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38話 昔話Ⅱ

 しかし、あともう一歩いや、あと半歩で討ち破れるとなったところで、然る人は神でさえ発動困難な世界超越の魔法を、魔神の力と引き替えに行い、この世界から姿を消したのだ。


 ――この一連の出来事は、第一次世界戦争と名付けられた。


 自分たちの手で引導を渡す事が出来ず、何処かに逃げられてしまったことは生涯引きずるほど心残りに思うが、逃げられる寸前は風前の灯火とも言える状態、かつ世界超越の魔法で底知れぬほどの力を代償にしたので、もうこの世界に戻ってくることはないだろうと、神たちはそう考えていた。


 故に、神たちは被害の修復と、二度と同じ轍を踏まないような施策を、早々に着手した。


 まず手始めに、人と精霊を隔離するため、精霊の里を精霊にしか分からない場所に作成した。

 これは精霊と人の接点を強制的に無くすことで、精霊の悪用さえ出来無いようにしてしまおう、という魂胆だ。精霊たちは今回の件で、人間に対して不信感が募り募っていたので、そのことで表面上は反発を見せなかった。


 だが、中には人と精霊が恋仲になり、結ばれた夫婦もいたので、その夫婦たち専用に新たな里も作った。その夫婦の子孫はエルフと呼ばれ、後世でも魔法のプロとして人から頼られ続けている。


 その次に、中に魔物という獣に近いものを棲まわせたダンジョンを七つ作り、その攻略という目標を与えてあげることで、人間同士の無益な争いを起こさせないようにした。

 そして、ダンジョン内の魔物を倒すと、魔石という魔力(マナ)がこもった石のような物と、その魔物にまつわるアイテムを落とすように設定し、後々職業として確立出来るようにもした。


 それらとは別に、人が飼っていた猫や犬などの動物たちの中から、望んだ動物には人の姿に変えたりもした。第一次世界戦争を未然に防げなかった神様から、何の罪も無い動物たちへの罪滅ぼしのつもりだった。

 ちなみにこの時、人化した者たちは、後に獣人と呼ばれるようになった。


 そうしたことがあり、真冬たちがいる未来の種族体系が完成した。


 そして全ての事が終わった後、神は自分たちの所為で争いが起きてしまった、と負い目を感じていたので、自分たちの故郷――神域へと帰り、下界の様子を文字通り、高みの見物をすることにした。



 全ての種族がそれぞれの場所に居を移し、独自の体系を築き始めた頃、多種族と完全に隔離された精霊の里のことを、唯一不満に思っている精霊がいた。――それが光の大精霊、ウィルだ。


 光の大精霊だから、当然光を扱うことは誰よりも長けていた。

 その他の追随を許さない長所を存分に生かし、色とりどりの光で綺麗に電飾したり、光を集束させて通常の方法では切れない物を切断してあげたりなど、人間が喜ぶことをしてあげていた。

 電飾の時は、感動したのだろうか涙を浮かべながらお礼を言い、物を切ってあげたときはお礼はもちろんのこと、おやつなる物をくれた。


 その人間の正直さや義理堅さに、なによりもウィルの心はくすぐられ、ウィルは人間のことがどの神よりも、どの精霊よりも好きになっていた。


 それをたった一人の人間の非道で人間と永久的に隔絶され、この里で缶詰にされていることに、ひいては里の存在自体に不満を持ってしまった。


 その不満を精霊の長――聖霊に伝えたところ、“その考えはまたこの世界に終焉をもたらす”と言われてしまい、無慈悲にも監禁までされてしまった。

 そして、監禁されたことにより煮えたぎっていたウィルの不満は最高潮へと達し、怒りのまま監禁場所から逃げ出し、遂には精霊の里から出た。


 「――その時に僕は、本名のウィル・オ・ウィスプを捨てて、名無しの精霊になったって訳だよ」


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