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クラスメイトなメイド  作者: 神無桂花
一年 秋
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第四十四話 メイドと衣替えを迎えます。

 朝目が覚めたとき、寒くなってきたことに気づいた。ここで重要なことは寒いからと布団にくるまれば二度寝ルートまっしぐらだ。だから僕はまずベッドから転がり床に落ちる。床が冷えている。うーん、今日は学ランだな、丁度衣替えの時期だし丁度良いや。


「おはようございます。相馬君」


 ジャージに着替え外に出ると丁度陽菜が掃除を終えて立っていた。


「陽菜、その格好は?」

「冬服ですよ」


 そこに立っていたのは露出少な目のロングスカートのメイド服に身を包んだ陽菜。これはこれでありだ。


「ちなみにそれも陽菜デザイン?」

「そうですね、これは夏服の対極のものを作ろうと思いまして、こうしました。今日も稽古ですか?」

「うん。行ってくる」

「いってらっしゃいませ」


 外も案の定ひんやりとした空気に包まれていた。生えている木々も赤く染まっている。段々と体が目覚めていくのを感じる。

 振るう拳が空気を切り裂く。この間結城さんと稽古した時、型を調整してくれた。驚いたのはその説明がわかりやすかったことだ。理論立てて説明してくれたおかげで納得してその指摘を受け入れられた。

 一通り確認し終え、いつも通りダッシュで家に戻る。家に戻りシャワーを浴びて陽菜と一緒に朝ご飯を食べる。


「相馬君、目玉焼き黄身を残す派なのですね。どうしてですか?」

「うーん、周りを順当に食べていったらいつの間にか残すようになっていたってだけで深い意味は無いよ」

「そうですか」


 陽菜の食べ方を見る。何というか変わった食べ方だな、黄身に裂け目を作り、そこに白身をつけて食べている。ちなみに陽菜の作る目玉焼きは半熟だ。


「この食べ方、一応目玉焼きの正しい食べ方として知られている物ですよ。これで皿を汚さずに食べられます」

「へぇ、ちゃんとあるんだね。そういうの」


 黄身だけ残したせいで僕の皿は黄色く汚れている。今度からそう食べよう。陽菜の仕事を無駄に増やさないように。

 久々に袖を通した学ラン、陽菜のセーラー服も紺色の物に変わっている。


「秋ですね」

「うん」

「確か相馬君の好きな季節、秋でしたよね?」

「うん。あれ、話したっけ?」

「いえ、旦那様から聞きました」


 秋が一番過ごしやすいのではないかと個人的には思っている。暑くもなく寒くもなく、新たな人間関係に悩まされることもなく。とても素晴らしい季節ではないかと思う。もう一年中秋で良いよ。

 教室に着き荷物を降ろす。文化祭やその後の打ち上げで少しだけ話すようになった人に軽く挨拶して陽菜の席へと向かう。


「どうぞ」

「ありがとう」


 差し出された紙コップを受け取る。


「今日はほうじ茶にしてみました」

「ほうじ茶は結構好きだな」

「梨も剝いてきました、どうぞ食べてください」

「わーい、いただきます~」


 突然現れた布良さんが爪楊枝で食べる。


「おはよう二人とも、いやはや早く来るかいがあるね~。はい二人とも、私もクッキー焼いてみたんだ」

「おはようございます。いただきます」


 布良さんのクッキーか。これは!


「おいしい」

「おいしいです」

「喜んでくれて嬉しいよ」


 朝のティータイムはすっかり習慣化してしまっている。陽菜から渡されるお茶を飲みながら雑談をして先生を待つ、結構良い時間だと個人的には思っている。教室を眺めると、登校するまでは学ランだったが学校に着いた途端脱ぐ人や、学ランでは暑すぎる、しかしワイシャツでは寒いからとパーカーを羽織るものもいる。そう考えると男子の制服って恵まれているな、調整は自由だから。


「ふぅ~どうもどうも、姉御に陽菜ちゃんに日暮氏。おはようです」

「おはようございます。入鹿さん」

「おはよう入鹿ちゃん」


 入間さんが来たという事はそろそろ京介も来て、すぐに先生が来るだろう。

 冷たい風、夏のぬるい風よりは好きだが、少し寂しい気もする。木の葉が舞う、今年も台風は来ないまま夏が終わってしまったな。別に台風が好きとかそういうわけでは無いけど。



 授業もだいぶ楽になった。暑さゆえの眠気に襲われることは無いし、春のうららかな日差しに襲われうとうとすることもない。ただ単純にだるさゆえの眠気に襲われることはあるけど。

 授業の難易度も上がってきてはいるが、一学期の基礎を抑えている分どうにか理解はできている。ノートは取る。陽菜に頼りきりになるわけにはいかないだろう。自分の力ででも理解しなければ。しかしここで大事なのはノートを取ることに夢中になり過ぎないことだ。ノートを取るのがメインなのか授業を聞くことがメインなのか。先生の話をちゃんと聞き大事なことだけをメモする、黒板は当然写すがそれもなるべく素早くだ。ノート作成したいならそのメモを基に後で清書でもすれば良い。という事を布良さんから前教えられた。授業中熱心にノートを書いている人がいるけど、そんなの後でやれば良いのにと言っていたから、気になって聞いてみたらそういう事だった。

 今度のテストの時、もし陽菜がノートを作っていたら比べてみたいなと思う。ちょっとだけ楽しみだ。

 体育の時間、学校のテニス場でラケットを振るう。


「日暮君、浮き玉!」

「任せろ!」


 スマッシュを相手コート隅に打ち込む。


「ナイス!」


 体育のテニスで組んだメンバーの佐藤君。話しやすい人ではある。テニス部で僕がミスしてもすぐにフォローしてくれる。

 ちなみに京介は野球部という事で選択競技のソフトボールに強制的に回された。

 気温も下がり今日はやりやすい。球技は苦手だが体育祭の競技選択に大きな影響を及ぼすとのことなので頑張る事にする。隣のコートでは布良さんと陽菜のペアがコートの中を走り回る。

 あっ、布良さんが転んだ。


「朝野さん一人ですごいよね」


 佐藤君がぼそりと言う。遠回しに布良さんは戦力外にされていた。

 孤軍奮闘虚しく相手の容赦の無い打ち分けの前に陽菜は敗れた。



 放課後になり、今日は寄り道がてら本屋に行く。陽菜の好きな作家の本が発売されるそうだ。


「よし!売り切れてなかったです」


 少しだけ嬉しそうな陽菜の顔。本好きなんだな。


「あっ、これも新刊出てますね。一年に一度しか出てないので内容忘れかけていますけど買っておきますか。あっ、こちらは早いですね、前の刊は先月出たばかりですよ。作者さんちゃんとご飯食べられているのでしょうか。この人三シリーズくらい抱えていた気がしますけど」


 楽しそうだ。いつもより生き生きしている。って、あっ、新刊出てる。僕も買っておこう。

 結局二人で小一時間見逃していた新刊を集めてまとめ買いした。中学卒業する時大量に図書カード貰って余っていたから余裕で買えた。


 「そう言えば相馬君、今日はかなり秋を堪能したと思いますが?」

「と、言いますと?」

「スポーツ、読書、食、秋のほとんどを味わったと言えます」


 なるほど確かに。


「あとは芸術の秋ですかね。何も思いつかないです」


 腕を組んで悩んでいる。


「別に今日でやりきらなくても良いだろ。ゆっくりで良いよ」

「それもそうですね」


 家に帰り陽菜はまたあの冬服のメイド服に着替える。


「何というか、動きづらそうだな」

「そうですかね?私は慣れてしまったので」


 くるりと回る。ふわりとスカートが舞い上がる。


「相馬君はどちらがお好みですか?」


 考える。どちらも好きだが……。


「わからない。決められないよ」

「そうですか。ではそこでじっくりと眺めていてください。答えは期待しませんけど」


 期待されても困るからありがたい。メイド服も良いけど陽菜が好きだから結果的にはどちらも好きだなんて恥ずかしいことを言わなくて良いから。

 でもまぁ、目のやり場にあまり困らないのは冬服の方かなと思うけど。



 

 

 

 

 

みんなはどっち派?メイド服。

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