71話 トンネル
僕たちが暗闇に足を踏み入れた瞬間、トンネルのような真っ直ぐ続く道が、まるで来訪者を誘うかのように両壁の等間隔に唐突に現れたろうそくのような儚く、今にも消えそうな光で灯された。
「何か不気味だね」
フランさんが零したその言葉は、誰に何かしらの反応を求めたものでは無いと思ったが、僕も同じ事を思ったので無言で頷き、同調を示す。
そして頷いた後、人間が使用可能な普通の魔法よりも遙かに勝っている自然魔法を使えるフランさんでも、いくらみゃーこに備わっている野生の勘が見えない攻撃の認知を手助けしたとしても、僕と比べると二人のステータスの低さは歴然であり、下手したら致命傷になりかねないと考え、僕が先陣を切ることを小声で伝える。
「おそらく後ろからは何も来ないと思うので、フランさんとみゃーこは大体僕の3歩後ろぐらいを付いてきてください」
僕がそう言うと賢い二人はすぐさまに状況を察したのか、静かに頷いた。
(真冬さん、念のためステータス調整を為されてはどうでしょうか)
(そうだね、そうするよ)
【ステータ(ちょっと待ってください)】
一応信頼しているとは言え、ステータスはそう簡単に易々と見せるものでもないと思ったので、フランさんに見えないように背中で上手く隠しながらステータスを開こうとしたら、ナビーに止められた。
(……どうしたの?)
(ステータスですが、おそらく真冬さんはもう言葉にして唱えなくても、見ることが出来ると思います)
(どういうこと?)
ステータスは己の身体能力を数値化し表したもので、それを見るためには何かしらの呪文が必要なのではないだろうか。そして、その呪文とは今し方僕が唱えようとした文言に他ならないと思っていたが……
(確かに今真冬さんが思っていることも一理ありますが、もともとステータスは神が人間に与えたものなので、そうではありません。ステータスとは人間の魂に刻まれたもので、それを数値化し具現化するのがステータス・オープンの魔法なのです)
(って言うと、唱えなくてもみれるって事?)
(そういうことになります。ある程度経験を積んだものなら、魂に語りかけることでステータスを外部に表示しなくても確認することが出来るはずです)
僕はナビーの説明通り、自分の魂に語りかける。
魂に語りかけるとはどういう感覚か言葉にし辛いが、自問自答をひたすら繰り返すときの感覚と非常によく似ていた。
――自分はどうしたいか。自分は何をしたいか。自分はどうするべきか。自分は何をするべきか。
それら正解の存在しない漠然とした質問を、目には見えなく存在さえするのか分からないが、真っ暗なトンネルの先にいるであろう自分に、飽きることなくただずっと語りかけているような。
そして、時間にしては10秒ほどだが、空気のような質問を数え切れないぐらい繰り返すと、
【ステータスオープン】
名前 神宮寺 真冬
種族 人族
グレード2
レベル26→31
HP 3045/3045→3105/3105
MP 2183/2183→2241/2241
STR 1247→1284
DEF 1005→1027
INT 805→842
AGI 4134→4158
CHA 764→846
LUK 880→880
SP 516→540
スキル 能力向上 導く者 言語理解 魔力操作Ⅱ20/100→24/100 騎士剣術 15/100→24/100 能力低下Ⅱ5/100→6/100 精霊魔法5/100→7/100
魂に語りかけることが成功し、ステータスを外に出すこと無く己の内で確認できたおかげか、自分の身体が本当の意味で自分の身体になった気がして全身に鳥肌が立つのを感じたが、気持ちを切り替えナビーにアドバイスを仰ぐ。
(ナビー何に振るのが良いと思う?)
(やはりLUKに振るのが無難かと……)
(分かった、ありがと)
LUK 880→6280
SP 540→0
ステータスの調整が終わり、そのまま両側が妖しい光で灯されているトンネルのような場所をしばらく歩いていると、一際輝く光が前方に見えてきた。おそらくあの光がこのトンネルの終点なのだろう。
「おそらくあそこが終わりです。何が起こるか分かりませんので、気を引き締めてください」
用事があったとはいえ遅れてしまったお詫びとして明日も更新します




