第一のウワサ
中は、雑草が生えていた。
建物もいくつか壊れかかっていて、自然な感じに朽ちている。
百年後、きっと建物は無くなっているだろうと思えるほどの廃墟だ。
「これが、閉園直前の園内地図です」
パンフレットをくれる。
かなり刷ったようで、あと何万枚もあるそうだ。
だから俺らスタッフ1人ずつに配っても十分らしい。
「ここはいくつかの区域に分けられています。北エリア、西エリア、東エリア、そして中エリアと大通りです」
弁護士がパンフを参考にしながら、いろいろと教えてくれる。
「私たちが入りましたのは正門で、一番南に位置します」
円形に広がっている園内は、Y字に大通りがあり、北西通り、北東通り、中通りの3つと、中エリアを取り囲むようにある円形通りと別れているようだ。
昔は、各通りの道の中央には買い食いができるようなスタンドがいくらかあったようだが、今はすべて撤去されている。
「初めのウワサ、確か、子供がいなくなるっていうものは、どこにでも聞こえたようですね」
中エリアにあるドリームキャッスルと呼ばれる大きな城に近寄りながら、プロデューサーが聞く。
「ええ、ただ、中エリアが多かったようです。当時のことを調べてみますと、龍乃牙に連れ去られたという話が多かったようです。そのため、龍乃牙の家宅捜索も複数回行われましたが、結局何も出なかったみたいですね」
実際、俺が調べた限りではあるが、龍乃牙は、魂の転生と肉体の復活という教義があり、12歳以下は魂がまだ肉体に固着しておらず、60歳以上であれば魂が肉体から離れたがっているとされた。
その間であれば、今の肉体から魂を離し新たに魂を入れることができるとされたようだ。
そのために、子供を利用したということらしい。
最も、これも噂に過ぎず、本当のところはわからない。
龍乃牙に取材依頼したところ、全く回答が来ないまま、今に至るからだ。
さらに言えば、子供がいなくなったとされる人は開園から閉園までに100人を超える。
そのうち、警察に届け出た人は0人だ。
今、裁判があったと弁護士が言っているが、その証拠は、実は俺は見つけることができなかった。
「実際、子供がいなくなったということは、なかった。そういうことですか」
思わず俺が聞いた。
「ええ、そういうことになります。ウワサはあくまでも噂だった。ということです」
これで、まずは一つ目が解けた。ということにしておこう。