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vsヒドラ

 俺は、ギルドを出て、広場のベンチで依頼書を読んでいる。

 いたもんの訓練で、事前の情報収集の大切さは嫌というほど学んだからな。


 まわりは、お年寄りと子どもたちばっかりだ。

 身体強化魔法の出力をできるだけ絞って……と。


 ベルは……、子どもたちと遊んでるか。


 いい天気だけど、日向ぼっこってわけにもいかないよな~。

 依頼書に目を通さないと……。


 おお、ベルがこっちに来た。隣に座り、依頼書を覗き込んでくる。


「ふーむ。ヒドラには無限の再生能力があって、首を切られても再生する。過去の英雄によると、連続4度の再生を確認したとのこと、か。そんなことだろうと思ったけど、よく考えるとすごいよな」

「まるで、おにいちゃん並の生命力だね!」


「3秒だけならな。えーと、……ヒドラ革は、水や火に強く、丈夫。素材として非常に貴重で、傷の少ない大物は商業ギルドでも買い取りできず、貴族のオークションに掛けられることもある、と」


「丈夫かなぁ? 私が、そーっと触っただけで、ちぎれるけどなぁ」


「うん。ベルに任せたら台無しになることはよくわかった。ベルは手を出さないでくれよな?」


「ぶー。私は、『おにいちゃんのお手伝いをした』って実績をもって、ご褒美をもらうんだから、私からお手伝いを取り上げるのはあんまりだよ。従魔の存在意義について、おにいちゃんはもっとよく知るべきだ! 横暴だ! いじわるだ! 従魔虐待だ! おなかすいたよー!」


「移動や運搬するときに、ベルの力はたくさん借りるし、ちゃんと魔力弾はあげるから、もうちょっと小声で話そうな」


 しかし……。できるだけ、傷をつけずに倒せ、か。

 サーマルガンで一発、ってわけにもいかなそうだし、『傷を減らす』ってことになると『崩壊』もまずいよなぁ。


 武器が必要かな?


 まぁ、武器のことは、帝都のファーメル教会で、ファーメル教国に送金できるように手続きしてもらってから考えるか。



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


「メイスですよ! 今、時代はメイスです!」


 帝都のファーメル教会に顔を出したら、メイスの購入を強く薦められた。

 そりゃ、いくら教会の精鋭『いたもん』とはいえ、「手ぶらでヒドラを倒しに行く」なんて言ったら、そうなるか。


「切ってもダメだからメイスで殴れ」ってことなんだろうけど、違うんだよなぁ。

 あえて再生させて、ヒドラの首を集めたいんだよ。


 狙うは大金! 仲間達の度肝を抜いてやるぜ!


 とりあえず、武器屋さんにいって、重くて頑丈で安い剣を買ってくぞ!


 カララン。


「毎度、どーもッ!」


 武器屋さんにやってきた。ハンター向け武器屋は、銃や弓、槍がメインのようで、剣の扱いは悪い。

 ナイフはいっぱい扱ってるのにな。正面のショウケースには、ズラッとナイフが飾られている。ガットフックが付いているもの、ドロップポイントのものが主流か。皮を剥ぐのに向いたタイプが多いみたいだ。


 でもさ、異世界ファンタジーといったら、剣でしょう?


「兄ちゃん、ド素人か? 剣は背中に背負ったら鞘から抜けないぞ」

「あっ、ほんとだ! 腕が伸びないと無理だ!」

「おにいちゃん。……、ほんとに、一人で大丈夫?」

「ベルに呆れられた!?」


「この剣をください!」

「銀貨7枚だ」

「はいよ!」


 建物の影にベルを連れていき、周囲を見回す。

 誰もいない。今なら、行ける!


「さあ、ベル。ここなら人気(ひとけ)がないぞ。ワープゲートを頼む」

「お代は、ギルドで見た、『お茶菓子』の魔力弾がいいな~」


 やっぱり興味を持ってたか。


「クッキーだな。やってみよう」

「わーい」

「しかし、世界で俺だけだろうな、攻撃魔法の味付けに苦労してるのって……。サクサクしっとり、甘さは控えめ、バターの香り、それっ!」


 見た目も、焼きたてクッキーそのものだ!

 日々、腕が上がっていくのがわかるぜ。


「おいしー! 魔法の味付けに関しては、おにいちゃんは世界一だよ!」

「そんなこと褒められても、うれしくねーよ!」


 ワープゲート!


 ベルの声が小さく響いた。



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 目を開くと、周囲は草がもうもうと生い茂っていた。


 うぉい!


 苔を集めて煮詰めた鍋にヘドロをぶっこんだような、ひどい臭いだぞ。


 茂みから、ムカデにトンボの羽をはやしたような15cmぐらいの虫が飛び出してきた。

 昆虫ではない。断じて。こんな化物が昆虫であってたまるか。


 ドブ沼。想像以上にカオスだ。


 蒸し蒸しする。そして、ああ、沼が見える――。


 案の定、水が真緑だ。


 クリーミーな白い粒がほつほつと湧き立っている。見た目は抹茶オレ……。


「わだじむごうで、だべでるね?」

「鼻を摘みながら、喋るんじゃない」


「あのサイズは、えーと、20mぐらいか? なぁ、ベル。沼に、20mぐらいの蛇みたいな影が見えるんだが……。あれが、ヒドラじゃないよね? ヒドラって二足歩行のトカゲから、蛇の首が3つ生えてる感じじゃないのか?」

「なーに? そのおもしろ生物。 うわ臭い! やっぱり、私あっちに行ってるね!」


 なんか思ってたのと違うぞ!

 沼の水、全部抜きてー!


「おにいちゃん! 斥力場(バリアー)の魔法をかけといたよ。たいして防御力はあがらないけど、水は弾くから、病気にはならないと思うよ。さあ、度胸を決めて、レッツでご~だよ! がんばって!」


「こりゃあ、ハントの依頼を誰も受けないわけだよ。沼で、グレート・トリプルヘッド・アナコンダと戦うなんて、悪夢だぜ。ボートと銛を使うべきシチュエーションだわ」


 チャポンッ。チャポンッ。


 あー、水が生ぬるい。足元がおぼつかない。粘度のある泥が膝まわりに絡みつく。

 だけど、濡れている感じはない。これが、斥力場の効果か。


 流石に、身体強化魔法があるから、泥に足を取られるような抵抗感はないけど、こんな環境で、でっかい蛇と戦いたくねー。


 ふう。心を鎮めて……と。


「やってやるぞ! 身体強化魔法、LV7アクティブ発動!」


 剣を抜いて、水の中を歩く。


 そう、最初は無理ゲーだと思ったけれど、オーガ並みの脚力と水を弾く斥力場のおかげで案外普通に動けてしまうのだ。


 中央に近づくにつれ、水深がだんだん深くなってくる。


 俺の接近に気づいたヒドラの3つの頭が、ギョロリとこっちをにらみながら鎌首を持ち上げた。


 高さ、5m以上あるだろ!

 超こえぇ!


 ヒドラが大きな口を開け、俺を丸呑みにしようと突っ込んできた!


 迷わず横っ飛びし、頭からドブ沼に飛び込んだ。


 おお!? 俺の回避速度のほうが断然早い。それに……。


 ……、ベルの斥力場(バリアー)の魔法は凄まじいな。ドブ沼の水が口に入らないどころか、海面にガラスのボウルを押し付けたみたいに、沼の中の様子がよく見えるぞ!


 これなら、十分泳げる。


 水中には堆積した泥と、真っ二つにぶち抜かれたボートの破片があるじゃないか!


 やっぱり過去にいたのだ。


 この無理ゲーにボートで挑んだハンターが。


 亡骸は見当たらないが、食われたか?

 沼に散ったか?


 安らかに眠れ。

 (かたき)は俺が()ってやる。


 泳いで接近して、ぶった切ってやるぞ!


 ……、みるみるうちに、ヒドラとの距離が縮まっていく。


 水中を歩くより、泳いだほうが圧倒的に早い。


 ヒドラが回避行動をとっている。遅ぇえ! 沼に適応してるとはいえ、20m級の蛇。そう簡単には旋回もできないようだ。『やる前は大変そうに見えても、やってみると簡単』ってことは案外多い。今の状況がまさにそれだ!


 魚みたいに、すばやく動くって訳には、いかないようだな。


 遅い遅い! まな板の上の蛇だぜ! まさか、水生動物に泳ぎで勝てるとは思わなかったよ。


 泥を剣にこすりつけ、摩擦抵抗をあげて、ぶった切る!


 再生が追いつかなくなるまで、切りまくってやんよ!


 ズシンッッ!!


 手応えあり!


 おおっ! ほんとに再生するぞ……! さすが異世界って感じの再生速度だ!


 うぉらー! もっと、もっとだー!


 おまえ、それでもヒドラか! もっと、はやく再生しろよ! お前の本気を見せてみろー!


 もう、素材にしか見えないぜ!

読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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