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クラスメイトなメイド  作者: 神無桂花
一年 夏
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第十八話 メイドと期末試験に挑みます。

 よし、行くぞ。

 いつも通りの時間、陽菜と一緒に家を出る。


「相馬君、体調の方はどうですか?」

「問題ないよ」


 テスト初日の今日は、苦手科目のオンパレードだが陽菜のおかげでどうにかなりそうだ。

 半袖のワイシャツは昨日陽菜が気合を入れましょうとアイロンをかけてしわをのばしてくれた。自分の夏服用の白いセーラ服にもアイロンかけて、六月から着て少ししわが目立ち始めた僕らの制服は、新品のような状態に仕上がっている。


「そういえば陽菜、とても今更なのだが夏服も似合うな」

「そうですか?ありがとうございます。しかしながら、もうすでにこれを着始めて一か月は経っているので確かに今更な話ですね」


 仕方ないではないか、さりげなく言えるタイミングを探していたらずるずるとここまで引き伸ばされてしまったのだから。

 ごまかすように陽菜の頭を撫でる。


「相馬君、癖になってません?私の頭撫でるの」

「癖にもなるよ、撫で心地が良いから」

「そんなに良いものですかね?」


 そう言って僕の頭に手を伸ばす。そのまま軽く撫でる。


「よくわかりませんね」

「そりゃ、僕の頭だからな」

「今度ご主人様の頭、ちゃんと整えましょうか?」

「整えなきゃいけない時があったらな」


 そんなにぼさぼさなのか。


「今日整えれば良かったです」

 



 やはりテスト当日という事もあって通学路には人が少ない。前回と違うのはやることはやったという実感があるから、僕も早く行ってやらねばという焦りが起きないことだ。

 教室に入ると、布良さんの席の周りは人だかりができていて隣の自分の席には近づけない状況だった。仕方ないので陽菜の席に退避。


「夏樹さん、人気ですね」

「そりゃあな、陽菜が半分くらい受け持ってやったら?」

「構いませんがそうなってしまったら相馬君は誰と一緒にいるのですか?」


 考える。桐野、布良さんと一緒にいる。布良さん、クラスメイトのわからないところを解説している。陽菜がいなくなったら確かに僕は一人だ。


「やっぱり一緒にいてくれ」

「わかりました」

「やっほー陽菜ちゃん、入鹿だよ」

「おはようございます。入鹿さん」

「日暮氏もおはおは」

「入間さん、おはよう」

「夏樹の姉御がクラスメイトの軍勢に取られてしまったので暇なのでござる」

「入鹿さんはテストの方は?」

「えー、どうでもいいっすね。赤点取らなきゃ卒業できるわけですし、別に推薦狙ってるわけでもないですし。だから直前に慌てて熱くなるような真似はしないのですよ」


 それはまたものすごい方向に悟りを開いているな。


「受験勉強も兼ねれば良いのではないでしょうか?」

「受験勉強なんて三年生になってからやれば良いのです。一、二年は遊びつくすに限りますよ」


 そう言えば陽菜は大学のことはどう考えているのだろうか。もしかして一緒の大学にも来るつもりなのだろうか。

 聞こうと思ったがそこに先生が入ってきてしまった。

 聞けば答えてくれるだろうしまた今度で良いや。



 今回もテストは三日に分けて行われる。一日目の教科は結果的にはどうにかなったと思う。

 テストが終わればまた布良さんの対策講座が始まる。準備期間と違うのは桐野だけではなく他のクラスメイトも参加していることだ。布良さんもものすごく張り切って教えていた。

 二日目は僕にとっての最大の強敵の一つである英語表現。中間での反省は感覚で解けるだろうと舐めてかかった結果痛い目を見た教科である。今回はかなり対策して臨んだからどうにかなった。

 三日目。最終日は得意な科目ばかりだったため、大して苦労はしなかった。



 「というわけで皆様、お疲れさまでした。学級委員長としての役目が全うできたので、今回のテスト期間はとても充実したものとなりました。ありがとうございました」


 テスト最終日が終わったらみんなでお疲れ様会を開こうという話になり、近くのバイキングレストランに来た。


「布良先生にはとてもお世話になりました。どうにか部活に復帰できそうで、嬉しいです!」

「泣くな泣くな」


 野球部好きすぎだろ。


「時間は二時間とのことでしたし、お料理取りに行きましょう」


 焼肉もあるとのことで、肉を用意して次々と焼いてはみんなの皿に配り始めている陽菜。


「自分の皿にも乗せなよ」

「そうですね、そうします」


 桐野と布良さんが料理を取りに行き。食べ始める。僕も皿に乗っていた肉を食べる。


「相馬君、飲み物はどうされますか?」

「いや、自分で取りに行くよ」


 おかしい。


「ポテトを持ってきたのでどうぞ」


 何かがおかしい。

 陽菜の様子は一見するといつも通りだが何かがおかしい。

 こういう場では陽菜も楽しむはずなのだが。


「ソフトクリームうまく巻けました。相馬君のも作りましたのでどうぞ」


 ソフトクリームを持ってきて食べる陽菜。デザートに行くには少々早いような気がする。

 みんなで店を出てそのまま解散。

 布良さんとも駅で別れ陽菜と一緒に電車に乗り、家に帰る。家に帰りメイド服に着替え仕事に入ろうとする陽菜を呼び止める。


「陽菜、ちょっとこれを使ってみてくれ」

「これは、体温計ですか?」

「そうだ」

「私は別にいつも通りですよ」

「それは無いな。さっきのレストランでの行動はあまりにもおかしかったから」

「ご主人様、心配しすぎですよ。掃除に入りますのでご主人様はこのテスト期間での疲れを癒していてください」

「肉をあまり食べずにソフトクリームやフルーツばかり食べるのはどうしてだ?」

「好物だからです」


 なるほど、正論だ。


「肉を焼くのに専念して自分はあまり食べないのは?」

「私は焼肉という場では焼く方に専念したいのですよ」


 奉行だったのか。


「ではそのほんのりと赤い顔はどう説明する?」

「そ、それは、日焼けしてしまいました……」

「陽菜はいつも日焼け対策に日焼け止めを塗っているはずだが」

「それでも焼けるときは焼けますよ」


 仕方がない、強硬手段だ。

 素早く陽菜との距離を詰め、そのまま抱きしめるような形を取る。


「ご、ご主人様!」


 陽菜が珍しく驚いているがそんなことは関係ない。

 僕が使っている体温計は耳に当てるタイプのもので、二秒あれば測れてしまうものだ。慌ててはなれる陽菜に測定結果を告げる。


「39度、熱ありますね。寝てください。あとで病院に連れて行きます」

「大丈夫です……」

「ちょっ、」


 そのまま倒れこむ陽菜を慌てて抱き留める。

 とりあえず部屋に運ぼう。




 頭がひんやりして心地が良い。おでこに何かが貼られていて、頭の下にもひんやりとしたものが置かれている。

 私、さっき倒れましたよね。

 あれ、いつの間にかジャージに着替えてあえる。


「起きた?」

「はい、あれ?力が入らないです」

「無理して動かない。ほら、これ飲んで。とりあえず水分を取るのが大事だから」

「はい、ありがとうございます」


 ご主人様に半身だけ抱き起してもらい水を飲む。


「あの、いつの間に着替えたのですか?私?」

「ごめんなさい。勝手にタンスを漁ってジャージを取り出して、その上メイド服を脱がせて着替えさせま

した」


 深々と頭を下げるご主人様。今日の私の下着はちゃんと可愛いものでしたよね?覚えてないです。


「後で病院に行って薬を貰いに行こう。保険証とかある?」

「はい、ありますよ」


 やってしまったな、と思う。またご主人様に迷惑をかけてしまった。




  

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