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51話 足りないもの

頂いた感想が嬉しかったので(っ'-')╮ =====

「僕もつい最近までは、自分なんかが……とか、自分に出来るはずが無い……って、卑屈になって、努力もせずに最初から諦めて、(あまつさ)え殻に籠もって誰かに助けられるのをひたすら待っていたんだ。でも、ある時それじゃ駄目なんだって気付いたんだ。殻に籠もってても何も変わらないんだって。確かに、外に出るのは怖いし足が竦むと思う。でも、外の世界には、カイトみたいにこっちまで頑張ろうって思えるほど熱さを持っている人だったり、フランさんみたいに自分のことよりも他人の大事を考えてくれる人だっていて、案外悪くないかもって思えたんだ」


 その言葉には、昔の真冬――弱かった真冬が、もし何処かで聞いているのなら周りにこびり付いた殻を破れるように、弱気になっているカイトがいつもの自信を取り戻せるように、という思いが十全に、十分に詰まっていた。


「だからさ、カイトだけでは重くて背負いきれなかったら、僕も。僕が加わっても無理だったら、さくらも。それでも無理なら、フランさんやウィル、アルフさんも一緒に背負えば良いんじゃ無いかな」


 ――さくらが僕にそうしてくれたように。


「――カイト、僕らと一緒に戦おう!」


 真冬は、最後の台詞を言い終わると、おもむろにカイトに向かって手を伸ばす。

 それはまるで、カイトが殻を破り外に出るのを待っているかのようだ。


 カイトは俯いていた顔を上げ、その差し出されている手の位置を確認するように一瞥し、自分の手で真冬の手を離さないようにしっかりと掴んだ。

 真冬の言葉が響いたのか、前を向くその面持ちには弱気などは一切感じ取れることは無く、やる気に満ち溢れていた。要するに、いつものカイトに戻ったということだ。


 真冬はがっちり掴まれた手と、顔つきが元に戻ったのを確認すると、まだカイトの身体に(まと)わり付いている残りの殻から引き剥がそうと、勢いよくその手を引っ張り、外界へと連れ出した。


「――やってやるよ!!」


「うん!……それでまず何が足りない?」


 その確かな決意に思わず顔を綻ばせてしまった後、杖を作るにはまず何が足りないのか整理することにした。

 少し前のカイトの発言から、材料が潤沢にあることは確認しているので大丈夫として、後は、それを加工できる技術と場所が必要だとは、鍛冶には門外漢だとしても容易に推測出来る。


「そうだなー……技術は大前提として、後は圧倒的な火力に耐えられる炉だな。おそらく俺のところじゃ溶かすどころか、赤熱させることさえままならない」


 カイトは、自分が持っている炉を悔しそうに見つめながら発した。長年の間苦楽を共にした自分専用の炉には、きっと様々な思い入れがあるのだろう。

 何とかしてカイトの炉を引用出来ないものかと考えていると、ある妙案を思いつく。


(ナビー、付与魔法で強化することってできないの?)


 妙案とは、カイトの炉を付与魔法もしくはそれに類似した魔法で、もっと高い温度に耐えられるように出来るのではというものだ。

 もちろんまだ付与魔法を手に入れていないが、願っていればダンジョンで見つかるかもしれない、という確信寄りの希望的観測だ。


(それは出来ます……けど、実用レベルまで達するには、少し時間が掛りますよ?)


(僕に良い考えがあるんだ!任せて!)


(――ッ!そのやり方なら、もしかしたら……)


 ナビーは僕の考えを読み取ったのだろう、虚を突かれたような声を出した。まあ実際抜け道のような方法なのだから、神様には予想も出来ないのは仕方ないだろう。人間の悪知恵ということだ。


「炉の方は何とか出来そうだから、少し待ってて!」


「あとは火力か……どうやって高温を生み出すか……」


 状況を詳しく聞いてみると、ここにある炉では1500℃強ほどまでしか耐えられるように出来ていなく、それに付随して設備的、現実的にもその位の温度しか出せないという。そもそもの話、この世界では1500℃もあれば十中八九事足りてしまうので必要ないとのことらしい。今までの素材からすると、という条件付きで。


 二人して課題の消化方法について悶々と悩んでいると、突如として聞こえてきた少女の声が、二人に課せられた題目の消化を担うことになった。

面白いと思っていただけたら、ブクマと評価をぜひお願いします!


感想も一言でもなんでも良いので、どしどし送ってください!

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