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さすりん

 さすなろをすると、読んでもらえると聞いてやった。今は反省している。

 赤龍の解体がおわり、龍鱗が近隣諸国へ高額で売れたことを受け、ファーメル教国では、住民への大規模な還元が行われていた。


 翌年の税率を10%減らすための予算。教会の一年分の運営費、それらを差し引いた上で、余った金額の一部が、パーティーに当てられたのだ。


 5万人収容できる大ホールは、既に人で一杯で、出店が出て昼間から賑わっている。今夜は、赤龍の頭のお披露目とドラゴンステーキ、龍の串焼き、酒が振る舞われるパーティーだ。


 俺たち異端審問官もステージで食事を摂るために席についた。


「まず、法王より、お言葉をいただきます!」


 ローブを着たザビエルヘアーのお爺さんが宣誓を行った。


「ファーメル教国は、来年一年、すべての税率を10%減じることを女神ファーメリア様に宣誓する」


「うぉぉぉぉおおおお!! 法王さまー!」


「最高だぁ!!」


「すてきー!!!」


「光ってるー!」


「続きまして、倒されたドラゴンのお披露目です! このドラゴンは、トゥーロの村を襲い滅ぼし、人々を恐怖のどん底に陥れました。しかし、我々人類はこの恐怖を乗り越えたのです! 今日我々が、平和にお酒を飲めるのも、剣の勇者と異端審問官のおかげです!」


 車輪のついた台がステージの前に現れ、カーテンを取られると、龍の首が姿を現す。


 スポットライトが、龍の首を、その威容を、くっきりと照らしだした!


「うわー! 勇者様ー!!」


「怖ぇえ!! あんなもんに立ち向かえないよ!」


「でけぇ!! あれが龍かよ」


「なんて恐ろしい!」


「ふてぶてしい顔してるぜ」


「こいつが俺のいとこを、……うっ」


 様々な声が聞こえてくる。


「剣の勇者、出雲いろはです。この度の龍退治は、ステージにいる異端審問官の力によるところが大きい。龍を退治し、皆を守るために戦った、異端審問官たちに、皆さん、どうか、盛大な拍手をもらえないだろうか?」


 パチ……パチパチ……パチパチパチ……パチパチパチパチパチパチ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!


 最初は、ポツポツと始まった拍手が、会場全体に伝播し、やがてその音は地面を揺るがすほどの万雷となった。


「異端審問官、最高ぉ!」

「異端審問官、最高ぉ!」

「いたもん、最高!」

「いたもん、最高!」


「いたもん!」

「いたもん!」

「いたもん!」

「いたもん!」


「うぉおおおおおおおお!!」


 俺はふうちゃんの目の前にあるお酒をさり気なくソフトドリンクと取り替えて、お酒を飲み始めた。


 サヤさんが、カクテルをシェイクしている。


 胸が波のように揺れている。たまらん。


 ブリジットさんが御酌してくれたので、ありがたくいただく。おいしい。


 あれ? 司会の人がこっちを見てるな。


「……、次に、ドラゴンを仕留めた異端審問官のリンゾーさんに、一言いただこうと思います!」


「俺だけの功績ってわけじゃないし、とどめを刺したのはペリー……」


「なに言ってるんだリンゾー。君がいなければドラゴンは倒せなかった。君の功績だリンゾー!」


「いってこい! リンゾー!」


 仲間たちの声に押され、俺は壇上に上がった。


「みんなのおかげでドラゴンを倒せました! みんなどうもありがとうッ!」


「うぉおぉおおおおお!」


「ありがとうリンゾー!」

「今度ウチの店に来てくれ! リンゾー! たらふく飲ませてやるぞー!」

「うちにも来いよリンゾー! くいもんあるぞー!」

「リンゾー、かっこいー結婚してー!」


「さすが、りんぞーさまです!」

「さすりんー!!!」

「さすりんー!!」


「さっすりん!」

「さっすりん!」


「さすりん!」

「さすりん!」

「さすりん!」

「さすりん!」

「さすりん!」


「わぁあぁああああああああ!!!」


 席に戻っても、『さすりん』コールは、続いている。


「リンゾー君。腹筋さすってみてもいいかな?」


「イシュカさん。酔ってます?」


「ボク、男の人の硬い腹筋に触るのが好きなんだ。だめ?」


「いいですよ。触ってください」


 フッ。


 俺は腹筋に力を入れる。


「私も触ります」「私もー」


 サヤさんとブリジットさんが触ってきた。


「私も触ります」


 ふうちゃんが太ももに触ってくる。


 くすぐったい。


「ちょ、だめ、やめて。ちょっと、おいっ!」


「もうちょっと、触りたいです」


「ふうちゃんやめて。ふうぞく行かなきゃならなくなるだろ!」


「風俗か。そうだリンゾー。おわったらケモミミキャバクラに、2次会に行かないか?」


「ヘンリーさん。ケモミミには、ペリーを誘ってください。あいつ猫好きなんで」


「やめてくれ、リンゾー。異端審問官全員が風俗に行っているように思われる。パートナーに頼んだらいいじゃないか。私はいつもフィオに頼んで……」


「しーっ! ペリー! しーっ!」


 フィオラは真っ赤になっている。

 うん、そこのリア充、爆発しろ!


「ロブはどうよ?」


「僕は毎晩、バターつけて顎が痛くなるまで舐めさせられてますよ?」


「ロブ! あることないこといわないように! 首しめるわよ」


 アシュリーも真っ赤だ。


「あっ!! アシュリー、今日は首輪もですか?」


「やめてよ! 私は単に犬が好きなのよ!」


「ヘンリーさん、犬好きだってさ? 立候補してみたら」


「オレは狼だし、夫婦喧嘩は犬も食わんよ」


「違いない!」


 その日は、仲間たちとバカ話をして、夜遅くまでもりあがったのだった。


 ちなみに龍の肉は、鶏肉系で結構美味しかった。もっと筋張ってるかと思ったよ。

バター――牛乳から分離したクリームを練って固めた食品。

     バター犬を検索してはいけない。

     あくまで、バターロブなのだ。

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