第五のウワサ
再び俺たちは中エリアへと戻る。
「ドリームキャッスル。正門から見えていましたけど、近寄ってみるとさらに大きく感じますね」
プロデューサーが弁護士に言った。
「外からは5階建てですが、実際は6階建てなのですよ。大きく見せるために、1階部分を大きく作り、5階部分は小さく作っています。ただ、中は普通なんですけどね」
ここは中に入って、宝探しができるようになっていたようだ。
パンフレットによれば、5色の鍵がどこかにあって、それぞれ持ち寄ると大きな鍵になる。
それで、お姫様を助けるといったところのようだ。
定番といえば定番であるが、それでも、楽しんだ子供らは多い事だろう。
「ここの噂は、地下室があって拷問部屋になっているというものでしたね」
「ええ、ここに地下室があるのは事実です。お客さんが歩けるのは地上部分だけでしたが、地下部分は事務所となっていました。今からそちらをご案内します」
弁護士はステンレスのカギを取り出して、建物の中へと入った。
入口では受付と、そして扉が2つあった。
「擦れているなぁ……」
カメラマンが近づいて撮影しようとしているが、よく読み取れないようだ。
「左と右でルートが異なるようになっています。私たちは、右ルートから入ります」
右ルートのドアのかぎを開けると、中からかび臭い空気があふれ出た。
長い間人が入っていないということのようだ。
そして、すぐにレンガのような壁紙をした壁にあたる。
「本来ならば、ここをさらに右に曲がっていくのですが、ここから事務所へと向かうにはこのレンガのところを通ります」
言うと、同じ鍵を取り出して、壁紙の左下の隅を探る。
そこには円形に壁紙が切り取られたところがあり、そこに鍵穴があった。
錆びついている様子はなく、そこを開けると扉が自動的に開いた。
「ばね仕掛けとなっています。閉まると入れなくなるので、開いたままでお入りください」
入ると階段があり、それを1階分降りると突然事務的な廊下となった。
まるで高校の廊下を思い浮かべる。
ここは壊れておらず、電気も入るようだ。
「お分かりのように、この建物全体の他にも、裏野ドリームランド全体の管理もここからしていました。また、簡単な手術ができるように医務室もありました」
拷問部屋という発想は、どうやらこの医務室の話が捻じれて伝わった。そういうことのようだ。
「てなると、拷問部屋なんて存在しなかった。そういうことですね」
プロデューサーが残念そうに話す。
「でも、どうして手術ができるほどの医務室を?」
ふと思った疑問を、俺は弁護士に聞いてみた。
「園の診療所としても機能していたそうです。なので、この園のお客さん以外にも従業員や周辺の住民にも開放していたとか。その時のためのものだそうです」
そういうこともあるか。
「そうだったんですね」
俺はそれだけ言ってみた。
「そういうことのようです」
弁護士はそれだけ答えた。