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情報は戦場を支配する

 バーナード様との模擬戦が終わり、『ファントム』を戦闘開始位置に着陸させる。


 コンソール内にある人型のダメージ表示はオールグリーンだ。

 数字を見ても、ダメージはゼロ。


 まぁ、この程度じゃダメージもないか。


「ベル。エレジアさんに模擬戦の評価を聞いてくるよ。そこの魔力弾食べていいからな」

「んー? ありがと。いってらっしゃーい」


『ファントム』から降りるとエレジアさんがやってきた。


「俺の操縦は、どうだった?」

「呆れるほどに圧倒的だったよ、リンゾー。『ファントム』の損傷具合はどんなものだ?」


「ノーダメージだよ。ゴレコンの関節の可動域って、ほとんど人間と変わらないんだな」


「私はゴレコン部隊の隊長をしているが、ゴレコンで体術ができるなんて初めて知ったよ」


「まあ、普通は重火器かナイフで倒すだろうからな」


「だが、関節の可動域がほとんど変わらないとしても人間とゴーレムは違うぞ。人間と同じように関節をきめれば、バランスを崩せるとは思うなよ。その考え方は危険だ」

「ああ、そうか。手をきめたと思ってて、ロケットパンチが飛んできたらやばいもんな」


「ろ、……ロケットパンチ? なんだそれは?」

「キラ博士に聞けば、多分教えてくれるよ」


 戦闘開始位置で、うずくまるバーナード様の『ニードルピニオン』の周りに、なにやら技師がわらわらと集まっている。


 様子が慌ただしいな。


 エレジアさんは、技師たちの方へ向かって歩いていった。


 何かあったのか? テレパスオーブでバーナード様と話してみるかな……。


「おーい。バーナード様! 受け身を取れるように投げたはずだけど、もしかして、結構ダメージあった?」


「リンゾー。滅茶苦茶やってくれたな」


 開口一番恨み言である。落ち込んだ声音だ。


「バーナード様。そっちの機体はどんな状況?」

「右手首、右肘、右肩ジョイント部がレッド。ボディフレームがイエローだ。こっぴどくやられたよ」


 ゴレコンのダメージは、コンソール上の人型画像に、色と数字で表示される。黄色イエローまでは継戦可能。レッドが一個でもあれば戦闘不能だ。


 つまり、『ニードルピニオン』は、今の模擬戦で、戦闘不能級のダメージを受けたことになる。


「結構、酷い損傷だな。ライフルは使わなかったし、できるだけ傷をつけないつもりだったけど、『ファントム』と『ニードルピニオン』で、装甲にそんなに違いがあるものなのか」


「装甲というよりは、重力場のオーブのレベル差だろうな。どうやら受け身をとっても、投げられれば深刻なダメージになるようだ。リンゾー。お前の機体が羨ましいよ」

「おいおい。『強者は馬を選ばない』んじゃなかったか?」


「こう何度も無様を(さら)してはな……。お前の前で強がるのはやめたよ。リンゾー。今後、俺を呼ぶときは、ただのバーナードでいいぞ」

「わかったよ、バーナード」


「リンゾー、おまえ、確かファーメル教国の出身だったよな?」

「出身というか、ファーメル教国の『いたもん』だよ」

「話があるんだ。機体の整備にそれなりに時間がかかりそうだし、少し付き合え」

「いいけど、なんの話だよ」

「まあ、トレアロティーでも飲みながら話そう」


 そんなこんなで、バーナード様、もといバーナードと、山麓にある軽食屋にやってきた。


 景色が良くて空気がうまいとそれだけで、味に期待ができるよな。


「リンゾー。お前、『誰かに脳を乗っ取られているかのように感じたこと』って、あるか?」

「ないぞ。いきなりどうした?」

「俺は実はあったんだ。割と最近までな」

「恐ろしい話だな。最近っていつぐらいまでさ?」

「お前も聞いただろう? あの恐ろしい龍の『咆哮』を聞くまでさ……」


 ベルの咆哮か。あれ、神気を含んでるから、まじでブルっちゃうよね。


 なんでも、バーナードは、最近までファーメリア様に強い憎しみを抱いており、ファーメリア様を神の座から引きずり下ろして、『黒神』を信仰の対象にしようとする団体に加入していたそうだ。ベルとの戦闘で地獄を見たときに、その感情はなぜか綺麗サッパリ消えて、その団体から脱退したのだと……。


 いやー、めちゃくちゃ突っ込みたかったよ? いわゆる懺悔じゃん。教会でやれよと。たぶんファーメリア様なら直接聞いてくれるんじゃないかなと。


 でもよく考えたら、俺、世間的には神父と呼ばれる立場だったな。


「ここからが重要な話なんだ」

「ああ。続きをどうぞ」


 運ばれてきたトレアロティーに口をつける。


「その団体に正式名称はないが、俺は『反ファーメル同盟』と呼んでいた……」


 その団体。あろうことか、勇者の集まりで、今もファーメル教国を狙っているという。

 龍騎の勇者ルナもその団体のメンバーで、責任を押し付けられて無実の罪をかぶらされたそうだ。そう言えば、奴隷少女を救出するとき、召喚の勇者を捉えようとしたら光の勇者に邪魔をされた事があった。


 要人が人質に取られて、ふうちゃんが危険にさらされたこともあったな。その時の黒幕が『反ファーメル同盟』なのだ。


 今まで、裏でいろいろされてたわけだ。


 しかし、今もファーメル教国を狙ってるのか。いや、ちょっと待てよ? サリミドと帝国が戦争中、コルベストは『爆発の勇者』のアレが尾を引いて、いまだにゴタゴタしている。となれば、ファーメル教国は現在周辺国から孤立してるってことじゃねーか。


 まずいぜ。俺が敵なら今襲う。早くビリーに知らせないと……。

 いや、その前に知らせないといけないのは、ルナと一緒にいるふうちゃんか?


 もし、ルナが今もその団体に属しているなら、ふうちゃんが危ない!


「悪い、バーナード。少しはずすぞ!」

「でっかいほうか? いってこい」

「ちげーよ!」


 店から出てふうちゃんにテレパスオーブで呼びかける。


「もしもし、ふうちゃん?」

「りんぞーさま!」


 ぱーっと花が咲くような明るい声だ。


「今すぐルナから離れるんだ。そいつは、ファーメル教国の敵の可能性がある」

「はあ……。えっ? ルナさんが、ですか?」

「ルナはファーメル教国を敵視する『反ファーメル同盟』の一員だったんだ。一緒にいると危ないかもしれない」

「……りんぞーさま。大丈夫です。『反ファーメル同盟』のお話なら、ルナさんと会ったときにルナさん本人から聞いてます。もちろん、ボスも知ってますよ」


「あ、そうなの? いやー。ホッとした。ビリーが知ってるなら大丈夫だな」

「ルナさん、隣でものすごく落ち込んでますよ?」


「悪かったよ」


 いかん。話題変えよう。


「そうそう、ビリーと言えば、偽金貨事件は収束したのかな?」


「ボスは、偽金貨対策には関わっていませんよ? 『ボスが偽金貨事件でかかりきり』というのは、実は偽情報なんです」


「どういうこと?」


「『身内に反ファーメル同盟に情報を流している人がいる』ようだったので、ボスとマクベス教官が一芝居打ったんですよ」

「で、その犯人はもう見つかっている、と……」


 見つかっているからこそ、今こうして話せてるんだろうからな。


「はい。犯人は情報部の人間でした。マクベス教官が現行犯で逮捕・処刑しましたよ」


 絶対、拷問されてるだろうな。


「で、ホントのところ、ビリーは何をやってたの?」

「ボスは、錬金術師を集めて、教国内の地下鉄道網の整備を進めてました」


「ファーメル教国に地下鉄が走るのか」

「列車型ゴレコンですけどね。実は、もう走ってます」


「仕事が速いなー」


「もともと計画は昔からありましたし、坑道も掘り進められてましたからね」

「ふーん」

「なにより、ベル様に手伝ってもらいました」

「へぇ」

「私、頑張ったよ! あとで、おにいちゃんにご褒美を請求するから!」


 ベルの声がテレパスオーブを通じて聞こえてきた。

 本当にふうちゃんとちょくちょく会ってるんだな。


「ベル、今そっちにいるのか?」

「いるよー!」


「ベル様ったら酷いんですよ。『双葉の魔力弾は食感はいいけど美味しくない』って。美味しい魔力弾って、一体なんなんです? そもそも攻撃魔法に味なんてあるはずがないですよね?」


「あーそれはね。うん。常識的な人には、わからないかもね」


「ともかく、ベル様のおかげもあって、適切な場所に、必要な戦力を送り込む即応体制が完成してます」

「ということは、ヴィジョンを使えるふうちゃんとルナは、勇者たちの監視役?」


「さすがりんぞーさまです! 私達はヒューイに乗って、『ヴィジョン』で勇者を監視しながら、ファーメル教国の上空を周回飛行しています」


 飛行中なのか。


 飛行音が全然しないな。飛龍って優秀だ。


「じゃあ残りの問題は、この前取り逃がしちまった召喚の勇者か」

「召喚の勇者はグラナ街道東に軍を布陣してまして、お父様の教会騎士団と対峙中です。剣の勇者のいろはさんも応援に来てくれました」


「心強いな」


「なので、りんぞーさまは、こっちは私達に任せて、サリミドと帝国の戦争を止めてください」

「わかったよ。本当に心強い仲間たちだな。ファーメル教国はまかせたぜ!」

「任されました!」


「ところでさ、邪神カレン様からの依頼ってどんな内容だったの?」

「カレン様がいうには、『天叢雲アメノムラクモを撃たせるな』、とのことでしたよ。天叢雲を防ぐためには、りんぞーさまが帝国にいないと駄目らしいです」


「今はまだ、その依頼をこなすときじゃなさそうだな」

「そのときになったら、ご連絡をお願いしますね?」

「わかったよ。ふうちゃんも、危なくなったらすぐに呼んでくれよな。『ファントム』ごと、ベルに頼んで転移してもらうから!」

「はい!」


「麟三さん。聞こえますか? ルナです。私に掛けられた疑いは、行動で晴らしてみせます。ファーメル教国は全力で守ります。見ていてください」


「そう気負うなよ。疑ったことは悪かった。ルナの強さは知ってるよ。頼りにしてるぜ」

「ええ。まかせて!」


 非常に明るい声が帰ってきた。

 あっちは大丈夫だろう。


 遠距離の仲間に思いを馳せていると、


「ただいまー!」


 と、ベルが帰ってきた。本当にベルってば、空気を読まないよな。

読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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