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109話 封印

 付与魔法を掛ける前と掛けた後では見た目の変化は一切無いので、とりあえずと思い、恐る恐る手に持ってみる。


「…………」


 見た目の変化同様、手に持ってみた感触も特筆すべき変化は見られなく、システム的なことに滅法強いナビーなら分かりそうなので、


「ナビー、何か変わったことはある?」


「ご存じの通り見た目は変わっていませんが、ひとまず真冬さんの付与魔法は成功しました。付与の状態としては封印――その効果は持ち主のステータス、並びに実力に応じて封印の効力が弱まることです」


「初期の強さはどの程度かな?」


 付与魔法を掛けたこれを、カイトに言われた通り鍛冶師ギルドに卸に行く場合、武具の強さはカイトの取り分や評価への直接的な決め手となる。なのでそれを代行者として行く僕が大まかにでも把握していないと、代わりに任された責任もあるのでいけないだろう。

 それにもしこの武具が、付与魔法で封印を施したものの、カイトがいつも卸していた物よりも圧倒的に優れていた場合も、封印を施した意味が余り感じられないほど薄れてしまうため、事前に持って行かないという選択肢も出来よう。


「真冬さんの付与する際のイメージがカイトさんから買ったあの剣に引っ張られたのか、カイトさんが直近で作った物よりも少しだけ上回っているぐらいです。これはおよそ成長という観点から見てもまだ常識の範囲内なので、このまま持って行っても真冬さんが心配していることにはならないと思います」


 ナビーが、カイトが一番最近作った物の強さをどうやって知れたか、非常に気にはなるが、未知の能力のおかげでこうして比較出来たことは明確なので、そこに関しては今はまだ触れないでおこう。そしてやり方に関しては目を瞑るので、僕が今後必要になりそうな情報の収集にこれからも勤しんで貰いたい。


 何はともあれ、実験的に付与魔法を掛け、ナビーからお墨付きを貰ったこの剣は、カイトから手間賃として貰った物で、これから使用していくつもりだ。そして、付与魔法で武具の力を抑えられることが分かった今、カイトから預かったその他全ての物も付与魔法で力を封印しなくちゃならない。その趣旨を二人に話すと、


「じゃあ、私は仕事に戻るね。頑張ってね」


 と、フランさんは言い残して部屋から出て行った。一方、手持ち無沙汰なさくらはと言うと、何やらみゃーこにお手などの芸を犬のように仕込んでいた。芸を仕込まれている側のみゃーこは存外楽しそうにしていて、それはそれで良いような気がしてきたので、二人のことは放っておいて、僕は付与だけに集中することにした。


「――――」


 さくらとみゃーこが戯れている横で、黙々と先ほどと同じ要領で付与すること30分ほど、ようやく最後の1つが終わった。種類(カテゴリー)で言う剣ならば、カイトが作った物を知っているのでイメージが比較的容易かったが、その他にも、盾や鎧など防具も様々な物が有り、骨が折れる思いだったが、ここぞとばかりに局所では頼りになるナビーのサポートもあって、何とか封印の出来映えを大体揃えることが出来た。それらはもちろん全てナビーチェックが入り、お墨を貰っている。


「ふぅー……」


「お疲れー。これから鍛冶師ギルドに行くんでしょ?」


 さくらが汗を拭くためのタオルを差し出してきてくれたのでそれを受け取り、顔を拭きながら答える。


「うん、とりあえず……それからどうしよっか」


 現在の時刻は大体3時前後。これから鍛冶師ギルドに行ってこれらを卸したとしても、遅くて1時間後には終わっているだろう。それからはやることがなくなってしまう。


「んー……じゃあその剣を試しに使うためにダンジョンに行こうよ」


 さくらは顎に手をやり少し考えた後、僕が腰に携えている一番初めに付与した剣を指さして言った。


「――――」


 正直なところさくらがその案を出す前から、僕もこの剣がどれ程の物なのかぜひ知りたいと思っていたし、そのためにダンジョンに行きたいとも思っていた。そしてこの剣は持ち主の実力によってその能力を段階的に解放していくので、自然と僕の現状の実力を把握できるというメリットも付随してくる。


 それらを考えると、答えは、


「手持ち無沙汰になっちゃうし、ギルド行ってからダンジョンに行こうか」


「さーんせい!」


 さくらは満面の笑顔で快諾した。さくらもこの剣の製造に大きく関わっているので、おそらくだがこの剣の出来映えが気になって仕方が無いのだろう。


 そうして僕とさくらとみゃーこは冒険者ギルドを後にした。


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