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プロローグ(3)街に繰り出そう!

~ファーメル教国、ファーメル教会、大聖堂にて~


 うまい空気の匂いがする!


 目をあけると、青い空と白い雲が視界に飛び込んできた。

 どうやら俺は、天井のない塔のような建物の中にいるようだ。


 青空。


 塔の壁のステンドグラスをすり抜けてくる、昼の強い日差しが、美しくも力強い。自分が生きているという実感が、今はありがたかった。


 俺は新しく生まれ変わったのだ!


「うぉおおおお! やったぞー!」

 

 生きてるってことが嬉しくて、わけもなく叫んでしまった。


 ブゥン、と音がし、天井にドーム状の屋根がかかっていく。


 周りを見回すと、白いドレスを着た少女が、にこにこ優しく微笑みながら、スイッチのようなものを操作していた。


 やべぇ、聞かれてた!


「お目覚めですか? りんぞーさま」


「日本語が通じるの?」


「通じます」


「……君は? 俺のことを知ってるの?」


 もしかして、女神様が言っていた付き人って、この子のことかな?


 なんでも、不案内ぶあんないな俺のために、女神様は異世界を案内してくれる、付き人をつけてくれるらしい。こんなかわいい子が付き人だったら最高なんだけどな。


「私は、りんぞーさまの付き人になる、雪代双葉ゆきしろふたばといいます」


 素直にめちゃくちゃ嬉しい。案内役がいてくれるだけで、人生相当イージーモードだよ? 俺、『女神様じるし』のチート持ちだし。しかもこの子、めちゃくちゃかわいい。多分、干支えと一回りぐらい年違うけど。


 雪代双葉と名乗るこの子は優しそうな目に大きな瞳ひとみ、長いまつげ、頬のふっくらとした、笑顔がとびきりかわいくて、胸のあたりまであるサラサラの黒髪を、左右で軽く結っていた。


 髪型はいわゆるツーサイドアップ。白いフリルの付いたドレスを纏ったその姿は、うちに秘めた元気さと、大人びたお嬢様っぽい雰囲気との際どいバランスの上に成り立つ、奇跡のような、かわいさだ。


 ツヤツヤでサラサラの髪の毛には、天使の輪が現れている。年は12~15歳ぐらいかな? ドレスの上からでも、豊かな胸の膨らみがはっきりわかる。


「雪代さんか。これからよろしくね?」


「……。()()()()()は私のことを、ふうちゃんってよびます」


 これは、『ふうちゃん』って呼んでほしい、ってことだろうな?


「ふうちゃんって、呼んだらいいのかな?」


「はい! そうお呼びください!」


 満面の笑顔。周囲が明るくなったように錯覚するほどの破壊力だ。かわいい。


「ふうちゃんも転生してきた人なの? 名前、日本人っぽいよね?」


「私は、生粋きっすいの異世界いせかいっ子ですよ。私のお祖父様が、日本から来た転生者なんです」


「江戸っ子みたいにゆーな! 異世界っ子ってなんだよ?」


「突っ込まれちゃいました」


 ふうちゃんはくすくすと笑っている。


「ふうちゃん。軽くこの世界のことを教えてくれるかな?」


 まずは、世界のことを聞いておかないとな。


「軽くですか?」


「軽くで、お願い」


「最初に創造神様が大神霊をお創りになりました。初めは創造神様に従っていた大神霊ですが、機を見るや反旗を翻し創造神様を宇宙の彼方へ放逐ほうちくしました」


「悪が勝っちゃったのかよ!?」


「今は大神霊が神霊に委託する形で世界を運営しています。私達が崇めるファーメリア様は、3柱の有力な神霊のうちの1柱です」


 ああ、女神様の他に有力な神霊があと2人いるのね。


「そういえば、この世界、魔物とかがでるんだろ? どうやって対抗してるの? やっぱり魔法?」


「魔物に対抗する力は、『魔法』や『銃』などの武器がありますが、魔法は高等教育を受けたものしか使えません。お金持ちは、ハンターを雇ったり魔法を蓄魔した魔石オーブや銃などで身を守りますが、一般人は無力なんです」


 なるほど、一般人が驚異にさらされている状況ってことか。


「銃があるんだな。魔物に銃って通用するの?」


「街のそばに出る弱い魔物には普通に通用しますよ。でも、例えば魔王などの強力な魔物はだいたい別大陸にいるんですが、そういう強力な魔物は銃では倒せません」


「銃は弱い魔物専用なのか。強い魔物にはどう対抗してるの?」


「各国は強力な魔物への対策として異世界から勇者を召喚します。勇者はチートと呼ばれる強力な固有魔法を持っていますから国を守る切り札足り得るんです」


 おおー。チートを持った異世界人。それってつまり俺のことか?


「俺は勇者ってこと?」


「違います」


「あ、違うの?」


「りんぞーさまは、国に召喚されたのではなくファーメリア様に選ばれた異端審問官です」


 異端審問官。おどろおどろしい言葉だ。


「異端審問官って、魔女狩りしたりする?」


「しません。ファーメリア様は法の神です。無法は神が許しません」


 ああ、よかった。


「法の神の異端審問官ってことは、要は警察みたいなもんか」


「武力を持った法執行官です」


「へぇ」


「勇者は魔王を倒したり、強力な魔物の数を減らすのが仕事です。でも、実際は大きな力を持つ勇者は国の言うことを聞かずに好き勝手やることが多いんです。勇者たちは、国家権力からも自分の身を守れるほどの力を持っていますから」


「かえって害悪を増やしちゃってるわけか」


「私達、異端審問官のお仕事は、魔物や堕ちた勇者を取り締まり、一般の人を守ることです」


「私達?」


「りんぞーさまは、私達に協力してくれませんか? チートの力を好き勝手に振りかざしますか?」


 選択肢なんてなかったー。断ったらバッドエンドに行くやつじゃんこれ。

 まあ、いいか。正義の味方。子供の頃は憧れてたんだ。


「やるよ。ふうちゃん。異端審問官になるには、どうしたらいい?」

「それはおいおいご説明しますね。歓迎しますりんぞーさま。同期の人達にりんぞーさまをご紹介しましょう」


「挨拶回りか」



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽



 挨拶か。大事だよね挨拶。気は進まないけどさ。


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今から会いに行くフィオナさんは、学校に行ってたころ同級生だったこともあるんですよ。私のお友達です」


 へぇ。ふうちゃんの同級生か。子供かな?


 コンコンコンと扉をノックする。

 予想に反して大学生ぐらいの人が出てきたぞ。


「おはよう。双葉。そちらのかたは?」


「フィオさん。おはようございます。この方は私のパートナーのりんぞーさまです」


「楠木麟三です。リンゾーでいいよ。よろしく」


「私はフィオナです。双葉のパートナーってことは、同期ですね。よろしくおねがいします」


にっこり笑いペコリとフィオナが頭を下げた。少しソバージュのかかった赤毛を後ろで軽くまとめている。笑うと愛嬌のある女性だ。


「同期の人達に挨拶回りをしているのですが、フィオさんのパートナーの方はどうされたんです?」


 ふうちゃんが聞く。


「ペリーのこと? ペリーなら今、シャワーを浴びてるけど?」


 後ろを親指で指しながら、フィオさんが振り返るような仕草をした。


 サラッと言ったが、大人の会話だよな。


 ふうちゃんは特に気にしてないようだ。


「ご挨拶は、あとにしたほうが良さそうですね?」


「そのほうが助かるかなー」


 フィオさんは濡れた髪の毛をタオルで押さえている。さすがにドライヤーは無いか。

 髪の毛を乾かしてる女の子って色っぽいよな。


「りんぞーさま?」


「おっと悪い。考え事してた」


 どうやら難しい顔をしていたようだ。考え事の内容はくだらないことなんだけどさ。


「同期に挨拶するのなら、ロブのところに行ってみたら? ロブも転生者の担当になったらしいわよ」


「ロバートさんですかぁ……」


 ふうちゃんのテンションがガクッと落ちた。どんな奴なんだ? ロバートって。


「こんな言い方失礼かもしれないけどさ。ロバートって人、なにか問題ある人なの?」


「そうです」


「問題は、大アリね」


 フィオさんがため息を付いた。大丈夫か?


「……とにかく軽い人なんですよ」


 ふうちゃんもため息を付きそうな勢いだ。チャラ男か。


「暇があればナンパして、常に負け続ける子よ」


 親近感がやべぇ。でも、積極的なだけで別に悪くなさそうじゃん。何がまずいんだ?


「積極的なだけじゃない、のか?」


「積極的なだけだけど。老若問わず、口説かれなかった女性はいないレベルなのよ」


「私も会うたびに口説かれます。誰か止めてほしいです」


 口説き文句が『お日柄』の挨拶みたいになってるのか。


「でも、今度のロブのパートナーなら止めてくれるかも知れないわよ」


 そりゃぁ、すごい。とんでもない美人とか?


「どんな人なんだ?」


「行ってみますか?」


「おう! 行ってみよう」


 ふうちゃんに連れられて、廊下を進む。角を2回曲がるとそこについた。


 ――、ピシーン! あおぉおおん! ピシーン! あおぉおおん!


 扉越しに人間(男)の鳴き声が聞こえてくる。


 あー。めっちゃ帰りたい。嫌な予感しかしない。


「ロバートさーん。こんにちはー!」


 扉越しにふうちゃんが声をかけた。よく通るきれいな声だ。


 ゴトゴトッと部屋の中でけたたましい音がして、黒髪アフロな上半身裸の少年が顔を出した。至るところにある体の赤いアザは、ムチだよなぁ。やっぱり。


 細身だが鍛えられた体だ。


「やあ、双葉。来てくれて嬉しいですよ。今日の君も一段と可愛らしい。まるで花壇に咲く野ばらのようだ」


 例えが適切かどうかわからん。この世界ではこの口説き方が普通なのか?


「こちら、私のパートナーのりんぞーさまです。同期になるので、よろしくおねがいします」


 ペコリ。ふうちゃんは言い終えるや否や頭を下げた。

 めっちゃ早口だ。速攻で要件を伝えて会話を切り上げたい。そんな感情が伝わってくる。


「今トレアロティーをいれますからゆっくりしていってくださいよ。そっちの人も」


「楠木麟三です。リンゾーでいいよ」


「リンゾーさん。よろしくおねがいします」


 おお、ちゃんと挨拶できるじゃん?


「なぁ、ふうちゃん。この人、どんな人なの?」


「スカウト学校の主席卒業者です。優秀な人ではあるんですけれど……」


「スカウトってなんだ? 勧誘の学校?」


「スカウトっていうのは、小さいグループでキャンプやハイキングをする人たちのことですよ。聞いたこと無いですか? ボーイスカウト」


 後ろから声をかけられたぞ?

 振り返ると金髪のイケメンが髪をタオルで押さえながら話しかけてきていた。


 状況から察するに、さっき会ったフィオさんのパートナーだと思うけど、一応聞いてみるか?


「あんたは?」


「失礼しました。私はペリー・ペリシモ。フィオのパートナーで転生者です。先程は、せっかく訪れていただいたのに応対できず、すみません。リンゾーさんでしたね。これからよろしくおねがいします」


「よろしく」


 わざわざ挨拶するために追いかけてきたのか。


 良い奴っぽいけど、ペリーはイケメンである。当面そっけない対応でいいだろう。イケメンと一緒にいると引き立て役にされるからな。そんなのはゴメンだ。


「こっちでいうスカウトっていうのは、物理的な工作から精神的な工作までおこなう工作の専門職のことです。ハイキングって言われると少しニュアンスが違うかも知れませんね」


 これはロバートの弁。スパイ養成学校みたいな感じかな。それの主席? マジかよ。エリートじゃん。


「ロォォオオオブゥゥウウウ。まぁだ、お・は・な・しが終わってないわよ」


「ひぃっ。アシュリー。続きは後で。ね。ね」


「今、そこの女の子と楽しそうに話してたわねぇ?」


「違います。アシュリー。あれは同期の子で、今のは挨拶のようなもので、あひぃ!」


 フリルのたくさんついた青いドレスを着た豪商の娘って感じの子が出てきたな。ボブカットの金髪で性格がキツそうな目をしている。服装こそ貴族感があるが、立ち居振る舞いがおかしい。ムチ持ってるし。


「同期の人達ね? 私はアシュリー。アシュリー・オースティン。以後よろしく頼むわ」

 丸めたムチをポスポス叩きながらアシュリーが自己紹介をした。

 年下っぽいけど、なんか威圧的なオーラを感じるぜ。


「私はペリー・ペリシモ。転生者です。よろしくおねがいします」


 すげぇな。ペリー。全く動じずに普通に挨拶しやがった。


「俺は楠木麟三です。リンゾーでいいよ。よろしく」


「りんぞーさまのパートナーで、雪代双葉といいます。よろしくおねがいします」


『イケメン』ペリーに、『笑うと愛嬌のある』フィオナに、『変態アフロ』ロブに、『調教姫』アシュリーか。


 俺の同期、濃すぎるだろ! 大丈夫かよ。


 ふうちゃん? ふうちゃんはマジ天使だよ。


▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽



 一通り挨拶が終わった。


 ふうちゃんに手を引かれて、広い教会の中を進むと、やがて受付っぽい窓口を見つけた。


 窓口には、遠目に見ても、スーパーモデルかな? と思うような、出るところの出たメリハリのあるスタイルの美女がいた。18~20歳ぐらいだろうか? じっと見つめていると、向こうから声をかけてきた。


「いたもん窓口の受付をしている、サヤです。新しい異端審問官の方ですよね? よろしくおねがいします」


 サヤさんがペコリと頭を下げた。


「俺、楠木麟三くすのきりんぞうって言います。リンゾーとお呼びください。ところで、いたもんってなんですか?」


 俺もサヤさんに頭を下げてから聞いた。


「いたもんは、異端審問官の略です。異端審問官、略して、いたもん。異端審問官と聞くと転生者の方々は、魔女裁判とか恐怖政治とか、悪いイメージを想像されるらしいので、かわいく略しているんです」


 ぐっと、ガッツポーズをするサヤさん。ピッチリした制服に包まれた豊満な胸が、ギュッとよせられた。たまらん。


 いけね。あんまり、見ないようにしないと……。


 ふうちゃんがじっとこっちを見つめている。こういうの女の子は気づくらしいな。


「私は、いたもん窓口の受付で仕事をしてますから、仕事が始まったらリンゾー君とお話する機会もたくさん出てくると思います。よろしくおねがいしますね?」


「はい! よろしくおねがいしますッ!」


 あちゃー。声に、妙に力が入ってしまった。


 ふうちゃんが手を強く握ってくる。俺は、ふうちゃんに手を引かれるままに、教会を出た。


 俺は、未知の異世界に足を踏み出した!



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽



 ここが異世界か!


 物珍しさに、俺はキョロキョロと周囲を見回した。


 中世的な景色を期待したのだが、さにあらず。


 どういうことだ?


 旅行で行った東南アジアの景色よりも、ずっと馴染みのある風景だ。


 なんだろう? この()()()


「ファーメル教国は、日本からの転生者である私のお祖父様が、女神ファーメリア様と創った国なんです。ちなみに青葉お祖父様は、江戸っ子だそうです」


 ニコニコしながら、ふうちゃんがそう言った。


 なんか、急にに落ちた気がする。


 この街の建物は、擬洋風というか、明治から大正時代に日本で建てられた洋風建築のようなイメージなのだ。


 横浜の古い町並みとでも言おうか? 中世というよりは近世。外国というよりは日本、という感じで、妙にホーム感がある。


 日本との違いというと、車が走っていないことかな? 道は石畳で舗装されているけど、道を行くのは、徒歩の人。人力車。そしてわずかばかりの馬車。


 ただし、線路のような軌道が街中を通っており、ときおり路面電車のような、貨物コンテナを引いたトラックの頭のようなものが通る。時速は20kmぐらいかな。信号はない。


「ふうちゃん。あの乗り物は何?」


 ふうちゃんに路面電車のようなものの正体を尋ねた。


「ゴレコンですね。正式名称は、ゴーレムコンソールといって、簡単に言うと、人が操縦するゴーレムです」


 思ったより、ずっと凄そうなものだった!


「歩道とゴレコンの線路と、分かれてないようだけど、事故が起きたりしないの?」


「ゴレコンは街中まちなかは徐行するように定められてますし、ゴレコンのエアブレーキは、非常に強力なものなんです。人がコンテナに乗るときは、スピードにかかわらず、ハーネスを付けることが義務付けられているぐらいです。事故はほぼ起きません」


「なるほどな~。ブレーキがめちゃくちゃ強力だから、信号不要ってことなのか」


 ふうちゃんと話していると、和装の女の子に声をかけられた。



▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽



「双葉! 元気してた?」


「いろはさん! 元気ですよ。いろはさんも元気そうで」


 声をかけてきたのは、桜色の和服を着た、年の頃は15~16歳ぐらい。


 少しシャギーの入った栗毛でセミロングの、凛とした雰囲気の女の子だった。


 腰には脇差と刀を帯びている。


「りんぞーさま! ご紹介します。こちらは、私の友達の出雲いろはさんです」


 ふうちゃんが、いろはさんに後ろから抱きつくような形で紹介をしてきた。


 いろはさんの胸が寄せられて膨らみがあらわになる。


「俺は、新しく異端審問官になる楠木麟三くすのきりんぞうです。よろしくおねがいします」


「私は、剣の勇者の出雲いずもいろは。よろしくおねがいします」


「いろはさんは、人見知りするタイプなんです」


「双葉。余計なこと言わないで……」


「ふふふ」


 ふうちゃんはニヤリと、いたずらっ子のように笑っている。本当に仲がいいのだろう。


「いろはさんは、どうしてここへ?」


「お給料日だからね。教会に寄ってた。双葉、麟三さんも時間ある? よかったら、そこのハンバーガーショップで話さない? おごるけど」


「いいんですか? ぜひ! りんぞーさま、やりましたね! 今日のお昼ご飯代、浮きました!」


 ふうちゃんが、とってもにこやかだ。この笑顔で御飯3杯はいけるぞ。


 しかし……、まじかよ。ハンバーガーショップとかあるのかよ。どんだけ転生者がいるんだ? この国。


 中に入ると、ハンバーガーショップは、もう、まんま、マニュアル管理されたセルフサービスのファストフード店だった。


 カウンターの水晶っぽい球体から、壁に、プロジェクターのように料理のメニューが映し出されているのだが、どれを注文するべきかよくわからなかったので、いろはさんと同じものを頼んだ。ふうちゃんも同じでいいようだ。


「デミタウロスバーガーセット3つ。ドリンクはトレアロティーで。それとフライド・コカトリス。ソースはマスタードで」


 各々、トレーを持って椅子に座る。


 ハンバーガーを食べながら、俺は、さっそくいろはさんに疑問に思ってたことを聞いた。


「勇者がいるってことは、やっぱり、魔王っているの?」


「たくさんいるよ……」


 たくさんいるって!?


 いろはさんの話を要約すると、魔王は、海を隔てた旧大陸にたくさんいるらしい。勇者も魔王も、たくさんいるんだそうだ。何だ? この世界。


「……、魔王には、魔王クラスにしか使えない結界魔法があって、勇者クラスが習得する雷系魔法でしか、まともにダメージを与えられないの。だから、万一のときのために世界中の国が、勇者を囲おうとしてるんだ」


「いろはさんもファーメル教国に囲われてて、戦争の抑止力的なことをやってるの?」


「私は教会の指示で動いてるけど、少し違うかな。私達の住む新大陸と、魔王たちの住む旧大陸は、転移門ゲートで魔法的につながっているんだけど、今、魔王は転移門を通ってこれない。なぜだかわかる?」


「いろはさんが転移門を監視してるから?」


「残念だけど、私にそんな力はないよ。ファーメリア様と並ぶ3大神の一柱、邪神様が転移門の近くで暮らしているから」


「魔王たちは、邪神を警戒して、新大陸に来れない?」


「そう。邪神様のお力は、それはもう凄まじい。邪神様が神霊になったとき、そのお力を警戒したファーメリア様の眷属の龍神達が複数で邪神様を討滅しようとしたんだけど、軽くひとなでで、皆殺しになった」


 何それ、怖い!


「私は、教会の依頼で、邪神様がそのお力を振るわなくてすむように、邪神様に絡んでくる羽虫を倒している」


 暑いのになんだか寒気がしてきたぞ。いろはさんが早く戻らないと、世界が滅ぶとか言わないよな?


「大丈夫。羽虫退治係は、もうひとり結構強いのがいるから」


 いろはさんが、俺の思いを見抜いたように笑いながら言った。


「アルフリート様ですね?」


 ふうちゃんが上品に、口の周りをナプキンで拭きながら聞く。


「そう。数少ない龍神の生き残りのアル。今頃一人で、ヒイヒイ言ってるはず」


 いろはさんはクスクスと笑っている。


 ああ、いろはさん。結構、いい性格してるわ。


 俺たちはいろはさんと談笑した後、奢ってもらったお礼を言って、ハンバーガーショップをあとにした。


 そうそう、デミタウロスバーガーもコカトリス・フライも、脂がのってるのに、くどくなくて美味しかったよ。トレアロティーは、青りんごみたいなフレーバーだった。

読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話制作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんと。 そういえばリンゾーはそのこと気が付いてないんでしたね。 しかし読み返してみると リンゾーが転生するに至る理由である、日本にいたふうちゃん。 それを助けて転生した先のファーメル教国…
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