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爆発の勇者を追え

 ファーメル教国、ファーメル大聖堂。異端審問官専用ロビーにて。


 ロビーには、ビリー、ブリジットさん、レミン、俺、ふうちゃんが集まっている。


 全員が円卓につくと、おもむろにビリーが語りだした。


 あっ、サヤさん。コーヒー、どうもありがとうございます。


 おれはサヤさんにぺこりと会釈する。サヤさんが軽く手をふってくれた。


「西の隣国、コルベスト王国で政変が起こったのは、知っていると思うが、実はあの話には問題点がある。コルベストの筆頭宮廷魔術師ポイロンは、レアスキル、転生召喚持ちだったんだ」


 ぐびぐびー。


 相変わらず、コーヒー美味しい。


「転生召喚。政変を起こしたのは、異世界からの転生者ということですか?」


「そう、その者は、異世界の知識と、爆破のスキルを持っていると予想される」


 異世界の知識って、地球のか?


「そいつは、転生したその日のうちに、宮廷魔道士6人、騎士35名、侍女8名、王族7名を殺害したらしい。治安が良いことで有名なコルベストでだ」


「転生者が、なんでそんなことを?」


「それは本人に聞くしかないが、法律も違う、モラルも地球より低い、チートを与えられているとくれば、好き勝手、自分のルールを振りかざして、むちゃするやつは多いんだぜ」


「そういうものか」


「そういうもんさ。だから、オレたちみたいな異端審問官が必要になるのさ」


「治安が良い国なら、政変でも、内乱は起こらないのかな? その転生者の対処は当然必要として、どさくさ紛れに侵略を狙った周辺国と、コルベストが緊張状態になるんじゃないか?」


「ファーメル教国はそんなことしません」


「うち以外の国さ」


「コルベストは、大公が即日王座につき、軍部を掌握した。周辺国はとりあえず様子見だな。無政府状態は避けられたらしいが、立て直しに手一杯で、犯人探しが進まんそうだ。しかし、この重大事、犯人をすぐに挙げなければコルベストのメンツが潰れる。そこで国教という縁を頼んで、ファーメル教国に、異端審問官派遣を要請してきたわけだ」


「このメンバーが呼び出されたということは、わたくし達が、その派遣される異端審問官というわけですね?」


 ブリジットさんがいった。


「ああ。今回の敵は危険だ。爆発の射程や効果時間を調べた上でなお、慎重に戦う必要がある。近距離で強力な力を持つリンゾー、たくさんのことができる双葉、超長距離索敵できるレミン、回復のエキスパート、ブリジット。出せる戦力で一番安全な編成を選んだつもりだ」


「敵の情報はどれぐらい集まってるんだ?」


「犯人の年は30代ぐらい、身長は170cm前後、痩せ型、黒髪で東洋人風。思想は強烈な死刑廃止論者だそうだ。ここまでが確定情報だ。以下は推論を含むので、各々判断してくれ。


 ・周辺諸国は皆死刑がある国なので、犯人が他国に渡った可能性は低い。

 ・犯人が市中に逃れてからは、安息日に国内の観光地で不審な爆発死が起きている。

 ・諜報部では、犯人は首都コルベスタに住み、平日は仕事を持ち、安息日は観光客に紛れ、貸

衣装を着て、人殺しを行っているものと判断している」


「ちょっとまって! 貸衣装っていうのは、なに?」


「返り血を防ぐためかもな」


「つまり、コルベスタ都心部付近の貸衣装屋のある観光地で、今まで事件が起きていないところを張ればいいということか」


「そういうことだ。あとで、脳波をかき乱して魔法を使えなくする捕縛用首輪と、事件発生日と発生場所、貸衣装屋のある観光地に印をつけた地図を配る。参考にしてくれ」


「敵の能力の詳細は?」


「触れなくても爆発できる爆破の射程は距離14RU以内、つまり、凡そ半径15m以内とみられている。恐るべきことに本人の近辺で爆破をさせても本人はダメージを食らわないらしい。時間差で発動する能力や条件付きで発動する能力を保有する可能性は不明。王城の事件の生存者によると王城の事件の時点では、そのような力はなく、単に自分の周囲で爆発を起こす能力だったらしい」


 ごくり。誰かがつばを飲み込む音がした。


 実際、恐ろしい力だよな。時間差で爆発できる能力とかだと、対処が大幅に難しくなる。


「能力の性質からすると、雨風で性能落ちそうですね。安心してください。りんぞーさま。たぶん、風魔法で完封できますよ」


 にっこり笑って、ふうちゃんが言う。


 俺は赤龍戦でふうちゃんが龍のブレスを抑え込むシーンを思い出した。緊張がふわっと解けていくのを感じた。本当にこの子は頼もしいな。

・用語解説

安息日――ファーメル教国の安息日は、日曜日。

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