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113話 暗中模索

 魔石を拾おうとした途端、目の前が真っ黒な布を掛けられたみたいに急に暗くなってから、僕はすぐさまさくらとみゃーこが一緒の場所にいるのか確認した。


「――さくら、みゃーこ、大丈夫!?」


「大丈夫にゃ」


「大丈夫」


 この暗転が何かしらの原因によるダンジョン内の転移だとしたら、僕たちがみんなバラバラに分断されることが一番まずかったため、距離感は上手く掴めないが少なくともさくらとみゃーこが声が届く範囲にいることは、不幸中の幸いと言えるだろう。


 ――僕らがいたあの場所はまだ4層辺り。転移系の罠はそんな低階層には存在しないはずなので考えから外すとして、この現象は一体。


 そんな風に今起っている状況を必死に分析していると、ポツリとさくらが呟いた。


「上に登っていってる気がする……」


 思わず出てしまった独り言のように呟いたその言葉を聞き、考えることを一時的に止めた僕は五感をフルに研ぎ澄ませた。が、さくらの言っている登っているような感覚は一切分からなかった。


「そう?何も感じないけど」


「上手く言えないけど……エレベーターみたいな感じ」


 暗闇の中なのでさくらの表情は少しも確認することが出来ないが、おそらくは気味悪がっているような表情をしているだろうと容易に想像が付くほど、声音にもそれが乗っていた。

 あまりそのことを口に出させ、さくらに変に意識させてしまうと何かあったときに瞬時に動けなくなってしまう可能性があると思った僕は、みゃーこに水を向けることにした。


「みゃーこは何か感じる?」


「何にも感じにゃいにゃ――ただ嫌な予感だけはしまくってるにゃ」


 みゃーこと同じく僕も、身の危険を知らせる警鐘が先ほどからうるさいほど鳴りまくっている。この暗転がただの目眩ましで終わるはずがないと。


「一応分かっているとは思うけど、何かあるかも知れないからすぐ動けるようにはしといて」


 この暗闇が明けた先では、この状況をセッティングした張本人が万全を期して待っているかもしれない。だからいつでも戦闘できるように構えとけ。僕は2人にそう伝え、この暗転の正体を探ることにした。


 ――おそらくこの中で唯一さくらだけが感じているらしい、エレベーターみたいな浮遊感が重要となる。


「――――」


 さくらにあって、僕とみゃーこに無いもの。


「魔法適正か!」


 急遽大きな声で出てしまった予想に、驚きと疑問が入り交じった2人の視線を受けながら説明する。


「僕とみゃーこが何も感じないのは魔法適性が低いからで、その点さくらはスキル賢者のおかげで魔法適性は高くなってるから、エレベーターに似た浮遊感を感じるんだ」


 そして自分で口にした浮遊感という言葉から、新たなひらめきを得た。そのひらめきは時間が経つのに比例して、自分たちがさらなる過酷な境地に立たされる確率が跳ね上がってくることを意味していた。


「ダンジョン内で浮遊感を感じるって事は、おそらく――僕たちは上の階層に飛ばされてる」


 エレベーターは乗ったことがある人の大半は分かるだろうが、初期の加速の浮遊感と、停止の時に掛かるGしか通常はストレスを感じないはずだ。しかしさくらが上昇している気がすると言ったのは、視界が暗くなってから多少時間が経ってから。

 そうするとエレベーター程度の加速ならばこの時点でもう浮遊感は感じないはずなので、僕たちはそれ以上の加速、そしてスピードで飛ばされていることとなる。


 魔法適正のあるさくらだけが浮遊感を感じて、魔王適正があまり無い僕たちが何も感じないのは、これが魔法によるものだからと容易に推測できる。これらは飽くまでもは状況証拠による予想なので間違っている可能性も多分にあるが、おおよそは合っているだろうと思っている。


 ――僕たちは誰かしらの魔法によって、ものすごい勢いでダンジョンの上に向けて飛ばされている。


 こういうときの頼みの綱であるナビーは、先ほどからさくらやみゃーコに話しかけている時や、状況を確認している時と平行してひたすら呼びかけているのだが、ナビーからは全く反応がない。おおかたこの状況を作った犯人によって妨害されているのか、封じられているのかのどちらかであろう。

 いずれにしても好意によって飛ばされていないことの証左である。


 そんなことを考えながら僕は、まだ姿と底力が見えぬ敵の対処法を必死に思案していた。


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