召喚の勇者(2)召喚の勇者は召喚しない
ブクマ増えてました! どうもありがとうございますm(_ _)m
底辺脱出まで、あと83ブクマ!
朝、テレパスオーブの振動で目が覚める。発信者は、と。ビリーからか。
テレパスオーブ、――遠隔地の人の顔を見ながら会話ができる魔道具で、言うなればテレビ電話のようなものだ。この世界、魔力を込めた魔石によって、かなりいろいろな事ができる。充電池でできるようなことは、大抵できるんじゃないかな? スマホみたいに高機能なものは流石にないけれど。
「おはよう。ビリー。こんな朝から何?」
「リンゾー。良い知らせだ。お前が狩った天空龍の尻尾、高く売れたぞ。いたもん窓口でボーナスを受け取ってくれ」
「おおー! それはいい知らせだな」
「双葉には、お前から伝えといてくれ」
「了解」
部屋を出ようとすると外から声が聞こえてきた。フィオとふうちゃんが話しているようだ。
「足をくじいて、帰れなくなっちゃった。とかは?」
「私、回復魔法を使えます!」
「体調が落ち着くまで、ここにいていい? とかは?」
「クリアブラッドも使えます!」
「ごめんね。お手上げだわ」
何かのシミュレーションをしているのかな。
部屋を出るとふうちゃんが小走りにかけよってきた。ツインテールの黒髪が、窓から入る柔らかい光を反射してツヤツヤに輝いている。
「おはようございます。りんぞーさま」
「ふうちゃん。おはよう。今日も髪の毛、ツヤサラだね! よく寝られた?」
「はい! バッチリです!」
俺は、朝あったビリーからのテレパスオーブの通信をふうちゃんに伝える。
「ヒューイだっけ? 龍騎の勇者がのってた天空龍いたじゃん? あれの尻尾が高く売れたらしいよ。いたもん窓口にボーナスを受け取りに行こう?」
「天空龍ですか……」
あれ? 声のトーンが暗い? 話題変えてみるか?
「そういえば、天空龍の龍鱗って、いくらぐらいで売れるんだろうね?」
「……」
あっ、地雷踏み抜いた。
ふうちゃんは今にも泣き出しそうだ。すごい数の天空龍を消し飛ばしちゃったからな。
どうしよう。そうだ!
「朝ごはん食べに行こう! ふうちゃん。食べて忘れようぜ」
こういうときは、『あおば食堂』に限る。『あおば食堂』は教会の対面にある、ふうちゃんのお祖父(雪代青葉)さんが創ったという店だ。俺とふうちゃんは、『あおば食堂』で朝食をとることにした。
「トゥーロサラダが1つ、二枚貝のクリームシチュー水牛チーズ仕立てが2つ、ハーブパンが2つ、照り焼きコカトリスが1つ、お飲み物はトレアロティーに、バナナとかぼちゃのスムージー。ご注文は以上でよろしいですか?」
「はい。飲み物はSサイズでお願いします」
「承りました。ごゆっくりどうぞ」
地球に近い料理が食べられる、ここ、『あおば食堂』は、転生者に人気の店だ。ふうちゃんもオフの日は、ここの手伝いをしているらしく、この店の人気に拍車をかけている。昼過ぎになると、観光客も加わって2~3時間待ちクラスの行列ができてしまうのだが、朝は空いている。
朝、客の少ない『あおば食堂』で、美味しい食事を摂る。なんだか業界人っぽさがいいよね。別に割引になったりはしないんだけど……。おっ、今日のクリームシチュー、おいしいな。
「りんぞーさま。クリームシチューおいしいです」
「うん。貝のだしが出てておいしいね」
「だしって、昆布と鰹節だけじゃないんですか?」
興味津々といったふうで、ふうちゃんが身をのりだしてきた。目がキラキラ輝いている。
元気になったみたいでよかった。
「だしは、貝とか小魚、きのこからもでるよ。かわったところだとトマトからも出るかな」
「じゃあ、トマトのお味噌汁とかもありですか?」
「ありだよ。俺は好きじゃないけどね」
「りんぞーさまは、どんなお味噌汁が好きですか?」
「なめこと豆腐のかな」
「なめこってなんです?」
異世界には、なめこってないのか? それとも物はあるけど食べる文化がないのかな?
「とろっとした、きのこだよ。今度日本に行ったときに定食屋さんに食べに行こうか?」
「いきたいです」
トレアロティーが熱かったので、冷めるのを待っていると、ふうちゃんもスムージーに取り掛かったようだった。同じぐらいに食べおわりそうだな。とその時、テーブルに置いていたテレパスオーブが震えだした。
オーブの色は緑。サヤさんからだ。
「もしもし」
「リンゾー君。双葉ちゃんはそこにいますか?」
「います!」
「緊急の依頼が入ったのでいたもん窓口まで来てください。何分ぐらいで来れますか?」
「10分あれば行けると思います」
「じゃあ、30分後に来てください。支度の時間も必要でしょうから」
俺とふうちゃんは支度を済ませ、いたもん窓口へ向かった。
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
<能美信太視点>
あれから僕は、奴隷商人の噂を探り、元奴隷商人だという男に隷属の首輪を譲ってもらった。獣人の里で一番かわいい子(スレイちゃん)に首輪をかけ、略取、調教し今に至るわけだ。
僕が転生してからもう3ヶ月は経つ。九尾のキューちゃんは最初は仕事を完遂できずに不満げだったが、今ではまったりスローライフを満喫しているようだ。
獣人の村の男たちの追跡はそれはもうしつこかった。『オレの嫁を返せ』とか『いいや俺の嫁だ』とか『村のみんなの嫁だ』とか。しかし、僕は頑張った。スレイちゃんのお願いを聞いて、誰も殺さずに数ヶ月かけて逃げたのだ。追跡の手が止んだ今、スレイちゃんは身も心も僕のものだろう。
「おはようございます。ご主人様」
首輪のついた僕の奴隷である半裸のケモミミ美少女(スレイちゃん)が僕の布団を剥いできた。
「違うだろ、スレイちゃん。朝はおでこにチュッとして起こさないと」
「こうですか? ちゅっ」
「お礼に、梳かしたばかりの髪をワシャワシャ撫ででやろう。さぁ! 撫でポれ!」
「ありがとうございます。ご主人様。ご主人様にせっかく梳かした髪型をぐちゃぐちゃにしていただいて、スレイ、とっても嬉しいです!」
「にこっ!」
「ポッ!」
「お主、毎日毎日虚しくないか? スレイもスレイじゃ。内心では裂き殺してやるご主人様と思っているのに心から笑っているようなふりをして」
「ふりっていうな。いずれスレイちゃんは心の奥底から僕に惚れるんだよ」
「狐の戯言です。ご主人様。スレイは心の奥底からご主人様に惚れています!」
濁った目でスレイちゃんが微笑んだ。いつもどおり口は半開きだ。
「かわいいなスレイちゃん。ミルクをやろう」
「ちょろい。ちょろすぎるぞ主様。その奴隷、昨晩もお前様の首を落とすために爪をといでいたというのに」
「爪とぎはただの日課ですぅ」
僕はスレイちゃんのリードを引っ張った!
「さあ、這いつくばってミルクをなめろ! 尻尾を振りながらなっ!」
「ゲスい! ゲスすぎるぞ主様。そこは、同じテーブルで食事をするのがテンプレではないのか?」
「僕は一般人より、多少ゲスいんだよ」
「お主らお似合いのような気がしてきたわ」
ピチャピチャとミルクを舐めるスレイちゃんを眺めながら、僕たちも食事をとった。九尾のキューちゃんは、きゅうりにかぶりついている。
「主様よ。招かざる客が来たようじゃ。数の上では不利。召喚して迎え撃つか?」
「これ以上召喚すると、食費がね」
「妾は、そこらの人間が食事でも構わぬぞ?」
「それは、僕が構うんだよ」
「まあ! 皆の食費にまで考えが回るだなんて、さすがご主人様です。スレイ、気が付きませんでした。いーえ、そこの狐はもちろん、同じ転生者の人でも、ご主人様以外は気付かないと思います。ご主人様だからこそ気づけたんです」
「いいぞ、スレイちゃん。もっと、僕を持ち上げろ!」
「さすがご主人様です!」
澱んだ瞳で口を半開きにして、スレイちゃんが微笑んでいる。
「まぁよい。敵数4。腹ごなしにはちょうどいいじゃろ。当面、4人までは、殺る契約じゃしな」
僕らは小屋を出て、敵の様子を見ることにした。
読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。
とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、
レビュー等いただけるとうれしいです。
活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、
興味のある方はどうぞ。




