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121話 目が覚めると

「真冬、大丈夫!?」

「大丈夫かにゃ?」


 目の前には闇の中で僕の名前を何度も何度も懸命に呼んでくれた人物と、やけに人間味があって心配そうな顔をしている真っ白な猫がいた。


「さくら、みゃーこ……ありがと」


 僕のお礼に対してさくらとみゃーこが揃って軽く首を振るのと同時に、ピリピリと肌を刺すような波動がある方向から感じられた。


「あれは……ウィル?」


 何とか目を凝らして視認出来るほど遠くの方で、真っ白な光と真っ黒な闇が激しくぶつかり合っているのが見えた。その片方である温かくて優しくて眩しい光は、見覚えがあった。先ほど僕を守るように包み込んでいた光と同じだ。


 多分だが、あの悪魔の攻撃から(ウィル)が守ってくれたのだろう。


「そう、今ウィルちゃんが戦ってる。さっきまでは結構近くにいたんだけど、もう大丈夫って言って向こうの方に……」


 さくらは心配そうな顔をしながら、肌を刺す感じの発生源である力と力がぶつかり合っている場所を指さした。そして、先ほどからひしひしと感じる戦いの余波を身に受けながら今にも泣きそうな声で、


「ウィルちゃん大丈夫だよね……?」


 と、“大丈夫”と断言して欲しそうな表情で尋ねてきた。


 あの悪魔は希望という希望を闇で塗りつぶすほどの力を持ち、その力の天井は今の僕では計り知れない。対するウィルも力の一端を見せたことはあるが、それはほんの一部にしか過ぎず、こちらも未知数。


 正直僕もどっちが勝つか、全く分からない。


「分からない……でもどうにかする」


 さくらに啖呵(たんか)を切るようなことを言いつつも、何か誰もが唸るような秘策があるわけでは無いし、数キロ、下手したら数百キロ離れているこの場所まで戦いの余波を届かせるほどの、力のぶつかり合いに介入できる力があるわけでもない。


「――――」


 どうすれば良いか思い悩んでいると、


(真冬くん、やっと目が覚めたんだね)


 とウィルが念話を飛ばしてきた。その声はいつもの飄々としたものとはとても言い難く、悪魔との戦いで切羽詰まっていることが窺えた。


(ちょっと力を貸して欲しいんだ)


 僕がウィルと悪魔の戦いの場所まで行くにしても、距離的な問題から相当な時間が掛かってしまうし、かといってウィルがここまで来ると、さくらとみゃーこが巻き込まれてしまう。


(どうやって……?)


(ちょっと待ってて)


 ウィルがそう言うと間もなく、遠くの方で雷が落ちたのかと思うほど一際光が強まった。そして太陽ほどの光量と熱量を持つものの、常夜灯のように柔らかな光が瞬きの間に目の前に現れた。


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