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147話 傲った末

 僕が目を覚ました時、隣にはさくらしかいなかった。


「身体の具合は大丈夫?一応アルフさんが治してくれたみたいだけど……」


 そう尋ねてきたさくらの表情は心配をしてくれているのは伝わってくるが、他にも思うところがあるような複雑な表情だった。


「不思議なほどに痛くも痒くもない……」


 気絶する前、あれほどまでに全身をくまなく打ちのめされたというのに、寝て起きたらそれが綺麗さっぱり洗い流されたかのように、何も感じないことが不思議に思えて仕方なかった。と言ってもそれは魔法のおかげであり、魔法の存在自体が摩訶不思議な物であるので今更だろうが。


「リリスさんに手も足も出なかった……」


 ベルーゼとは全く違う種類。


 ベルーゼが圧倒的なステータスの差による力を押しつけてくるのだとしたら、リリスさんは圧倒的な技術の差を見せつけてくる強さ。


「ステータスではそんな差が無いと思って気付かないうちに傲っていたんだ」


 ナビーからは僕のステータスの数値はトップに入るほどのものだと聞いていたため、それならばもしかしたら同じぐらいのステータスであるリリスさんに勝てるかも知れないと思い、勝ちに急いだ。


 そして、僕の稚拙な剣技と作戦は、リリスさんの圧倒的な技術と経験の前に打ちのめされた。


「私も……私もそれなりにやれるって自分で思ってた……でもアルフさんの治癒魔法を見て自分がどれほどちっぽけか嫌でも分かった。多分今回の傷を私が命を賭けて真冬を治癒したとしても、内臓の損傷だけは治せなかった」


 高い壁は余りにも近付きすぎたらただ高い壁と呆然としか分からなくなってしまう。その壁がどれ程高いのか、一回壁から離れて、そして客観視してみないと本当の高さは知ることが出来ないだろう。


 期せずして僕はリリスさんのステータスでは計り知れない技術力の必要性、さくらはアルフさんとの明確かつ想像できないほどの経験の差を知ることが出来たため、今回の一連の出来事は僕たちにとって非常に有意義な物となるだろう。


「――――」


 未だ傲っていた事による羞恥心や居たたまれなさから、リリスさんを筆頭にアルフさんやフランさんに顔向け出来そうにない。そのためどうしようかと考えていた所、窓からぼんやりとした光の塊が入ってきた。


 その光には見覚えがあり、一層光り輝いたと思えば見覚えから予想できた人物が現れた。


「身体の方は大丈夫そうだね。目が覚めて早々に悪いんだけど、アーティファクトを取りに行こう」


 光から現れた少女――ウィルはそう意気揚々に言った。


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