81話 新素材
「カイトくんのは便宜上呪いって呼んでいたけど、呪いとはちょっとだけ違うんだってことは前に話したよね」
ウィルはまるで先生が大人数の生徒に向かって勉強を教えるみたいに、淡々と話し始めた。
「魔物はカイトくんから発せられるヘファイストスの匂いに釣られてるから、ようはその匂いを閉じ込めたりすればいいんだよ。ちょうど臭い物に蓋をするようにね」
ウィルはそう言い切った後、”上手いこと言っただろう座布団をくれても良いんだよ”とでも言っているように思えるほどの渾身のドヤ顔を披露していた。座布団に関しては多分僕の主観でしか無いと思うが、それほどのものということだ。
「と言うことは……」
「そう、僕とさくらちゃんの魔法でその匂いが外に出ないようにしたんだ!」
「素材に関してはどうなったの?それだとダンジョン内でのいざこざは大丈夫だろうけど……」
魔物の素材は鉱物よりも遙かに優れており、それが武器、防具などの完成品になると、同じ人が造った場合、雲泥の差が生まれる。カイトはそれでも鍛冶師ギルドである程度の地位を確立し、実力を示してきたが、やはり心の何処かでは悔しい思いをしているのだろう。
「それは……今更言うんだけど、魔物の素材を加工して鉱物に錬金する――魔鉱石でどうにかなるかな」
「――魔鉱石?」
この世界で武具の素材として使用できる物は、鉄や銅、金などの鉱物と、魔物を倒したときに得られるドロップアイテムの二つが通説として知られている。それ以外となるとギルドの教則本や冒険者としての心得なるものには一切明記されていなかった。
僕やさくらはもちろんのこと、今目の前にいる素材のプロと言ってもいい鍛冶師であるカイトでさえ疑問符を頭に浮かべていた。
「まぁ知らないには無理ないかな……長い間隠されてきたんだし」
「何で隠されてきたの?」
その理由は僕が思うに数個ある。
余りに強力な物過ぎて人間の手には扱える物ではない。もしくは、扱えるが凶悪で世界の根幹を揺るがすことになるかも知れない。それか、誰かが自分の利益やその他何かしらの意図があって秘匿した。
おそらくそんなところだろうが……。
「そうだね、真冬くんが思っている通りだよ。魔鉱石で作った武具があまりに強力無比だから神が魔鉱石の存在を徹底的に隠蔽したんだ」
「でもそうすると、ウィルが前に言ってた話と辻褄が合わなくならない?」
ウィルは神がこの地を離れる際にダンジョンを創造し、そこに魔物を棲ませたと言っていたので、魔物が出現した時点を神がこの地を離れた時と同時期と考えると、魔鉱石はいつ頃から出現し、秘匿しなければならなくなったのかがチグハグになってしまう。
「僕はダンジョンを創って魔物をそこに“棲ませた”って言ったよね」
ウィルは“棲ませた”という言葉にアクセントを付け強調した。
そして、その強調のおかげで僕は前提が間違っていることに気が付いた。
「――――」
僕は神がダンジョンを創ったと同時に魔物も一緒に創り、そこに棲まわせたと思っていたが、
「――魔物はダンジョンの前からいた!」




