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クラスメイトなメイド  作者: 神無桂花
一年 秋
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第四十九話 メイドとデートに行きます。

 「荷物良し、笑顔良し、私良し。行ってきます」

 誰もいない家、母さんも父さんも仕事に行っている。出かける前の習慣にしている言葉を唱え、お兄ちゃんの仏壇に「行ってきます」と告げて家を出る。

 今日は陽菜ちゃんと日暮君がデートをするという。それなら見に行かない手は無いと思う。



 確か水族館に行くと言っていたかな。陽菜ちゃんからもらったメールを確認する。どこに行けばいいのかと悩んでいた陽菜ちゃんにアドバイスしたのは私、うん、ここで良いみたい。日暮君と陽菜ちゃんが手を繋いで入っていった。

 赤いベレー帽か、良いチョイスだよ。多分日暮君が選んだのだろうな。

 私も入場券を購入して中へ。ごめんなさい魚さんたち、今日はね、陽菜ちゃんと日暮君とのデートを見たいんだ。今度ゆっくり見に来るから元気にしていてね。

 悠々と泳ぐ魚たちを横目に陽菜ちゃんと日暮君に気づかれないよう距離を取って歩く。変装用に伊達眼鏡をかけてはいるが気づかれないとも限らない。


「陽菜、あと十分後にイルカショーするってさ」

「行きましょうか、見てみたいです」


 陽菜ちゃん、楽しそうだ。良い顔している。本人も気づいてないのだろうな、今日の陽菜ちゃんの表情はいつもより少しだけ豊かだ。

 二人を追ってイルカショーが行われるプールへ。二人の席の三つ後ろの席を取る。入鹿ちゃん、部活が無かったら一緒に来たかったなぁ。仲良いな~ずっと手を繋いでいるよ。なのに目が合うと二人とも顔赤くなるのだもん、可愛い。

 さてさて、そろそろお昼時かな。二人とも水族館を出ていく、どこに行くのかな。

 ここでどういうお店を選ぶのかが重要だよね。うーん、私が近くに席を取れるお店を選んでほしいな。

 公園に入っていく、ベンチに座ると陽菜ちゃんが鞄から弁当箱を取り出す。

 何と、弁当ですか!良いですね!少し離れたベンチに座り、鞄からアンパンと牛乳を取り出す。張り込みと言われたらこれだよね。

 うーん、でもこれだけだと少し寂しいな。卵焼きだけでも貰いに行こうかな。

 この様子だとうまくいっているみたい。心配はいらないようだからこのまま見守ろう。

 さてさて、次は二人どこに行くのかな。

 あ~ほっこりする。初々しい。

 ここは、ゲームセンターだね。


「相馬君、シューティングゲーム得意らしいですね。やってみませんか?」

「良いよ」


 そういえば前来た時、私と陽菜ちゃんに遊ばせて後ろで見ていただけだからね。

 二人がプレイする後ろを陣取る。上手い人の後ろにギャラリーができるのは普通の事だからね、うん、不自然じゃない。

 上手だ。二人とも倒すの早いな。

 うわー、ボスの見た目気持ち悪い。なにこれ、植物系統なのかな。


「陽菜、触手狙って」

「はい」


 そういえば私と陽菜ちゃんじゃここまで行けなかったからなぁ。

 ボスを倒すと次のステージへの扉が開く、しかしそこに待っていたのは何故か瞬間移動するゾンビやナイフを投げて来るゾンビ。陽菜ちゃんは攻撃を食らい始める。でもすごかったのは相馬君、ナイフを打ち落とし瞬間移動するゾンビの頭を正確に打ち抜く。

 しかしその後に現れた四足歩行するボスを削り切れずゲームオーバーしてしまった。


「残念でしたね。コンティニューしますか?」

「ノーコン主義だからダメ」

「了解です」


 二人が振り向く前に素早く移動。次は何をするのかな。


「勝負しませんか?」

「良いよ」


 二人が挑むのは私が前ゴールすらできなかったゲーム。

 二人とも無難にコースを走る。このゲームハンドル重くて苦手なんだよな~。


「ほい勝った」


 相馬君が先にゴール。


「負けました。では約束は後で」

「楽しみにしているよ」


 何を賭けていたのかな、気になる。

 ていうか、二人、デートするならプリクラ撮りなよ。今日の陽菜ちゃんなら変な顔にならないと思うけどな。ひたすら二人で協力するか対戦するかしかしない。

 賭け事したのはレースゲームだけみたいだけど。



 ゲームセンターを出ると外は夕焼けに染まっていた。

 どこまで追いかけようかな、そろそろ帰ろうかな。うん、帰ろう。


「ところで夏樹さん。私たち今から相馬君の家に行くのですけど、寄っていきますか?」

「えっ、良いの!?」


 って、あれ?


「ずっと後ろの方にいましたよね?気づいていないと思っていましたか?眼鏡、良く似合っていますよ」

「あはは、ありがとう」


 結局日暮君と陽菜ちゃんにお呼ばれして日暮君の家へ、きちんと整頓されていて清潔感のある家だ。


「陽菜ちゃん、何かこの家慣れているね。どこに何があるのかよく把握しているみたいだし」

「小さいころからよく来ていましたから」


 なるほど、本当に幼馴染さんなんだ。

 陽菜ちゃんが台所で料理している間、私は日暮君と二人でリビングにて待機。


「布良さんって兄妹とかいるの?」

「いないよ。三人暮らし。父さんも母さんも仕事しているから今は家にいないかな。いつも弁当とかは作り置きして行ってくれているけど」


 嘘、吐いちゃった。特に理由は無い。それに今いないのは事実だ。


「はい、相馬君、今日は卵料理で固めましたよ。約束通り」

「サンキュー」

「夏樹さんもどうぞ。食べて行ってください」

「うん、ありがとう」


 多分父さんも母さんは今日も遅い。食べて行っても問題ないだろう。


「「「いただきます」」」


 美味しい。親子丼もかに玉もとろっとしていて私好みだ。きっと相馬君もこんな感じのが好きなんだろうな。家に帰ったら晩御飯のために用意してあるのも食べなきゃだから抑えめにしたいけど、美味しいから別に良いや。



「ごめんね、晩御飯までご馳走になっちゃって」

「いえ、一緒に食べるの楽しかったですから」

「それじゃあ、陽菜ちゃんも遅くならないうちに帰った方が良いと思うよ。男の子は狼さんだから」

「あはは、布良さん。さすがにそこまで度胸は無いよ」


 日暮君苦笑い。確かに大丈夫だと思う。日暮君、危なっかしいと思っちゃうくらいに陽菜ちゃんを大事にしているように見えるから。

 二人に別れを告げて駅まで歩く。あまりにも綺麗だったからわかりにくかったけど、何となく二人とも一緒に暮らしているのかなっと思った。

 本当に何となくだけど。根拠無いし。






 布良さんが帰り、陽菜と二人になった家を見回す。改めて綺麗な家だなと思う。布良さんを放っておくのもなと思い、その場のテンションで呼んでしまおうという話になり誘ったといった感じだが、意外と大丈夫だったな。


「陽菜の荷物が少ないから呼べたって感じかな」

「そうですね。私はあまり物は持たない主義なので」


 リビングで後片付けをしている陽菜はメイド服に着替えていない。


「今日はもうこの服のまま過ごしちゃいます。何というか、恋人同士みたいで良いです」


 なるほど確かに。言われてみればそうだ。


「一緒にお風呂入ります?」


 脈絡もなく豪速球を投げつけて来る。


「やめとく。男は狼さんだから」

「私は構いませんよ。狼さんでも相馬君は相馬君ですから」


 チラチラと目線を送って来る。でも……。


「陽菜の事は大事にしたいし。勢いで色々やらかしたくないよ」

「そうですか」


 穏やかに笑う陽菜、今日の陽菜は表情が豊かだな。

 断るとわかっていたのだろう。ヘタレとでも呼ぶが良い。


「今は一緒にいるだけで僕は幸せだよ」

「それは私もですよ」


 陽菜のペースに巻き込まれちゃっているな。完全に。でもその方が良いだろう。下手にリードしようとして陽菜に呆れられるのも困る。ヘタレとでも呼ぶが良い。

 リビングでぼんやりしていると、片付けを終えた陽菜が戻って来る。


「失礼しますね」


 ソファに座る僕の横に座り、頭を膝に乗せて来る。


「今日は甘えさせてください」

「良いよ」


 頭を撫でて僕は僕で髪の感触を楽しむ。


「布良さんがいたのは予想外でしたね」

「そうだね」


 まぁ、尾行は下手だったけど。


「次はあの文化祭で食べたラーメンの店でも行ってバトルしますか?あるそうですよ、そういうの」

「やってみますか」


 いつになるかはわからないけど。


「さて、相馬君はお風呂入ってきてください」

「うん」


 今日は楽しかった、心地の良い疲れの中、僕は今日という日を終えた。

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