第四のウワサ
続いて、俺たちが向かったのは4つ目のウワサであるミラーハウスだ。
西エリアにあるそうなので、途中ドリームキャッスルの傍らを通る。
そして、北エリアの観覧車のそばを通ると、何やら声が……
いや、きっと気のせいだ。
「ここがミラーハウスです」
弁護士が案内してくれたところは、西エリアの大通りから少し入ったところにある西部劇風の家だった。
「人格が変わると言われてるミラーハウスですね」
プロデューサーがいわなくても分かる。
何やら不気味な雰囲気があるからだ。
「建物の中は、雨漏りや割れたガラスが散乱していますので、気を付けてください。また、必要な方は、こちらをお貸しします」
建物の外には小学校の掃除用具のようなロッカーがあり、その鍵を外すと黄色いヘルメットと安全ゴーグルと粉塵マスクがでてきた。
全員分あり、それぞれ行きわたり装着したのを確認すると、弁護士を先頭にして建物に入った。
建物はいくつかの部屋に分割されていて、そのうちの1室がミラールームとなっていた。
右右左右左右と歩けば出口に出ることができる。
「実際、様々な方に見ていただきましたが、どうして人格が変わるのかは、全く分かりませんでした」
弁護士がいう。
「カメラ、何か映ってるか」
プロデューサーが確認をするが、カメラマンは首を左右に振っている。
どうやら特に気になるのはないようだ。
「砂賀さんはどうですか、何か感じますか」
「いいえ、申し訳ありませんが、変わった感覚はありませんね」
ただ、少し寒く感じるのは、分かる。
外から中に入ったから、少しくらいは温度が変わっても不思議じゃない。
割れた鏡やガラスは確かにそこら中に散らばっていて、素足なら絶対に怪我をしているだろう。
あらかじめ聞いていたから、靴底が分厚い靴を履いてきているのが、功を奏している。
刺さっているだろうから、後で手入れは欠かせないが、今日のところは大丈夫だろう。
「うーん、ここは使えなさそうだなぁ」
プロデューサーが言う。
「さすがに、担当のタレントを怪我させるわけにはいきませんからね。諦めますか」
7つ全部を回らなくてもいい、それは最初の会議の時でもプロデューサーがいっていたことだ。
面白い絵面が撮れれば、少なくとも最低限はクリアできるということもあって、何もなかったミラールームを後にした。