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第七話 メイドとGWを過ごしてみます。2

 今日もソファでぐうたら。これが五月病ってやつなのか?熱心な人なら今頃もうすぐ始まるテスト期間に向けて勉強しているころだし、部活に入ったやつならインターハイとかに向けて全力で練習しているころだろう。

 朝に軽めの運動するくらいしか動いてない連休の過ごし方、今日は最終日、正直言って学校に行くのが非常にだるい。


「ご主人様、午前中の仕事が終了したことを報告申し上げます」

「うんお疲れ」


 そんな連休中もいつもと変わらず仕事をする陽菜。そんな陽菜が自分のスマホを差し出す。


「夏樹さんの方からお出かけの誘いが来ました。ご主人様も来てほしいとのことです」

「おう。準備する」

 

 自分のスマホを確認すると確かに連絡が来ていた。

 部屋に戻り部屋着から着替えて荷物を持って玄関に向かうと陽菜はすでに待っていた。

 今日は白いパーカーにジーンズという格好だ。


「んじゃ、行くか」

「はい」


 布良さんから指定された場所は電車に乗って一駅にあるゲームセンターだ。

 はて、ゲームセンターで遊ぶというイメージは全く無いのだが。


「来たね~、私も今来たところだよ~」


 待っていた布良さんの格好と言えばこれまたゲームセンターじゃなくてオシャレなカフェにティータイムでも行くのかという格好だ。ピンクのカーディガンに白のロングスカートを合わせたおとなしい格好。


「夏樹さん。どうもです」

「さて二人とも、今回は私の高校デビューに付き合ってくれてありがとうございます」

「高校デビュー?」

「そうです。できれば桐野君もと思ったのですがGW中も野球部の練習に出ているようです」


 あいつ本当に入ったのか。


「というわけで、ゲームセンターデビュー、行ってみましょう。と言いたいところだけど、二人ともお昼食べちゃった?」

「いえ、まだですよ」

「そう、じゃあ。そこのファミレスで良い?」


 ファミレスにて、それぞれ注文したものが来たところでいただきます。


「陽菜ちゃん、オムライスがとても似合うね」

「はて、それはどういう意味ですか」

「うーん、そうだね。なんか絵になる」

「遠回しに子どもっぽいと言われている気がします」

「あはは」


 そう言いながら自分のパスタを一口食べる布良さん。僕はと言うとドリアを頼んだは良いが熱くて苦戦している。


「うーんそうだね、あれだよ。白に黄色映えると言うか、うん」

「いえ、取り繕わなくても、いろいろもう諦めてはいるので」

「まだ諦めちゃ駄目だよ。一緒に頑張ろう」

「布良さんがそれ以上育ってどうするのですか?私は先日相馬君の妹と思われました。つまり私の見た目は中学生程度という事です」

「本当?」

「うん、スーパーのレジの人に」


 僕がそう答えると、


「へぇ」


 と言いながらパスタを一口。なぜニヤニヤしているのだろうか。


「二人がスーパーでお買い物しているところを想像すると、何か微笑ましい光景だなぁと思った」



 ゲームセンターに戻り、布良さんが先頭を切って意気揚々と中に進む。正直ゲームセンターはあまり得意な空間ではない、うるさいとも思うし雰囲気が苦手だ。

 入ってすぐ、陽菜が立ち止まる。


「陽菜、どうした?」

「いえ、なんでもありません」


 陽菜がじっと見ていたのはUFOキャッチャーの中にある人形。


「やってみるか」


 300円取り出し挑戦、しかし取ることができない。というか掴んで持ち上げる事すらできない。


「アーム弱すぎだろ」

「そうですね」

「日暮君、やってみても良い?」


 布良さんが挑戦。アームの開く力で台から無理やり転がして落とした。


「本当に取れちゃったよ……」


 本人が一番驚いていた。

 それからいろんなゲームで遊んだ。


「ゾンビが迫って来る、ひぃ!」

「夏樹さん、ちゃんと狙ってください」

 

 陽菜が意外とゲームが上手だ。迫りくるゾンビの頭を正確に打ち抜いている。


「布良さん、ハンドル切りすぎ、ガードレールにぶつかるよ」

「ハンドルが重い……」


 布良さんの操作する車が時間内にゴールに着くことは無かった。

 どうしよう、このままでは布良さんができるゲームがUFOキャッチャーだけになってしまう。


「夏樹さん、そっち行きました」

「任せて!それ!」


 エアホッケーで盛大に空振りだと!?二対一での勝負、陽菜がとるポイントと布良さんのミスでの失点

が釣り合っている。僕が自分で決めるポイントもあるから勝っているのだがこれ負けた方が良いのかな。

 まぁ、これだけ失敗しても楽しそうだからなぁ、これはこれで良いのかな。

 しかし、布良さんの才能は別のゲームで発揮された。

 それはとても有名な太鼓を使ったリズムゲーム。僕は苦手だから布良さんと陽菜がやる。


「せっかくだし一番難しいのに挑戦しよう」

「わかりました」


 二人とも最高難度を選択。止めた方がよかったのかなと迷っているうちに曲がスタート。僕は、見守る事しかできない。

 リズミカルに響く太鼓の音、二人とも無難にスコアを重ねていく。どうしてだろう、二人がまぶしく見える。少しづつギャラリーが増えていく。

 曲が終盤に差し掛かっても二人の集中が乱れることは無い。冷静に叩く。最小の動きで素早く処理していく。

 やがて、曲は終わり。フルコンボこそ行かなかったが演奏成功の文字がそこにはあった。


「ふぅ、疲れた」

「布良さん、どこに行くのですか?まだ終わってませんよ」

「え?」

「二曲目は何にされますか?」


 気が抜けた布良さんの集中力では最高難度を成功させることは叶わなかった。


「結構遊んだなぁ」


 見ているだけでも結構楽しめた。


「あっ、見つけた!これだよ」

「どうかしましたか?夏樹さん」


 突然駆け出した布良さんが指さしているもの、それはプリクラだ。


「高校でできた友達と一緒に撮るの、夢だったの。撮らない?」

「えぇ、良いですよ。相馬君も撮りましょう」

「そうだね、思い出思い出」


 それからが大変だった。


「ほら陽菜ちゃん笑って!顔は可愛いのにどうして不愛想なの?」

「布良さん、時間ないよ」

「撮り直しが一回できるらしいから、とりあえずこれは捨てる。さぁ陽菜ちゃん、私に笑顔を見せて」

「良いじゃないですか、笑顔見られるの恥ずかしいです」

「そんなことないよ、陽菜ちゃんは可愛いから」

「諦めてください」

「撮り直しまであと十秒だぞ」

「ほら、夏樹さん。センターはあなたです。飛び切りの笑顔をどうぞ」

「陽菜ちゃん、笑ってよ」

「わかりました、特別ですよ」


 撮れた写真をデコレーションするコーナーにて、布良さんは一言こう言った。


「陽菜ちゃん、作り笑い苦手なんだね」

「だから言ったじゃないですか」


 最後に撮った写真、そこには不気味な笑みを浮かべた陽菜がいた。


「もう写真なんて撮りません。えぇ、絶対に」

「まぁまぁ、デコろ?」

「お任せします……」


 出来上がった写真はそれはもう見事に女子女子していて、写っている自分の場違い感がすごい。

 ゲームセンターを出て近くの喫茶店に入り各々注文して、今日のゲームセンターでの戦利品を見てみ

る。


「この人形、本当にもらってもよろしいのでしょうか?」

「うん、陽菜ちゃんのために取った物だし」

「ありがとうございます」


 熊の人形を大事に抱きしめる陽菜、良い友達を持ったなと思う。


「はい布良さん、切り分けたからどうぞ」


 今日撮った写真をそれぞれ配る。


「ありがとう日暮君」

「ありがとうございます。大切にさせていただきます」



 布良さんと別れ家路につく。

 電車の中、陽菜はさっきのプリクラを見ている。


「ご主人様、その……」

「今は相馬君って呼んで。メイド服に着替えるまでご主人様は禁止」

「わかりました」


 もう少し、幼馴染の時間が続いてほしかった。


「相馬君、私の笑顔、そんなに良かったのですか?」

「自然な笑顔は、良いと思うよ。あのただ頬をひきつらせただけのよりは断然よかった」

「そうですか。難しいですね」

「まぁ、ゆっくり練習していこう」

「そうします」

 

 こうして僕らのGWは過ぎていく。


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