間話 そのころの陽菜。
四話と合わせてお読みください。
じっと布良さんを見つめる。
天気の話ってあまり発展しないようです。困りました。
布良さんもこちらをじっと見つめ小首をかしげる。とても可愛らしいです。
ご主人様は先ほど男子生徒の方に誘われてどこかに行かれてしまいました。
「あの……」
先に声を上げたのは布良さんでした。
「陽菜ちゃんって呼んで良い?」
「陽菜ちゃんですか?」
「そう、何か可愛いし」
ふむ、私の体型は良くメイド長から子ども体型と言われてましたから、子どもっぽく見られるのは仕方のないことなのかもしれません。
何となくあまり膨らみのない自分の胸と布良さんの良く育った胸を見比べる。悲しくなってきました。
「私のことも名前で呼んでほしいな」
「わかりました、夏樹さん」
そう言うと満足げに夏樹さんはうなずいた。
改めて自分の過去は人とはだいぶ違うのだなと感じた。
布良さんの中学時代の話は自分の去年までとはだいぶかけ離れていて、自分の過去の話に飛ばないように気をつけねばならなかった。
「そういえば陽菜ちゃん、連絡先教えてよ」
「はい、どうぞ」
連絡先を交換、私がこの間読んだ小説にもこんなイベントがあった気がする。
その時、次の授業の先生が入ってきてお開きとなってしまった。
「陽菜、ここ空いてる?」
ご主人様が男子生徒を連れている。
そのことに内心驚きつつも表情には出さない。内心を表情に出さないのは得意というか癖だ。
布良さんもやってきてお食事会が始まる。
ご主人様が連れてきたご友人が私がお弁当を作ったことに驚いていたが変なことなのだろうか。私がこの間読んだ本の主人公は幼馴染が毎日お弁当を作っていたのだが。
家に帰り、一通りの仕事を終えて一休み。スマホを確認すると布良さんから連絡が来ていた。
そう言えば卵焼きのレシピを伝えなければ。
ご主人様の好物とのことで研究していましたからそこらのプロが作ったものにも負けないレシピです。
ご主人様は大切にしろとおっしゃりました。
大切にするべきものが増えるというのはきっと良いことなのでしょう。
明日も早いです。少し眠りましょう。