99話 魂の昇華
「グレードアップとはすなわち魂の昇華、と前に話しましたよね」
姿形を持っていなく、ほとんど自分から出ているといっても過言ではないナビーの問いかけに対して反射的に頷いてしまったのと、その話を聞いた後の一件を思いだし顔が赤くなるのを感じたが、訳が分からないといった顔でこちらを見ているさくらに、グレードアップの事を説明することでどうにか誤魔化すことにした。
「――ということなんだ」
レベルアップとグレードアップ、一見似ているようで全然毛色が違うその二つの説明を終えた後、さくらは眉間に皺が寄った難しい顔をしながら僕に向かって尋ねてきた。ナビーの実体がないためナビーに質問を投げるときは僕に向かって、という選択肢しかなかったのだろう。
「それでそのグレードアップとみゃーこが話せるようになったのってどんな関係があるの?」
「飽くまでも仮説なのですが、魂の昇華とはその魂の持ち主が本当になりたいと心から望んでいる形へと進化していくと考えました。そうすると人は意識してか無意識かは別として誰よりも上に、つまり神になりたいと願っているので種族的に神に近付いていくと考えても辻褄が合います。誰も彼もが……というわけでは無いと思いますが、グレードアップをするような、もっと言えば冒険者ならば誰もがそういった願望を抱えていても何等おかしくは無いですし」
「――――」
「話が少しずれましたが、まとめるとみゃーこさんは真冬さんやさくらさんと話したいと心の底からそう臨んでいたから、グレードアップに伴い話せるようになったのではないでしょうか」
水を向けられたみゃーこの方をふと見てみると、僕たちの話が難しかったのだろうか、首を傾げ過ぎていて今にもひっくり返りそうになっていたので、頭を撫でるのと同時に元に戻してあげた。ナビーがこうして発言するのだからその仮説が合っている確率は高いと思うが、その話が嘘か誠かはこの際どうでも良いように思えた。ただみゃーこが僕たちと話したいと心の底から嘘偽り無く思ってくれていたこと自体が嬉しいのだ。
「みゃー?」
さくらもきっと今の僕と同じ気持ちなのだろう。そんな健気なみゃーこの頭をこれでもかと言わんばかりに撫で回し始めた。