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29話 決着

(それはね。――僕と合体するんだ)


「――へ?」


 真冬は精霊に突然変なことを言われ、思わず思念による念話ではなく、口から直接情けない声を出してしまった。


「急に情けない声でどうしたんだ?俺に殺される決意でも出来たのか?」


「そんなわけねーだろ!」


 真冬は鍔迫り合いをやめ、精霊の言葉足らずな作戦を詳しく聞くために、ガンダから距離を取った。


(合体ってどういうことだよ)


(精霊の僕は実体がない。だから力を十二分に発揮できないんだ。そこで実体のある君に憑依することで、僕の力を余すことなく譲渡することが出来るんだ)


(俺……乗っ取られるとかないよな……?)


 テレビのエクソシスト特集とかで祓われる人が、元はおとなしかったのに手が付けられないほど暴れるとか、ミイラ取りがミイラならぬ、悪魔祓いが悪魔になるやつ見たことあるぞ。


(さっきも言ったけど、僕は憑依するけど力を譲渡するだけだよ。とりあえず今のままじゃ――負けるよ)


 精霊はそう言うと心の焦りを感じ取ったのか、間もなく剣から光の状態で出てきて、その光のまま胸に入ってこようとする。


「新しい魔法かー?させねーよ!!」

 ガンダはそれを阻止すべく、10mほどの距離を一瞬で詰めてくる。


 ――が、真冬と精霊の憑依の方が、一瞬早かった。


【精霊魔法・憑依《エレメンタル・ポゼッション》】


 カァン――


 カランカラン――


 初めは何かが弾け飛んでいく音。次は、その飛んだものが地面に投げ出される音。いずれも、金属だけが出す特有の甲高い音だった。


 金属――剣の切っ先は、音の出所からはるか遠くのほうに逃げるようにして飛んでいった。


 その出所には、黄金色の光を全身に纏っている人影――真冬が居た。

 光は誰もが息を呑むほど神々しく、並大抵の人ならば跪かずにはいられないほどのものだ。


 「おい、こんなもんか?」


 武器を失った喪失感から膝を着き項垂れているガンダに、真冬は上から見下しながら声をかけた。


 「返事しないならこれで終わりだ。死ね……」


 全能感が身体中を駆け巡り強気な真冬は剣を振りかぶり、自分より遥かに弱者で抵抗さえも諦めているガンダの首に向かって、慈悲もなく振り下ろす。


 しかし、その無慈悲な刃がガンダの首に届くことはなかった。

 それは剣を振り下ろし、首の骨さえも撫で切るかと思われた瞬間、真冬が糸を切られた操り人形のように、支えをなくして気絶してしまったからだ。



 倒れた真冬の傍には、金髪の少女――精霊がガンダを見ていた。


「ふぅ、危なかった……。おい、ガンダってやつ!お前は本当に人を傷つけるようなことはしてないんだよね?」


「――――」


 精霊は剣の中から、真冬とガンダの戦いの全貌を誰よりも近くで見ていた。またその後、憑依したことにより真冬の心情や考えなどの全てが、精霊に流れ混んでいた。だから、真冬の心の危うさを分かっている。


「それならもう真冬くんの目の前に現われないでくれ。お前を見るだけで真冬くんが今日の出来事を思い出して、心を壊してしまう。分かったなら早く行ってくれ!」


 真冬は今日初めて、人を殺した。

 悪徳貴族相手にとはいえ、|正当な手順を踏まずの善事《悪事》をしたことには変わりのない犯罪者なので、もし冒険者の誰かが殺したとしても、クエストにされているので罪に問われない。

 それどころかクエストなので感謝され、報酬さえ出るのだが、それでも、心が優しい真冬には殺人は重く、気を病んでしまうだろう。


 さっきはさくらとフランを何をしても守る、という気持ちが強かったので、大して気にしていなかったが、目が覚めたときに10人の人生を絶ったという罪悪感が重く圧し掛かってしまうだろう。


 そのことを精霊は危惧していた。


「ああ、わかった……」


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