102話 崩壊
コンコン
みゃーこが扉を叩いてからもう既に5分ぐらいが経過しているが、中からは何も音沙汰がない。そのため鍛冶が行える設備が備わっているここではなく、居住用の家の方にいるかもと思えてきたが、先ほどの待っている間に何気なく見た換気設備の煙突からは煙がモクモクと出ていたので、カイトがこの扉の向こうにいることはほぼ間違いないだろう。
「そろそろ本当にやばいかも……」
僕がそう呟くとみゃーこは必死の形相で、決壊寸前のお腹を押さえながら閉まっている個室を次々に叩きまくる人のように、ものすごい勢いで扉をたたきはじめた。
「カイト空けるにゃー!みゃーのご飯がほとんどにゃくにゃるにゃー!!」
さくらが崩壊寸前の塔をどうにかしようと手伝おうとしてくれているが、この状況下では下手に手を出した方が崩れる恐れが高まることが分かっているのだろう、焦った顔をしながら隣で落ちた時のために身構えることしか出来ない。
「こうにゃったら――」
しばらく自分が持てる精一杯の力で叩き続けたみゃーこだったが、中からカイトが出てこないことを確認すると、なにやら決意した顔で呟き、ドアノブから飛び降りて更にそこから10メートルほど離れた位置まで距離を取った。
「食べ物の恨みは深いからしょうがにゃいんだから」
と、そう締めくくった後、先ほど距離を取った扉に向けて一直線に走り出した。
「まさか――「白虎化にゃ!」」
止めようとしたときにはもう時すでに遅し。いや、事前に分かっていたとしても僕の縛り付けているこの食べ物の所為で止められるわけがなかった。
バン!!!
白虎と化したみゃーこが扉にぶつかり、まるで何かが弾けるような音がした後、扉が開いた。それに伴って、開く原因となったみゃーこは勢いそのままに中に転がり込んでいってしまった。
そして扉とみゃーこがぶつかった衝撃により、辛うじてという表現では足りないほどギリギリの状況だった均衡がついに破れ、絶妙に保っていたバランスが非情にも崩れてしまった。
ゆっくりと倒れそうになる食べ物の塔をどうすれば被害を出来るだけ少なく出来るか考えたところ、もう一択しか無いと思い、みゃーこが転がり込んでいったのとほぼ同時に、僕はカイトがいるはずの蔵へと僕も駆け込んでいった。