ。
そして、倒れた敵にドピュドピュとペイント弾をぶっかける。
残心も忘れない。
あっけなくも、戦闘終了。
腕がもげたり、フレームが凹んだり、『戦闘不能状態』の『ニードルピニオン』が量産されてしまい、エレジアさんが頭を抱えている。
あたりの空気が重いッ!
集まった技師さんたちの嘆き声が聞こえてくるようだ。
技師さん達マジでごめん。『ファントム』の修理は不要ってことで許してくれ。
その後、修理を待つ間、軍人さんたちのおごりで俺とバーナードの歓送迎会が行われた。
「帝都を守る戦友たちに、かんぱーい!」
「でたらめな強さの民間の戦友に、かんぱーい!」
さあ、明日はサリミドで飛行戦艦と交渉だ!
読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。
とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、
レビュー等いただけるとうれしいです。
活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、
興味のある方はどうぞ。




