表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/87

要人救出作戦

 小鳥たちのさえずりが聞こえる。アシュリーの周りに小鳥たちが集まってくる。


 アシュリーはホント、動物に好かれるよなぁ。


 ――龍がいる。龍がいるよ。小さい。大きい。大人。大人。

 ――人が乗ってるよ。2人。龍に乗ってるよ。2人。

 ――急にでてきた。いきなり出てきた。びっくり。びっくり。

 ――姿が消えた。見えなくなった。びっくり。びっくり。


 アシュリーが小鳥のさえずりに耳を傾けている。アシュリーにはそれが言葉のように感じられるのだそうだ。俺にはチュンチュン言ってるようにしか聞こえないけれど。


 ファーメル教国とコルベストの国境付近。


 盗賊団の指定場所へ金貨を運ぶ途中、アシュリーが話しかけてきた。


「ねえ、リンゾー。鳥たちから聞いたのだけど、この周辺に小型の成龍がいるらしいわ。人を載せて飛ぶ龍を見たって子もいる」


 アシュリーの持つ、動物会話のスキルか。


 動物会話――は、距離に依存しないスキルの一つだ。いうなれば、動物の行動範囲が支配領域という、情報を集めるには、この上のない恐ろしいスキルである。スパイとかをやらせたらアシュリーの右に出る者はいないだろう。


「盗賊にしては、人質をとってからの動きが早すぎるような気はしてたんだけどな。龍を移動手段に使っているってことか?」


「少し疑問なのだけど、盗賊団なんかに龍を使役できるかしら? 龍騎士というのは、非常にレアリティの高い職業スキルだと思うのだけれど……」


「僕もそう思いますね。龍騎士なんて、『龍騎の勇者』が召喚されるまで、おとぎ話だと思ってましたよ」


 アシュリーにロブが応える。


 たしかに、龍騎の勇者の話以外では龍騎士なんて聞いたことないな。


「まぁ、龍を使役できるなら、盗賊なんてショボい真似はしてない気はするよな。敵は盗賊団だけじゃないってことか?」


「数ヶ月前から連絡がとれない龍騎の勇者が、まさか、今回の誘拐に絡んでいるのか?」


 マスベス教官が憂鬱そうに口を開いた。


「わからない。でも、龍騎士が盗賊たちの側にいることは確かよ。私はこのことをスカーレットバレットの人達に伝えてくるわ」


「ああ」


 現場に着くと、盗賊と思われるものが30人近くいた。盗賊達の中心付近に短剣を突きつけられている、黒髪を6:4ぐらいに分けた男がいる。


 あれが誘拐された人質か。


 人質は、放心した様子で目に力がない。


 拷問でもされたか? 心が壊れている感じがする。早く救出しないと、まずいことになりそうだ。


「まず、金貨を拝ませろ!」


 盗賊の親玉らしき、髭面の男が声を張り上げる。


「いいだろう!」


 マクベス教官が、マジックバッグから白金貨をすくいあげてみせた。


 スカーレットバレットの大剣士、茜さんがマクベス教官からマジックバックを受け取り、人質交換の場所へ向かおうとする。


「おっと、そこの特級ハンターさん方は動くなよッ! 人質の命が惜しいならな!」


「そこのメスガキ。お前が金貨を運んでこい」


 野郎。ふうちゃんを運び役に指名しやがった。


 この時、この瞬間まで、正直なところ俺はどこか他人事だった。『特級ハンターの面々が、サクッと人質を救出して終わり』、そんなふうに考えていたのだ。


 その思いが吹き飛んだ。


 ふうちゃんは接近戦は本当に弱い。俺との戦闘訓練では、接触した瞬間に負けを認めるレベルなのだ。


 一応ふうちゃんも対刃物訓練や暗器対策等の戦闘訓練を受けているし、身体強化魔法も多少は使えるので、盗賊相手なら、数人ぐらいまでは素手で倒すことは可能だろう。


 とはいえ、30人は無理だ。恐怖にすくんで動けなくなることは想像に難くない。


『転生者』の異端審問官は、恐怖に負けず死地に飛び込むものが多い。なにしろそうやって失敗し、転生したものが異端審問官になるのだ。だけど、現地人の異端審問官はそうじゃない。これは『現地人の異端審問官が臆病だ』というわけじゃない。転生者の異端審問官が異常なのだ。なにしろ、皆一度、何かを救って命を落としているんだからな。


 ふうちゃんも、現地人。恐怖に面したとき、普通に怖がる女の子なんだ。

 ふうちゃんの足が震えている。


 こいつらは『敵』だ。


 俺は、呼吸を整え、身体強化魔法LV6アクティブを発動した。いざとなったら、俺一人ででも、盗賊団全員ぶっ潰してやる。


 感覚が強化されていく……。


 ロブとスカーレットさんが物陰に隠れ、射撃準備をしているのが伝わってくる。


 『脈拍を遅く、呼吸は深く』、そんな気配が伝わってくるのだ。レベル5のときには、なかった感覚だ。


 俺は深呼吸して心を落ち着ける。


 人質がふうちゃんの位置まで歩いてきて、すれちがい、ふうちゃんが人質の元いた位置に歩いていく。


 時間にしたら、わずかに数十秒だが、緊張を多く含んだ空気のせいで、ひどく長い時間に感じられた。


 盗賊団の親玉が、ふうちゃんを後手にとり、顔に大型のナイフを突きつける。その動作は、まるでよどみなく、傍目に見ても、転移魔法で介入する隙なんかなかった。


 盗賊団の下っ端が金貨を数えだした。10枚づつ、白金貨を積み上げていく。


「親分。たしかに白金貨300枚ありますぜ」


「お前たち、妙なまねをするなよ。この子の命が惜しいならな」


 盗賊の親玉が俺たちを牽制するように、グルッと回りを見渡しながら言った。


 そのナイフを降ろせよ。クソ野郎。


「親分。そいつ、かなりの上玉ですぜ。アジトに持ち帰ってヤッちまいませんか」

「そりゃいいな。腱でも切っておくか」


 ふうちゃんがひどく怯えた顔をしている。顔が、恐怖に青ざめていく。


「うぉおおおお!」


 気を引くために声を上げて、俺は全力で走り出した。

 盗賊共が殺気立つ。盗賊の親玉が、ナイフをふうちゃんの首筋に当てようとする。


 くそっ! 間に合えッ!! 俺はナイフの軌道に右手を突っ込んだ!


 ターン!


 次の瞬間、ロブが盗賊の親玉のナイフを狙撃し、ナイフを弾き飛ばした。


 この局面で、一撃で決めるか! さすがロブ。俺の仲間は、最高だ!!


 ふうちゃんがしゃがみこんだ。恐怖のあまり、動けないようだ。


 ロブのおかげで最悪の状況は脱した。でも、まずい状況には違いない。


 バンッ!


 ロブのものとは違う銃声!? 次の瞬間、ロブの銃が暴発した。ロブが手を血まみれにしている。


「ロブ! しっかりしなさいッ!」


 アシュリーがロブのもとへ駆け寄った。


 何が起こった!? 敵にもライフルを持った奴がいるのか!?


 バアンッ!


 空中で火花が散った。信じがたいが、スカーレットさんが、敵のライフル弾を撃ち落としたらしい。


 今は考えている場合じゃない! 俺は俺にできることをやらないと!


 俺は、いきおいのまま盗賊団の親玉を殴りつけた。


 親玉の顔がクシャッと潰れ、歯が5本飛び散った。


 盗賊団の親玉が、周りの盗賊を4人ほど巻き込んで数メートルぶっ飛んだ。景色がゆっくり流れていく。


 すッとろいんだよ!


 俺はふうちゃんの手を引き、起こす。


「ふうちゃんは絶対に守る。後ろにいて」


「りんぞーさま!」


 力強く声を掛けると、うなずいたふうちゃんの震えが止まった。


「ボスがやられたッ!」

「野郎ども、殺っちまえ!!」


 盗賊が声を荒げるのと同時に、レッドさんが、茜さんが、盗賊団に突撃をする。


 人質の青年の方を見やると、マクベス教官と紅さんが両脇を固めている。


 俺は、安心してふうちゃんに近づく奴を片っ端からぶちのめしていく。


 形勢不利と見るや盗賊たちは、逃走を試みたが、逃げ出そうとする盗賊の足を、ばんばんスカーレットさんが撃ち抜いていったため、全員の捕縛に然程時間はかからなかった。


 盗賊団が全員捕縛された瞬間、俺は背後に龍の羽ばたきのような気配を感じた。


 飛竜の他に、人の存在を感知する。


 3人か?!


 コイツラも、不可視化の勇者のような力を持っているのだろうか。姿が見えなかった。


 ちくしょう。絶対にいつか借りは返すぞ!


 俺は気配のする中空を睨みつけた。


 『赤壁』――レッドさんが、けが人にヒールオールをかけていく。

 ヒールオールの威力は凄まじく、ロブの手はたちどころに治り、人質の青年の記憶も、完全ではないものの、喋れる程度まで回復をした。


 まさか欠損を治すだけじゃなく、ぶっ飛んだ記憶の回復にも有効だなんて。


 すごい魔法だな。


「誰が君をさらったか、覚えているかい?」


 俺が意識を取り戻した人質の青年に尋ねると、青年が口を開く。


「誘拐の実行犯は、龍騎の勇者! ルナ・ルミエル殿です」


 龍騎の勇者で確定、か。あいつらは、文字通り姿を消す手段を持っている。諜報部に、頑張ってもらわないとな。龍騎の勇者、絶対捕まえてやるぞ!




楠木麟三LV14

異世界探訪者LV3

事象魔法LV5

軽業師LV1←NEW

格闘LV5


所有スキル

『崩壊』・『逆行』・『停止』(事象魔法)(リキャストタイム24時間)

異世界転移(リキャストタイム21日)

棒高跳び、綱渡り(軽業師)←NEW

身体強化魔法(パッシブLV5、アクティブLV6)←NEW


支配領域3RU


雪代双葉LV14

ファーメルの巫女LV3

時空魔法LV4

重力魔法LV4

起源魔法LV2

異世界探訪者LV1


所有スキル

魔力弾、ファイヤーボール、アースランス、アイスジャベリン、ウインドブレード

ファイヤーウォール、アースガード、アイスフィールド、ウインドストーム

クリアブラッド、ライト、フラッシュ、ライトニングプラズマ(属性魔法)

ヒール、ヒールプラス(回復魔法)

クリーン、アンチポイズン(生活魔法)

無限格納(時空魔法)

重力場生成、圧縮、浮遊(重力魔法)

エアコン、重力ジェット(起源魔法)

身体強化魔法(パッシブLV2、アクティブLV3)


支配領域150RU


ロバートLV15

レンジャーLV8

からくり士LV7


所有スキル

探索、罠解除、解錠、暗殺、忍び走、瞬歩、罠生成、狙撃(レンジャー)

機械操作、手ぶれ補正、集中、修理、道具生成、操り糸(からくり士)

身体強化魔法(パッシブLV4)


支配領域300RU

読んでるぞー。おもしろかった。誤字脱字を見つけた。ここが変だよ。

とっとと続き書け等、思われた方は、評価、ブクマ、コメント、

レビュー等いただけるとうれしいです。


活動報告に各話製作時に考えていたことなどがありますので、

興味のある方はどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ