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昇格試験(前編)

 帝都の宿屋の一室で、運ばれてきた質素な朝食をとっていると、テレパスオーブがブルブルと震えだした。


 この色は、ふうちゃんか。


「もしもし?」

「りんぞーさま! 大ニュースです」

「お、おう。ふうちゃん。朝からどうしたの?」

「私達に、『いたもん』の後輩ができました!」


 後ろで女の子の話し声が聞こえる。


「へー。後輩? どんな人なの?」

「龍騎の勇者のルナさんですよ。しっぽのない飛龍が人を載せて飛んでくるのを見たときには、目を疑いましたよ。あれでバランスが取れるだなんて……。騎龍と息がピッタリ合わない限り、到底無理ですから」


 あいつかー。


「あいつ、刑期が終わって『いたもん』になったのか。しかし、しっぽのない飛龍って、あのルナを裏切った天空龍だろ? よく元の鞘に戻ったなー」


「なんでも、龍の巣で、いじめられているその龍を見たら、思わず手を差し伸べていたそうですよ」

「まじかよ。相変わらず、お優しいことで」


「それで、先程、ルナさんと仲直りをしまして、欠損回復ヒールオールで龍の尾を治してあげました」

「ふうちゃん! 邪神カレン様に魔法の制限を解除してもらったって話は聞いてたけど、もう、ヒールオールを使えるようになったの? そっちのほうが大ニュースだよ?」

「ふふふ。私も着実に成長してますよ。実はちょっと身長も伸びたのです」

「それは再会が楽しみだなー」


「そうそう、ベルティアナ様のご様子はいかがです?」

「ベルなら、ベッドに寝っ転がって『どらやき』魔力弾を食べながら、ビューオーブでドラマを見てるよ」

「それは――、なんというか、堕落しちゃってますね?」


 ふうちゃんの声が、心なしか冷たく聞こえる!?


「待ってくれ、ふうちゃん。俺がどうこうしたわけじゃないぞ。あいつは、もとからあんな感じだ……」

「うーん。たしかにマイペースな感じの方ではあるんですけど……。他に、なにか変わったことはありませんか?」


「ハンター稼業は、概ね順調だよ。そういえば、ファーメル教国で偽金貨が横行しているらしくて、ビリーや錬金術師が駆り出されてるらしいな」

「なるほど。デノミをしないと物価があがりますね。わかりました、そっちは、エミリーお母様に相談しておきます」


「そうしてくれるなら安心だなー」


 やべぇ、デノミってなんだ? 内容が理解できなくて、棒読みっぽくなっちまった。


「では、また」

「うん」


 通話完了っと。


 朝ごはんを食べおえて、ハンターギルドに向かう。


 空はとってもいい天気だ。


 そうそう。今日から、俺とベル、――つまり、エル・ドラドは、三級ハンターパーティだぜ!


 三級ハンター。――、字面じづら的には、微妙もいいところだけど、ベテランハンター級だ。もう絡んで来るやつもいないだろう。


 内心ワクワクしながら、ハンターギルドの扉を開ける。


「この前は、実力もわきまえずに絡んでしまって、すみませんでしたー!」


 ハンターギルドにつくやいなや、以前俺たちに絡んできた、『戦場の狼』の面々が土下座をした。


「俺たち、リンゾーの兄貴があんなに強いだなんて知らなくって!」

「こいつ、普段は悪いやつじゃないんです。命だけはお助けください!」


「まてまて! もう許してるって! そんなことしなくていいから」


 慌てて土下座を静止するが、コイツラの勢いは止まらない。


「俺たち酒を飲むと気が大きくなっちまって、本当にすいませんでしたー!」


 時代劇風に三人の男女が『へへぇー!』と頭を地面にこすりつけている。


 やばい、周囲の注目を集めてる。


「お前ら、エール1杯ずつおごってやるから、とりあえず席につけ」

「うぉー! 兄貴ぃいいいい!」

「リンゾー兄ぃ!」

「いよっ! リンゾーおにいちゃん!」


「むぅー! おにいちゃんのことをおにいちゃんって呼ぶのは、私だけなんだからね!」

「いいじゃん! 俺たちにも兄貴と呼ばせろー!」

「ゴミムシの分際で、いい度胸だよ! おにいちゃんどいて、そいつ殺せない!」

「落ち着けよ、ベル! あとで新しい魔力弾食わせてやるから」


「落ち着いてなんていられないよ! これは私のアイデンティティーに関わる問題だよ? 私の自己同一性に対する攻撃だよ! 私のレーゾンデートルを侵犯する行為だよ! ぎゃーす!」


「おまえら、悪いけど『兄貴』呼びはよしてくれ。ご覧の通り、『妹』がうるさい」

「すいませんでした、リンゾーさん」

「おう!」


 ぷはー! ジョッキに注がれたエールを飲み干す! 朝から飲むエールは最高だぜー!


「実は俺たち、これから、4級への昇格試験を受けるんです。試験は3級以上のハンターに立ち会ってもらわないといけないんですが、この間の騒動で、上級のハンターの人たちに見捨てられちまって……。どうも、リンゾーさんの怒りを買いたくないとかで、立会を引き受けてくれるハンターがいないんです。リンゾーさん、こんなことをあなたに頼むのは筋違いだと重々承知してるんですが、立会を引き受けてはくれませんか? 俺たち4級ハンターになって、この子の親の借金を返したいんです!」


「いいよ」


「ダメですよね。ええ、聞かなくったってわかってます。言ってみただけで……、えっ?」

「いいってば。俺が身体強化魔法レベル7を発動してたから、周りのハンターがビビっちまったんだろ? 俺のせいとも言えるじゃん。引き受けるよ」


「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「受付のおばちゃん! 昇格試験の立会を引き受けてくれる3級ハンターさんを見つけました!」


 戦場の狼の紅一点が、声を上げる。


「おば……、ばっかお前、そこは、お姉さんって呼べよ! 微妙な年頃は傷つくんだぞ!」

「あらあら、いいのよおばちゃんで! うちには成人した息子がいるんだから」


 おばちゃんは、ふんすっと鼻を鳴らして誇らしそうだ。


 まじで、この世界結婚する年齢早すぎだろう? 受付さん。20代半ばにしか見えないぜ? それだけ死亡率が高いってことなのか? 不安になってきたぞ。


「ふむふむ。4級昇格試験ね。ほなら条件は、帝都西のカイヅカ遺跡にあるボーナーソイルドラゴンの骨を一欠片持ってくることさね。依頼書を発行するから後で読んどくれ。最近、4級昇格試験の達成率が下がってるから、3級の『エル・ドラド』には、原因調査を頼むよ」


「おいーす!」


 準備ができ次第、出発だ!

読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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