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150話 味付け

 ――トントントン……


 コンマ一秒の僅かなズレもない等間隔で粒の揃った音が、台所に踊るように響く。


(その調子です)


 僕は今ナビーの指示通り、食材の下ごしらえをしている。何でも料理初心者ならば最初に食材を切って準備しておいた方が、この後の火を使ったりする調理の課程で、まごつかないでスムーズに事が運ぶという。


(それにしても包丁の扱いまでもが剣術と見なされるとは……)


 ナビー曰く刃物ならば剣術となり扱うときにはスキルの補正が掛かるらしく、そんな事を考えながらでも、包丁が木で出来たまな板を叩く音は決してズレないのだから、異世界のスキルは非常に便利だ。


 ちなみに、食材の何処に刃を当てて切れば美味しくなるかも分かるようになっているため、下ごしらえに関しては概ねナビーの指示無しで進められている。


「――――」


 それからも剣術スキルのおかげで下ごしらえは完璧と言えるほどまでのプロ顔負けの仕上がりで、大きさを揃えるところは寸分の狂いもなくぴったりで、逆に食感やアクセントを付けるために大きさを変える物では同じような物が一個もないように出来た。


 その仕上がりは自分でもびっくりするほどで、試しに同じ大きさになるように切った物を秤に乗せて一つ一つ量ってみる。


「我ながら凄い……」


 味が良く染み込むように表面積を大きくする乱切り。それは普通、大体同じ大きさに揃えるのだが、事今回に限っては大きさはもちろんのこと、重さまでもが完璧に揃えられており、自分でやったこととは到底思えなかった。


「――――」


 しばらく様々な食材を秤に乗せて、自分が行なったであろう神業に近い妙技に感動し、舌を巻いていると、


(早くしないとさくらさんたちが出てきてしまいますよ。折角下ごしらえを物の数分で行なったというのに……)


(ごめんごめん、ちょっと凄すぎて……。ナビー次は何すれば良い?)


 とりあえず食材の下処理は全て完璧に行なった。食材を切るという下処理は口当たりや食感を左右するところで、もちろんそれもおいしさを決める重要な一つの要素ではあるが、一番ではない。


 料理で一番重要な工程、それは味付けだ。


 甘味、塩味、酸味、苦み、うま味、以上の五つからなる味という物は、料理で一番重要な要素と言えるだろう。


 いくら食感が良かろうと、いくら口当たりが良かろうと、味という好き嫌いが一番ハッキリと分かる物の前には、些事に過ぎない。言うなれば味が美味しいからこそ、食感や口当たりが重要になるステージへと進めるということだ。


(――――)


 ここからは僕の力ではとてもではないが、どうにもならない。生憎味付けが上手く出来るようなそういうスキルを持っていないからだ。

 それに僕は基本的に食べられるものならば何でも美味しく感じてしまう舌を持っているので、味見して調整など出来ようにもない。


 なので味付け、その他食材に火を通す時間や方法などはナビーに指示を仰ぐのだ。


(そうですね……まずは――)

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